第61話 コレットの書~宝箱・4~

 この魔晶石の部屋を調べて色々わかった事が3つ。


 1つ、この部屋のミスリルゴーレムの頭に魔晶花が咲いていた事。

 そんな事はありえないと、グレイさんは頭を傾げていました。

 後、止まっていた1体の頭には魔晶花がなかったから、あのスケルトンがここから持って行った可能性があるわね……。

 ちなみにマークさんが魔晶花をくすねようとしていたけど、ミスリルゴーレムの頭に魔晶花という奇妙な現象を今後調べるからと弄るんじゃねぇ! ってグレイさんにこっ酷く叱られていました。


 2つ、壁に埋もれていた一体のミスリルゴーレムがいた事。

 そのミスリルゴーレムはコアが抜き取られていて完全に機能停止しているらしい。

 ミスリルゴーレムの体は非常に硬いからドラゴニュートが抜き取ったのではないかって言っていたけど、何故コアを抜いたのか、何故壁に埋まっていたのかはまったくの謎……。

 結局、重くて動かせないからとりあえず現状は放置する事に。


 3つ、他のミスリルゴーレムはコアを抜き取られていないのに停止している事。

 これについても理由がまったくわからず、グレイさんの頭もどんどん傾く一方……。

 急に動き出すかもしれないから常に注意を怠るなと言われたけど、こんな大きなのが動き出したらどの道どうしようもないんですけど……。


 そして、私にとって悲しい事が2つ。

 1つ、ケビンさんはこの部屋にはいなかった事、本当に一体何処にいるのかしら……。

 2つ、魔樹がなかったのは事、う~……見てみたかったな~。


「うーむ……色々と気にはなる所はあるが、今日はこの宝箱の中身を確認して終わりにするか。ドラゴニュートについては一時的なのかもしれないが、今の時点ではこの遺跡にいないのは間違いないだろう」


 私的には、このままずっといない方が嬉しいんだけどな……。


「はい……」


 グレイさんは一時的かもって言っているから戻って来るかもなんだよね。

 だから今は居ないと言われても心から喜べない……。


「さて、それじゃ冒険者の楽しみの一つである宝箱を開けますか」


 ――っと、いつまでも弱音をはいてちゃダメだ。

 ケビンさんは絶対どこかにいる、もしかしたら案外近くに居るかもしれないしね。

 だから今は……。


「「おー!」」


 目の前の事に集中、やっぱりこの宝箱は気になっちゃうし。

 一体何が入っているんだろう、お金かな? 宝石かな? もしかして伝説の武具とか?

 中身がわからない宝箱を開けるのってこんなにもドキドキするなんて思いもしなかったわ。


「それじゃ何があってもいいように俺が開けるから、お前らは少し離れてろ」


 あ~やっぱりグレイさんが開けるんだ。

 でも、何で離れる必要があるんだろ?


「え? でも罠は無いんですよね?」


 あれだけ念入りに調べたんだから大丈夫のはずなのに。


「ああ、かといって中が安全とも限らないだろ? 開けるまで分からないんだから」


 ……それはそうか。

 残念だな~初めての宝箱だから私が開けたかった……まぁこればかりはしょうがないよね。


「何だコレット? 自分が開けたかったって顔をしているな」


 うっばれてる。


「……顔に出ちゃってました?」


「顔に書いてあるぞ」


 きゃ~恥ずかしい!!


「……よし、コレットが開けてみるか?」


「え! いいんですか?」


 本当にいいの!?

 それはすごく嬉しい!


「何事も経験だしな、何回も言うがその中身は危険かもしれない。ただ、冒険者を続けていく上では避けては通れない道だし、それで怖気づくようなら冒険者として成長は出来ないと俺は思う」


 なるほど……冒険者としての成長か。


「……そうですね、じゃあ私が開けます」


 そうだよ、ケビンさんを探すのに危険を避けているようじゃ駄目だ。

 もしかしたらもっと危ない場所にケビンさんはいるかもしれないし。


「ちょ! ずるいっス、コレットさん! 俺も開けたい――あだ! 何で殴るっスか!? 先輩!」


「馬鹿、万年一つ星のお前より、今日始めて宝箱を開けるコレットが優先に決まっているだろうが! うーん、こいつが近くだと邪魔になりそうだな。コレット、俺はこいつと少し離れた所に行くわ」


「そんなー!」


 マークさん、ごめんなさい。

 でも今回は私が宝箱を開けさせてもらいます!


「はい、ふぅ……」


 何が起こるかわからないのはやっぱり怖い。

 でも冒険者を続けていく上で避けては通れない道!

 

「よし、ファイト私! 開けます! ん! ――ってあれ? んん!! 駄目だ……開かない」


 びくともしないんですけど。


「恐らく建てつけが悪いんだろ。コレットのメイスで上部を叩いてこじ開けろ」


 ちょっ何がある変わらないのにメイスで殴っていいの!?


「え!? そんな事をして大丈夫ですか?」


 むしろ逆効果な気もするんだけど……。


「俺も開かないのは無理やりこじ開けてるからな、でも開いたらすぐこっちに逃げるんだ」


 ん~このままじゃ埒が明かないし、言われた通りにするしかないかな。


「分かりました。――行きます! えい!」


 ――カーン!


「よし! 開いた!」


 後は即離れ――。


『カタカターカタ!』


「――っ!? きゃあああああああああ!!」


 なななななっ何で宝箱からスケルトンが飛び出してくるのよ!? さすがにこれは予想外すぎるって!!

 しかも離れる時に出てきたせいでこけちゃったし、お尻が痛い。

 いっいや、今はそれより逃げないと!


「くっ…………あれ……?」


 う、うそでしょ……今ので腰が抜けて動けないなんて!


『カタカタカタ、カタカタ、カタカタ。カターカタカタカタ……カタカタカタカタカタカタカタ――』


 何かスケルトンが歯を鳴らしながら、両手に持っている赤い球体を前に出してきた。

 え? あれは何なの? あれで私をどうするつもりなの? っまさか生贄!?


「ちっこれじゃ間に合わん! マーク、閃光石を投げるんだ!」


 そうだ閃光石!


「うっス! ――っおりゃ!」


 よし、光に紛れて少しでも離れ――。


「なっ!? それは違っ――」


 え? 飛んで来たのは赤の石。

 って事は……あれは爆裂石じゃないのよ!


 ――カッ


 うそでしょ!? こんなに近くで爆発しちゃうと――。


 ――ドカアアアアアン!!


『カタ――――――――――――!!』


「きゃああああああああああああ!!」


 マークさんのバカああああああああああああああああああああ!!

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