第69話 コレットの書~発見者・5~

 それにしても、この状況ってギルド的にいいのかな。

 遺跡の前にバザーや傍若無人の数々。


「私としては、この殺伐の空気は何か嫌だな……」


 かと言ってこのまま帰るのもな~どうしよう……。

 ――あっ! でも、考えようによってはこれってチャンスかも。


 今いる冒険者達はどんどん遺跡の奥に行っている、レア・スケルトンはもちろん、他のモンスターもついでに倒されちゃっている可能性が高い。

 となると、その後をのんびりと行けばモンスターに邪魔されず安全に探索できる、しかもそれなら聖水を使わずにすむ!

 聖水は安めとはいえ積み重なれば結構な出費にもなるものね……何より今日はあの高級のステーキ食べちゃったから、ちょっとでも節約が出来る時はしていかないと。

 ……よし、今日はこの作戦で行こう。


「ふふふふ、我ながらナイスアイディアね。それじゃあ、他の人が奥に行くまで私はここで方向確認でもしよ。え~と、見取り図……見取り図……あった」


 さて、今日はどこを探索しようかな。

 ん~……すでに探索している所よりも、まだ未探索の方がいいかな。

 あっでも探索してある方も、隠し部屋が残っている可能性が十分あるよね……まぁそれを私が見つけられるかは置いといてだけど。


「むむむ~難しい……こんな時にグレイさんがいてくれれば……」


 ――ハッ! 駄目だ駄目だ、すっかりグレイさんに頼りきってるじゃない!

 今日みたいに1人で来る場合なんてこれから何回もある、だから自分で考えないと。


「……決めた!!」


 このメイスの先が倒れた方に行く、進む先に困った時はこれが一番!


「せい!」


 ――コーン


「……」


 メイスの先が出口の方角を指しちゃった……え? 帰れって事?

 いやいやいや! 帰れるわけないじゃない!


「もう1回!」


 ――コーン


「……」


 また、出口の方角を指したし。


「……………………よし、まだ探索していない方へ行こう!」


 自分の直感で行く! 進む先に困った時はこれが一番!



 予想通り、他の冒険者が先行してくれたおかげでモンスターに邪魔されずに探索はやりやすい……やりやすいんだけど……やっぱり予想外な事も起こっちゃうわけで。

 まず辺りの通路の造り、何よここ完全に迷路になっているじゃない!

 しかも、この迷路は遺跡を建てた後に思いついたのか無理やりな改築をしたみたいで、壁と壁の間に隙間があちこちにあるし!


「もう、こんな急ごしらえで雑な仕事をするくらいならやらないでほしいよ!」


 見取り図がなかったら完全に迷子になっている所だったよ。

 でも、いちいち見取り図を確認しながら進まないといけないから非常に面倒くさいのよね。


「ハァ……愚痴ってもしょうがないか、え~と……この先は行き止まりだから……左か――」


 ――グチャッ


「あっ……」


 この踏ん付けた、いやな感触は……。


「ハァ……やっぱりスライムの残骸だわ。見取り図に集中しすぎて、また踏んじゃったよ……」


 スライムは眼みたいな球体に粘着力のある液体を纏わり付かせているモンスター、知能はないから人を襲う事はほとんどないし、その眼を潰せば簡単に倒せちゃう。

 特徴的なのは残骸でも粘着力が残っていている事、だから倒されたスライムがそのまま放置されて、あちこちに粘着トラップが出来上がっちゃっているとは思いもしなかった。


「私の村でもよく狩りにこの粘着トラップを使ったてたんだけど、何で私が獲物みたいになっているんだろう……え~と、水筒水筒っと」


 でもまぁ、この粘着トラップは水で濡らせば粘着力が落ちて簡単に取れるからいいんだけどね。


「――ありゃ使い過ぎて、後ちょっとしか水が残ってないや」


 せめて、スライムを倒した人はこの残骸を回収して行ってほしかったな~乾けば粘着力は戻る。

 それである程度使い回し出来るから、それなりの値段で売れるのに……売れる? あ、そうだ。



「何も私まで無視しなくてもいいじゃん、回収して売っちゃえば小遣い稼ぎに出来るし」

 

 そうと決まればさっそく回収を……って、そうだ入れ物がない。

 む~せっかくお金が落ちている様な物なのに……しょうがない、諦め――。


「…………私って本当に馬鹿よね」


 ……普通に入れ物あるじゃん、この手に持っている空の水筒が……。



「――これでよしっと」


 とは言っても水筒如きじゃ、ここに散らばっているのを全て回収は無理があるけどね。

 まぁ臨時収入ゲットしたからいいか。


《あそこにもスケルトンがいたぞ!!》


 あら、この近くでまだ狩りをしている人がいたのか。

 近くっていっても、ここは迷路状だから反対側のほうかも。


《あ、逃げたぞ! 追え!》


 そりゃスケルトンも逃げるわよね。

 こんだけ住処を荒らされているのを見たら……。


『カタッ』


 ん? 何か後ろから音がしたような――。


「えっ?」


 壁と壁の隙間から、スケルトンが出てきた!?


「――ウソでしょ!?」

『カタカタカタカタッ』


 何で!? どうして、そんな隙間から出てきたわけ!?

 あっ! さっき追われていたスケルトンがこの隙間に逃げ込んで、こっちに出て来た?

 ええっそんなのあり!?


「……」


 どどどどど、どうしよう。

 戦うべきか、逃げるべきか。


『カタカタ、カタカタ。カタカタカタカタカタカタカタカタカタ――』


 あれ、なんか顔を出したままで威嚇しているだけ?

 もしかして引っかかって動けないとか? だとしたらチャンス!

 今のうちに、このメイスで!!


「たあああああああああああああ!!」


 ――カーン!


『カタッ!?』


 フッ……華麗にフルスイングが決まったわね。

 飛んでった頭の方は……うん、カタカタ言っていない、どうやら大丈夫そうね。


「それにしても、スケルトンっていつも私の目の前に出てくるけど、何でなんだろ?」


 私ってそういう星の下で生まれたのかな? 

 ……スケルトンに襲われる星……なんてはた迷惑な星なんだろう。

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