第13話 コレットの書~悪夢・2~

 ◇◆アース歴200年 6月12日・昼◇◆


 白竜の遺跡に着いたけどもう太陽の位置が頭の上、早くナイフを見つけないと。

 おっと、入る前この聖水を全身にかけてっと……これでよし。

 ――とはいっても注意していくのに越した事はないよね、まずは入り口の偵察を……。


《入り口付近にモンスターの姿は……ないみたいね》


 ならこのまま進めそう。


《よし、ファイト私!》

 

 ただ……昨日初めてこの遺跡に入ったからな~あの場所まで行けるのかな……。


《え~と……確かこっちだったよね》


 たぶんそう、だったよね。

 ……あっていればいいけど、不安だ。



《ゼ~ハ~ゼ~ハ~……ふぅ……》


 本当にこの鎧は重くて動きにくい、ちょっと一休み……。

 それにしても昨日と同じで転んでばかりであちこち痛い、ケビンさんどころかナイフすら見つけられない気がしてきた。

 いやいや! 何弱気になってるの! この先もっと辛い思いをするのは目に見えてるわ、これしきの事でどうするのコレット。


《え~と……次はっと……こっちだったかな……よいしょっと!》


 とにかく先に進まなくちゃっ!?


《きゃっ! ――うぎゃっ!》


 あう、言ったそばから……また転んじゃった……。


《う~……………………》


 うう、心が折れ始めてきたよ……。

 神父様、シスター、ヘンリー、マリー、ブレン……みんなに会いたいよ。


 ……………………。


《……ふんっ!》


 冒険に出てまだ数日しか経っていないに戻ったんじゃみんなに笑われるだけじゃない。

 何回も転んでも何回も起き上がってやるんだから!


《あっ》


 この体勢でこけるのはまず――。


《うぎゃっ! ……いった~》


 うう……アーメットのおかげで顔を床に打ちつけなかったけど、そのアーメットに頭をぶつけちゃった。

 これじゃ結局痛い思いしてるだけじゃない、先が思いやられるな……。



《……? この辺りすごく歩きやすいけど何でだろう?》


 なんか落ちて石とか床の出っ張りとかがなくなってるような……。


《ん~……まぁいいか》


 もう転んで頭打つのはいやだしね。

 お? ここは見覚えがある。


《あそこに柱があってこっちには曲がり角……うん、間違いない落としたとしたらここだ》


 よかった~うろ覚えで進んでたからかなり不安だったけど、ゾンビとスケルトンに出会った場所は色々衝撃的すぎて頭にこびりついているみたいだわ……本当はすごく忘れたい事だけど……。

 さて、聖水が効いている内に探さないと。


《――どこかな、う~ん……見当たらない》


 というよりアーメットの視界が悪くて見えない。

 そもそも、そのせいでこけてばかりだし……。


《あ~も~! このアーメットじゃ見えないよ!》


 本来頭を守るためにある物だけど、もういい! 取っちゃえ!

 着けてる方がかえって危険だよ!


「ぷはっ。よし、これで見やすくなった!」


 決めた、もう二度とこんなアーメットなんか着けない!

 あ~でも使わないのはやっぱり勿体無いような……でも……う~。

 よし! ナイフを見つけてから考えよう、そうしようそれが先決!


「――う~ん、ないな~……どこいったんだろう。というかやっぱり昨日来た時ってこんなに床が平たんじゃなかったよね、明らかに手入れをした感じがするんだけど……」


 これってどう考えてもおかしい。


「モンスターがこんな事するわけないし、人がやったとしか考えられない――だとしたら、きっとあの後から他の冒険者が来て持って行っちゃったんだ! も~!」


 最悪最低の自体じゃないの!

 私の馬鹿あああああ!!


「はぁ……」


 どうしよう、戻ってまた受付嬢さんに相談しようかな。

 いや。まだこの辺を見ただけだし、もうちょっと先を見てから戻ろう。


 ――カチッ


「ん? なにか足元で音がしたような……」


 ……なんだろう、すごく嫌な予感が……。


 ――ゴゴゴゴ


「え? え!? 嘘でしょ!? 壁が!!」


 嫌な予感的中!!

 壁がこっちにせまって来た! このままじゃ押しつぶされちゃう!

 くっ左はまだ遠い、だとしたら右へ――。


『カタカタカタカタ! カタカタカタカタ!!』


 ちょっ!? 何でこのタイミングでスケルトンが突進してくるの!? しかも逃げたい右から! これじゃ逃げられないじゃない!

 ああ……神父様、シスター、みんな、ごめんなさい、私はここまでのようです。


「きゃっ!? ――あいたっ!」


 スケルトンの体当たりの衝撃で壁の外側に逃げられた!?


『――ガタッ!』


 あ、スケルトンが頭だけ出て体の部分が壁に挟まれた。

 あれじゃもう動けないよね、たっ助かった……。

 色々偶然が重なったおかげで命拾いしたわ……私はなんて運がよかったんだろう。


 ――ゴンッ


 っ!? はみ出てたスケルトンの頭が落ちた、頭だけなんだから大丈夫……だよね?


 ――キンッ


 あ、スケルトンの手から何か落ち……っ! これって私のナイフ!?

 これで私を刺す気だったの……? あの子達がくれた大事なナイフで私を?

 ゾゾッ! 何て恐ろしい事を!!


『カタカタカタカタ!』


「ひぃ! 落ちた頭がカタカタ動いてる! まだ私を襲おうとしてるの!? はっ早く町に戻ろなくちゃ――転送石起動!」


 スケルトンって本当に低級モンスターなの!?

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