第12話 コレットの書~悪夢・1~

 ◇◆アース歴200年 6月12日・朝◇◆


 はぁ、結局ナイフの事が頭いっぱいでよく眠れなかった。

 それに宿代、食事代で全財産は4万ゴールドちょっとになっちゃった。

 ナイフを探しに行かないといけないけど、やっぱりケビンさんの探索にはお金が必要だよね……手っ取り早く稼ぐ方法はないかな、う~ん、どうしよう……。

 そうだ、私が考えるよりもギルドの受付嬢さんに相談してみよう、その方が確実だよね。


《よし! ファイト私!》



 あ~やっとギルドに着いたよ。


《ゼ~ハ~ゼ~ハ~……昨日の疲れが取れてないから……ギルドに来るまでにもう……息が上がっちゃった……》


 装備より先に体力を付けるべきかもしれない……。

 さて中に入りますかっと、ギルドは相変わらず賑わってるな~。

 え~と……いたいた、昨日の受付嬢さんだ。


《あの~》


「はい、なんで――あの……どなたですか?」


《え?》


 あ、そうか。この格好じゃわかるわけないよね。


「プハッ、私です。コレットです」


「ああ、コレットさんでしたか。えーと……どうしたんですか、その格好は?」


 アドバイス通りにバザーで買った物なのに何かおかしかったかな。


「昨日バザーで買った物ですけど?」


「……ええ……うそでしょ……まさかそんな物を買うなんて……」


「何か言いました?」


「いっいいえ、別に何も」


 なんだろう、受付嬢さんの今の信じられない物を見たという顔は。


「それで今日はどうしたんですか?」


 おっと、本題を話さないと。


「はい、実は――」



 お金の事も話して、ついでに探索のアドバイスももらえたらなと昨日の白竜の遺跡の事を話したけど。


「むむむ……スケルトンがゾンビに対してそんな事を……今までになかった事だわ」


 スケルトンのせいで本題のお金と探索のアドバイスの事を忘れられてしまった。


「後で報告書にまとめて上に提出しないと……それに研究者にも……」


 へ~あのスケルトンの行動って今までになかったことなんだ。

 って違う違う、そうじゃなくて。


「……えと、あの、考え事をしてるとこ申し訳ないんですけど……」


 受付嬢さんの仕事も大事だろうけど、私もこれは大事な事なんだから。


「あ、すみません! えーと、お金と探索の事でしたね。……うーん、やはりお金に関したらギルドの依頼を受けるしかないですかね」


 それだと一つ星の私じゃ報酬はかなり低いのよね。


「虫のいい話ですが手っ取り早く稼ぐ方法は……」


「手っ取り早く、ですか。それだと何処かに潜って高価な金品を探し出すしかありませんね……それは運次第ですけど」


 やっぱりそうだよね……。


「……そうですか」


「ただ一人の探索となると熟練の冒険者でも難しいので仲間がいた方が……」


 仲間、ねぇ。


「リリクスには一昨日に一人で始めて来たものですから……」


 仲間どころか知り合いもいないのに。


「……ですよね」


 ですよねってわかってるなら言わないでよ。

 何か私がボッチみたいで悲しくなる……。


「でしたらあの掲示板で募集をかけるか、もしくは何処かの直接冒険者さんと交渉してパーティに入るかですかね。ちなみに先ほどお金の事を言ってましたけど今の所持金は……」


 あまり言いたくないな。


「えと……4万ちょっと、です」


「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」


 受付嬢さんがすごいうなってる。


「その金額だと募集も交渉も難しいでしょうね」


 デスヨネー。


「やっぱりそうですか、はぁ……」


「すみません、お力になれなくて……」


「いえ、気にしないでください」


 でも、これからどうしたものか……。


「あ、そうだった。コレットさん、明日はギルドに来られますか?」


「え? はい、大丈夫ですけど。どうしてですか?」


「明日は探索を終えたグレイさんが戻って来る予定なんです」


「グレイさん?」


 誰だろう?


「はい、四つ星級冒険者のグレイ・ガードナーさんです。ベテランの方でお金の事や探索のアドバイスを教えて貰えると思いますよ」


 四つ星級冒険者!?

 確かに良いアドバイスを教えてもらえそうだけど、でも――。


「教えてもらうのにお金って……」


「大丈夫です、気さくな方ですからお金を取るとは思いません」


 よかった……。


「分かりました、明日また顔を出します。色々ありがとうございました、それでは今から白竜の遺跡に行って来ますね」


「さっき話してたナイフを取りに行くんですか?」


「はい、大事な物ですから」


 ケビンさんの事も大事だけど、ナイフも同じくらい大事な物だもん。


「そうですか……ちょっと待って下さいね。えーと――」


 なんだろ?

 受付の後にある棚をあけて何かを探してるけど。


「あったあった。これを持って行ってください」


 これって……水が入った小瓶?


「これは?」


「聖水です。これを体にかけておくと下級の不死モンスターは嫌がって近づいてきません。ただ効果は約1日しか持ちませんので、念の為に遺跡に入る前にかけてくださいね。はい、どうぞ」


 そんな物があったんだ。

 って私がそれを貰っちゃっていいの!?


「あの、そのような物を貰っちゃっていいんですか?」


「はい、これは私の奢りです。本当はいけなので内緒ですよ、頑張って下さいね」


 ああ、受付嬢さんの笑顔、まるで女神のようだわ。


「ありがとうございます!」


 やった、これがあればナイフも探しやすくなる!

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