第62話 コレットの書~宝箱・5~

「あああああ――あだっ!! あいたた……」


 爆風で吹き飛ばされて、頭をうっちゃった。

 ……けど、痛いって事は生きているっ事!! あ~よかった。

 さすがに爆発の瞬間は終わったと思ったわ……。


「おい! コレット、大丈夫か! 生きてるか!?」


「コレットさん!!」


 2人が血相変えて駆け寄って来た。


「あ、はい……ちょっと頭をぶつけて痛いですけど……」


「それ以外に痛みは!? 他に怪我をしたところは!!」


 他に痛いところ……あれ? 別に痛みを感じない。


「え~と……特にない……です」


「…………はっ? あの爆発で無傷だって!? 鎧も粉々になっているのに!」


 え? あっ本当だ、鎧が粉々になっちゃってる。

 だけど……うん、体を動かしても痛みを感じるところはない。


「やっぱり痛いところはないです……あの、私は何で無傷だったんでしょう?」


「いや、こっちが聞きてぇよ……だが一応念の為に体を調べさせてもらうぞ」


「はい、わかりました」


 本当にどういう事なの?


「ごめんないっス! コレットさん! 俺が間違えたばかりに!!」


 う~わ~マークさんが頭こすり付けの土下座をし始めちゃった。

 正直、あの爆発の瞬間はマークさんのところへ化けて出てやるって本気で思ったけど、無傷だったし……はぁしょうがないか。


「あの……顔を上げてください、一応あれでスケルトンから逃げられましたし」


 結果論だけど。


「ふーむ……本当に身体は無傷だな、どういうわけだ? ……でも、念の為に治療石を使うからじっとしてろ」


「あ、はい」


 う~ん、考えられるとすれば私の運がよかったから?

 ……なわけないか、それだったらとっくにケビンさんを見つけているはずだし。


「うう……本当に申し訳ないっス。――そもそも、あのスケルトンが急に飛び出してくるのが……へ? ちょっ!? 2人ともあれ見てくださいっス!! ス、ケルトンが!」


 どうしたんだろ? マークさんがすごく慌てているけど。

 鎧が粉々になるほどなんだしスケルトンも同じように――。


「はっ!?」


 ――なってないし! 粉々どころか姿かたち保ったまま大の字で、柱にめりこんじゃってるよ!!

 しかも、その柱ヒビが入って――。


「おい、動くなって」


「いや、そんな事を言っている場合じゃないんですって! あれ見てくださいよ! あれ!」


「あん? 一体どうし……おいおい! マジかよ!! 骨のクセにどんだけ頑丈なんだ!?」


「そこですか!?」


 問題なのは、スケルトンがめり込んでいる柱の方でしょ! ヒビが天井や壁にどんどんと広がって行っている!

 このままだと、この後に起きるのは。


 ――カンッカンッ


「――ひっ!」


 やっぱり天井から破片が落ちてきた。


「グレイさん、これって……まずいんじゃ……」


「……こりゃ、ここが崩れるのも時間の問題だな。すぐに転送石で脱出するぞ!」


 デスヨネー。

 何でいつもいつも脱出する目になるかな。


「あっそういえば……ちょっと待っていてくださいっス!」


 ちょっと! こんな時にマークさんが走り出してどこ行くつもりなの!?


「おい! 早く逃げないと崩落に巻き込まれるぞ!」


「すぐ終わるっスから! ――確かこの辺に……あったあった」


 しゃがんで何を拾っているみたい。

 あれは……赤い石? もしかしてスケルトンが持っていた奴じゃ!


「マークさん、それっ――」


 ――ズンッ


「キャッ!!」


 今度は大きい破片が天井から落ちてきた!


「もう限界だな、はさっささと脱出しよう。――マーク! 俺らは先に脱出するから、お前もすぐ脱出しろよ!」


「わかったっス!」


「いや、でもあれは……」


「ぐずぐずするな、脱出するぞ!」


 あ~も~! 後から聞くしかない。

 取り返しがつかない事ににならなきゃいいけど。

 

「「「転送石起動!」」




 ◇◆アース歴200年 6月16日・夕◇◆


 いつものリリクスの景色……すっかりなれちゃったな。

 お日様が傾いているからもう夕方か。

 何か夕日を見てると、こう――。


 ケビンさ~ん!! 何処にいるんですか!!? いい加減に出て来てくださああああああああい!


 ――って叫びたい気分、恥ずかしいから叫ばないけど。


「ふぃー、危なかった。ギリギリだったっスよ」


「お前、何やってたんだよ」


 マークさんも無事に戻ってきたみたいね。

 拾って来た物を確認しないと。


「マークさん、さっきスケルトンが持っていた赤い石を拾っていましたよね?」


「何、赤い石だと?」


「そうなんっスよ! 爆発した時に飛んでいくのを見て、回収していたっスよ」


 袋から3個の赤い石を出して……って3個!?

 何で1個増えているのよ!


「……え? ええ!? おい! 見せろ!!」


「――うぎゃっ!!」


 またマークさんがグレイさんに弾き飛ばされた。

 マークさんって体重軽いのかな。


「これは、間違い……おい、コレット!! スケルトンが持っていたっての本当なのか!?」


「はっはい、でも私が見たのは両手に1個ずつで2個だったんですけど……」


「……て事は何か、あの壁にはまっていた奴のはスケルトンが持っていたってか!?」


「あ、あのグレイさん?」


「しかも2個も持ってて1個は落ちていた!? どういう事だ、何がどうなっているんだよ!!」


 こっちが聞きたいです。

 これじゃ話が進まないから、まずは落ち着かせないと。


「グレイさん、落ち着いてください! 私も何がなにやらわかんないですよ」


「っ……ふぅ……すまん……つい、興奮してしまった」


 良かった、落ち着いてくれたみたいね。


「いえ、それでこの赤い石って何ですか?」


「これはミスリルゴーレムのコアだ」


 ミスリルゴーレムって、あの部屋にいた動かない奴だよね。


「あっそういえば、壁にはまっていた奴ってコアがなくて、グレイさんはドラゴニュートが取ったって予想していましたよね」


「ああ、しかしそれは壁の奴1体の話だ。ドラゴニュートが落としたのを拾ったとも考えられるが、何故3個も。あとの2個は一体何処で手に入れたのか」


「なるほど……」


「それにコアを持ったスケルトンが、あの宝箱の中にいたのも謎すぎる」


 私的には思い出したくないところだわ。

 さすがにあれは驚いた。


「あたた……どうも話を聞いてる限り、コアを持っていたあのスケルトンに直接聞かないと解決出来そうにないっスね」


 スケルトン相手に、どうやって聞くのよ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る