第70話 コレットの書~発見者・6~

 あっそういえば、この殴り飛ばしたスケルトンはレア・スケルトン種だったのかな。


「……」


 う~ん……あんまりスケルトンに関わりたくはないけど、やっぱり確認しておかないと駄目だよね。

 まず周辺に何か落ちてたりは……してないわね。次は体の部分……ん? なんか棒みたいな物を何本も抱えているわね。


「取れるかしら、よっと……」


 ――お、すんなり取れた。抱えているとはいっても、腕の部分は隙間だらけだから取るのは簡単だったわね。むしろ、良くこれを抱きかかえていたわね……なんて器用な事を……まぁそんな事はどうでもいいか。

 抱えていた物はっと……え? これって骨? 何で骨のスケルトンが骨なんか抱えていたの!?


「って! このスケルトン、骨を抱えていたから気が付かなかったけど肋骨が全部ないじゃない! という事は、もしかしてこの抱えているのは――」


 やっぱり残りも骨! じゃあ、抱えているのはこのスケルトンの肋骨!?

 ……え、まさか壁と壁の隙間に入って逃げる為に、自分で自分の肋骨を外したって事なの? もしそうなら、このスケルトンは間違いなく知能が高いわ……となると、これもレア・スケルトン種と言えるわよね。


「となるとリリクスに戻った時、ギルドに報告を……したくないけどしなくちゃいけないよね。う~それを考えるだけで憂鬱だわ」


 普通なら何時も通りキャシーさんに話して終わりだろうけど……今回は違う、何せ報告内容がレア・スケルトン、絶対にエフゴロさんが出てくるはず。

 そうなると、またあの地獄を味わう羽目になるのが目に見えているわ……こうなったら報告の時はエフゴロさんと2人っきりにならないように、意地でもキャシーさん捕まえておかないと!

 それでも、心身ともにきついのは変わらないけどね。


「え~と、後は何かあるかな。――――ん~この肋骨以外は、特に何も持っていない感じね」


 となると、手に入ったのはこの肋骨のみか……うん、骨なんて持って帰っても仕方ないからここに置いて行こう。

 それに持って帰ったとしても何か呪われそうだしね。


「よし、こんなもんかな。さて、捜索の再開をしま――」


《――!! ――!!》


 ん? 今声が聞こえたような。


《――!! ――れ!!》


 やっぱり聞こえる、どうやら人の声みたい。


《――れ!! ――走れ!!》


 奥から聞こえるって事は、最初に行った冒険者達しかいないし。

 また叫びながら、モンスターでも追いかけているのかな?


《――走れ!! ――走れ走れ!!》


 あれ? 声がどんどんと、こっちに近付いて来ている様な気が……。


 ――ズンズンズンズン


 あと何? この地響きは。


「とにかく走るっス!! 早く逃げるっス!!」


 あ、必死の形相でマークさんと他の冒険者達が走ってこっちに来た、どうしたんだろ?

 ん~? その後ろを虹色に輝いている大きな物体が追いかけているような……。


 ――ズンズンズンズン


「――えっ!? 嘘でしょ!?」


 マークさん達を追いかけているのって、ミスリルゴーレムじゃない!! しかも3体はいるし!

 まさか、あの魔晶石の部屋にいたのが動き出しちゃったの!?

 どっどうしよう、このままじゃ私も巻き添えを食らっちゃう!


 ――ズンズンズンズン


「そっそうだ! 転送石で逃げれば――」


 ――ズンズンズンズン!

 ――メリッ!


「ん? 今の……何の……音……?」


 ――ズンズンズンズン!

 ――メリリッ!


「……何だか、嫌な予感が……ひっ!」


 嫌な予感的中!

 床にヒビが入ってきてるし、何で!?


 ――ズンズンズンズン!

 ――メリメリッ!


 あわわわ、ヒビがどんどん広がってきているよ。

 これって、もしかして……。


 ――ズンズンズンズン!

 ――メリメリメリッ!


 やっぱり! ミスリルゴーレムの走る振動のせいで床が崩れ始めているんだわ!!

 このままじゃまずい、早く脱出しないと!


 ――ズンズンズンズンッ!


「転送石起どっ」


 ――ガシャアアアアアン!


「――えっえっ、うそおおおおおおおお!? ――きゃああああああああああああああああああ!!」


 床が崩れたああああああああああああああああああ!!

 はっ早く転送石を……ってない! 落ちた時に手放しちゃった!?

 ああ……今度こそ、本当に私はここまでなのね……神父様、シスター、みんな……ごめんなさ――。


 ――ドブーン!


「――ガボ!? ガボガボガボガボ!!」


 えっ!? 何!? 何が起こったの!?


「ガボガボ――プハッ! ……はぁはぁ……これは、水……?」


 何でこんな所に水が溜まっているのかしら……ん? 横の穴から水が流れてこの中に入って来ているわね、それも四方から……で1本の水路に流れて入っている、という事は……これは貯水槽?

 偶然にも落ちた先が貯水槽で水がクッションになって助かったんだわ……。


「うう……良かったああああああ!! 生きてたあああああ!! 今度ばかりは本当に駄目だと思ったよおお!! うわ~~ん!!」


 生きているって素晴らしい!!




 ◇◆アース歴200年 6月17日・夕◇◆


 幸運は続く物で、手放してしまった転送石も起動中に光る性質のと暗い貯水槽沈んでいた所を簡単に見つけられて、すぐに脱出できた……だけど。


「クシュンッ!! うう……寒っ……」


 濡れた体が冷えたみたいで物凄く寒い!

 もう今日はギルドには寄らず、すぐに宿に戻って暖かいシャワーを浴びて布団に包まろう。

 はぁ……それにしても今日は色々ありすぎて心身ともに疲れたわ……メイスの指した通り、今日は遺跡に入らず帰るべきだったかもしれないわね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る