第176話 二人の書~ケビンと【コレット】・8~

「…………えっ?」


 ……今……ケビンさんは何て言った……?


《「はあ!?」》


 ケビンさんが……。


《おいおい――さすがに唐突過ぎじゃろ、魔力を送りすぎて暴走してしまったか?」


 私の事を……。


「お前、何変な事を口走っているんだよ!」


 好き……?


「……」


 これって、もしかして告白?

 え? え? 本当に!?


『暴走でも、変な事でもないわ! 俺の意思で気持ちを伝えたんだよ! 俺はコレットに惚れたんだ!』


「惚れっ!?」


 ケッケビンさんが、わわわわた私の事を!?


「……ん? メスのかおがまっかかになってる」


「――ふえっ!? ……あ~の~……その~……え~と……うううう……うあああああああああああああ!!」


『おわああああああっ!』


「あ、コレット! ……あ~あ、ケビンの頭を宙に放って走って行っちまったよ」


「本当によく宙を舞う頭じゃな、っと!」


『受け止めてくれたのは嬉しいが、俺の意思で飛んでるわけじゃ……って、コレットは!?』


「ここは穴だからな、中央から端に行っただけだ。まったくお前と来たら……」


『俺は本心をだな――モガッ!』


「お前はしばらく黙っているのじゃ。さて、小娘はどのような答えを出すのか……楽しみじゃな」



「あわわわわわわ……」


 あの場に居られず、思わず逃げちゃったよ。

 とは言っても、あまり離れてないから向こうの声が多少聞こえちゃっているけど……。

 あまり変な声が聞こえないようにしなくっちゃ。

 それにしても……。


「生まれて初めて、告白されちゃった……」


 しかも、その相手がまさかのケビンさんだから、すっごいびっくりした……。

 あ~顔が熱いし、心臓がドキドキいっているよ~。


「……あ~いくらなんでも、唐突過ぎるよ~……私はどうしたらいいの?」


 こんな経験したことが無いから、どうしたらいいのか全然わかんない。

 とっとにかく、返事はちゃんとしないといけないわよね。

 でも……なんて返事をすればいいんだろう?

 気が動転しているせいか、私の今の気持ちすらちゃんと理解出来ていない。


「……ううう……今度は頭から煙が出て来ちゃいそう……」


 いや、これじゃ駄目だ。

 ……落ち着け……落ち着くのよ、私。


「……ふぅ~」


 少しずつ、心の整理をしていくしかない……。

 ちゃんとケビンさんの想いに向き合わなくっちゃ。



「…………よし」


 返事は決まった。

 これが正解かわからない……でも、これが私の想いだから。


「いざ……」


 戦場へ!


「お、コレットが戻って来たぞ」


「ほれ、頭をちゃんと付けるのじゃ!」


『ハグッ! おい、もっと優しく付けてくれよ……』


 あ~気持ちを落ち着かせたはずなのに、ケビンさんを見たらまた心臓がドキドキし始めちゃってる。

 ちゃんと言えるかな……。


「……あの……先ほどは頭を投げて飛ばした挙句、逃げ出してすみませんでした。それと、お待たせしてしまった事も……」


『いや……そんな事は気にしなくていいから……うん……』


「……ケビンさん……先ほどの返事ですけど……」


『あっああ……』


「――すみません!」


『――はぐあ!』


 ああ! ケビンさんが膝と両手を地面につけちゃった!

 なんか今にも自壊しそうなくらい落ち込んでるよ……。

 そうさせちゃったのは私のせいだから、胸が痛い。


『……そう、か……俺の何処が駄目だったのか、聞いても……?』


「何処って、どう考えてもお前がスケルトンだからだろ」

「何処って、どう考えてもお前がスケルトンだからじゃろ」

「どこって、どうみてもエサだからじゃん」


『うるさいよ! お前たちに聞いていないし、そこは関係……』


「すみません……あります……」


 というか、八割方がそこなんです。


『あったのか……』


 その辺りが問題だと全く思っていなかったんだ。

 それはそれですごいな。


「えと、私に好意を持ってくれたのは嬉しいです……でも、私はケビンさんの事を何も知りません……ですから、私としてはその~デ、デートとかをしてケビンさんの事を知っていってから、ちゃんと返事をしたいとは思ったんです」


 ケビンさんという人を知りたい……知ったうえで、自分の気持ちと向き合い返事をしたい。

 それが私の行きついた答えなんだけど、その前に大きく立ちふさがるのが……。


「ただ、スケルトンを相手にそのような事は……難しいな……と……」


 しかも私にとって、スケルトンは天敵みたいな存在になっちゃっているから余計に。

 でも、これはさすがにそこまでは言えない……言ったらケビンさん、文字通り崩れ落ちそうだもの。


『そう、か……そりゃそうか、スケルトン相手にデートとか嫌だもの……ん? ちょっと待てよ……今の話を聞く限り、俺の事を知り生身の体だったらデートをしてくれたのか?』


「えっ!? え~と……」


 スケルトン以外のケビンさんって、想像がつかないんですけど。

 う~ん、もしそうならと考えると……。


「……そう、なります……かね……」


 考えただけで顔が熱くなって来ちゃった。

 どんだけ耐性が無いのよ、私。


『……そうか。――なら、コレット!』


「あいた!」


 ケビンさんに両肩を掴まれた。

 何? 私の肩ってやたら掴まれるけど、そんなに掴みやすいの?


『俺にもう一度チャンスをくれ! いや、下さい!』


「……はい? チャンス、ですか?」


 どういう意味だろ?


『ああ! 俺は生身の体を手に入れる為に旅に出る!』


「生身って……ええっ!?」


 またすごい事を言い出したよ、この人!


「――ブッ!」

「…………」

「にくつきのエサ?」


 シスターが言ってたっけ。

 ケビンさんは、とにかく前向きな所が長所だって。

 シスターの言う通り……いや、それ以上に前向きすぎるわよ。

 私だったら、そんな事なんて思いつかないや。


「おいおい……いくらフラれたからって、ヤケクソになるなよ」

「やはり、魔力を送りすぎたかもしれんのじゃ……」

「にくにつきのエサ……ジュリ」


『だからそこ、うるさいよ! 世界は広いんだ、きっと方法がある! いや、絶対に見つけてやる!』


 生身の体を手に入れる……か。

 ケビンさんがスケルトンだからどうのこうのと、さっき頭を抱えて悩んでいた私が馬鹿みたい。

 クスッ……私も、ケビンさんを見習わないと。


「……よし、決めた……わかりました、チャンスをあげます」


『本当か!? やった!』


「それと、その旅で最初に行くところがありますよ」


『? 最初に行くところ?』


 ケビンさんが生まれた場所。

 そして、私にとって大事な大事な場所。


「はい、アカニ村です! 一緒に帰りましょう! ホセ父さん、マルシア母さん、弟妹のヘンリー、マリー、ブレンが待つ、私達の教会うちへ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る