第33話 ケビンの書~接触・2~

 それによく考えるとコレットが来なかった理由は他の可能性もある。

 それはギルドの存在だ、コレットはドラゴニュートに出会った事をギルドに報告してるだろう。

 そうなるとギルドはレベルの低いはずだった白の遺跡を危険区域と認定するはず、そうなってしまうと一つ星のコレットはおいそれとはここには来れなくなってしまう。




 ◇◆アース歴200年 6月15日・昼◇◆


「おい、ケビン。そんな部屋の隅っこに座り込んで、いつまでしょぼくれてるつもりじゃ」


『……ほっといてくれ』


 そりゃしょぼけれたくもなるよ、自分のせいでコレットとの距離が空いてしまったかもしれないんだからな。


「駄目じゃな、これは……む? おい、ケビン」


『……だからほっといてくれって』


 これだからモンスター嫌なんだ、空気を読んで一人にさせてくれよ。


「誰かがわしの家に入ってきたんじゃが――」


 何だと!?


『コレットか! コレットが来たのか!?』


「いや、そこまでは分からんが……」


 絶対そうだ!

 俺の直感がそういっている!


『とにかく早く入り口に行かないと!』


 見失ったら大変だからな。


「……駆け足で行ってしまったのじゃ。はぁ仕方がないのぉ、わしも後を追うか」

 


 入り口まで来たが、まだいるかな……いた! 良かったやっぱりコレットだ。

 おお、緑のリボンにポニーテール! ますますかわい――。


『――って、コレットの横にいるおっさんと若造は誰なんだ!?』


 一人は顎鬚、頬に傷、ぱっと見30後半から40歳ちょっとくらいか……むっ星が4つ掘られているプレートを着けているな、名前は……駄目だ、擦れてよくわからん。つか何をどうしたらこのプレートがあんな風に出来るんだろうか……。

 そうか、あの四つ星級の親父がコレットに冒険の知識を教えていたのか。


 そしてもう一人は赤毛に逆毛で見る限りチャラそうな若い男だな……コレットと同じか上くらいの歳かな? プレートの星は1つで名前は……マーク・バウティスタ、知らない名前だな。

 しかし装備を見る限り新米って風にも見えないし、万年一つ星級冒険者って奴か。


 だが名前や星の数なんて、そんな事は今はどうでもいい! 今問題なのは――。


『何でコレットが男2人とこの遺跡に来ている事だ! コレットはソロのはずだろ!? それがどうして男連れで遺跡に来てるんだあああああああああ!』


 何故だ!

 そうしてこうなった!?


「何を勝手に小娘が一人で来ると決め付けておるんじゃ……そんなに興奮するな、少しは落ち着くのじゃ」


 落ち着けだと?

 コレットが男を2人も連れているのに落ち着けだと!?


『これが落ち着けるか! だって! だってコレットが、おおおおおお男とおおおおおおおお!!』


「あ~もう! おおおとうるさいガイコツじゃの!! 頭を冷やすのじゃ! ダイヤモンドダスト!!」


 ダイヤモンドダスト!?

 氷魔法の最上級の奴じゃないか、そんなの食らったら――。


『ちょまっ――ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 まずい! このままでは体が凍る!


『ヤメエエエエ――アッ』


「あ、しまったのじゃ。威力が強すぎてケビンが凍ってしまったのじゃ」


 まさに骨に染みる寒さ……ってそんな事を思ってる場合じゃないぞ。

 体を動かそうとするとペキペキ言って今にも砕け散りそうだ、これじゃ動くに動けない。


『……ア……アガ……』


 言葉も喋れん。


「いや~すまんすまん、今その氷を溶かす――」


《ん? 今叫び声みたいなの聞こえなかったっスか?》


《え? 私は聞こえなかったですけど……》


『「――っ!?」』


 まずい、気付かれた。

 ナシャータ早く溶かして――。


《……ふむ、俺にも聞こえなかったが魔力感知の羅針盤は反応しているな。――こっちだ、気づかれない様に静かに、ゆっくりと進むんだ》


《うっス》


《はい……》


 あの親父、静かにとか言ってるが自分自身の声が一番でかいんだが。

 そういやグレイの奴もそうだったなー、今頃あいつどうしているんだろうか。

 いや、それよりこっちに来るのはやばい、ナシャータ早く!


「あ~駄目じゃな、これはもう間に合わん」


 え?


「……すまん、ケビン。わしは隠れるからの!」


 はっ? ちょっと待てよ!! このままの姿で置いていくなー!

 ……本当に飛んで行っちゃったよ。


「なんだこれ?」


 うげっ、見つかった!


「どうし……キャッ! スケルトン!?」


「……が凍ってるっスね」


 おい、つんつんと俺をつつくな。

 しかもお前すごい香水臭いぞ! つけ過ぎだ、もはや悪臭になっているじゃないか。


「2人も触ってみたらどうっスか? こんなの今までにない事っスよ」


 何を言っているんだこいつは……。

 あーでもコレットはいい、だがおっさん何かに触られたくねぇ!


「どうやら本当に凍ってるようだな。どういう訳だ、これは?」


 と思ったのに、このおっさん躊躇なしで触ってきやがったよ!

 それにどういう訳もあるか、ただドラゴニュートに凍らされただけだ!


「コレットも触ってみたらどうだ?」


 そうだコレット、せめて君が触れておっさん成分を中和してくれ!


「あ、いえ……私はいいです」


 ガーン!! そっそんな……。


「ふむ。不思議な現象だが、今はドラゴニュートの方が先決だ。先に進むぞ」


「うっス」


「あ、はい」


 待ってくれコレット! せめてつつくだけでもいいから!

 ……ああ、奥に行ってしまった。


「――ふぅ、危ないとこじゃったな」


 逃げ出したドラゴニュートが戻ってきた。

 何で人間相手にドラゴニュートが逃げてんだよ。


「それじゃ溶かすからの、フレイムウォール!」


 ちょ! 今度は火魔法の最上位の奴を!


『――――ッアツツツツツツツ!!』


 このドラゴニュートは加減というものしらねぇ!!

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