3‐3.再会 (side 晴)

 新宿西警察署のロビーで晴と龍牙は蒼汰が来るのを待つ。開いたエレベーターから刑事に連れられて蒼汰が降りて来た。


『蒼汰!』


晴のよく通る声がロビーに響く。蒼汰は疲れきった顔を上げた。自慢のパーマがかった茶髪も今はボサボサだ。


『晴……来てくれたのか』

『当たり前だろ。相棒だからな』


晴が蒼汰の肩を叩くと、蒼汰が弱々しく笑った。それを微笑ましく見ていた龍牙の側に刑事が寄る。


『リュウ、ちょっといいか?』

『ああ。二人とも車で待ってろ』


 龍牙は晴に車のキーを投げ渡し、刑事と一緒にロビーの隅に歩いていく。どうやら龍牙とあの刑事は知り合いらしい。

車の鍵を預かった晴は蒼汰を連れて警察署を出た。駐車場に停めた車の後部座席に二人並んで座る。


『……悪い』

『蒼汰が謝ることじゃねぇよ』

『でも晴が言ってくれたじゃん。俺らみたいな奴がクラブに出入りしてるとサツに目を付けられるって。まじにその通りになっちまって情けねぇよ。女にそそのかされて……バカだ俺』


 蒼汰はうなだれて肩を落とした。晴は座席のシートにもたれて頭の後ろで両手を組んだ。


『事情は洸や龍牙さんから色々聞いたけど、エリカは蒼汰を逆ナンしてきたんだよな?』

『麻布のクラブで向こうから声かけてきた。そのまま流れでホテル行って、まぁそういうことだ』


まぁそういうこと、は、なんだろう。そこは特に詮索しない。

詮索しなくとも通じる事情が男同士にはある。


『どんな女だった? 年齢や見た目とか』

『歳はハタチて言ってたけど……ハタチのわりには幼い気もしたな。髪は金髪のウルフカットのショート』


 エリカが偽名だとすれば年齢も偽っている可能性が高い。同い年だとすれば、エリカは高校生……?


『顔は美人系? 可愛い系? 普通?』

『特に美人系でも可愛い系でもないな。渋谷にたむろしてる風の今時の女。化粧で誤魔化してるけど風呂上がりの素っぴんはおとなしめの顔立ちだった。だからヘソ出しの服やへそピや金髪ショートも違和感あったな』


外見的特徴は街を歩けばよく見掛けるどこにでもいる女だ。金髪ショートの女には渋谷や原宿に行けばうじゃうじゃ出会える。

晴は唸った。これではエリカの手がかりが少なすぎる。エリカの行方は警察も追っていると言うが、自分にも何かできることがないのか彼は模索していた。


『サツは俺とエリカがグルじゃないかって疑ってた。クスリをやってないって言っても信じてくれねぇし俺の親父がヤク中だから俺もやってるに決まってるって決めつけて……俺を信じてくれた刑事は二人だけだった』

『二人?』

『そのうちの一人がさっき俺を連れて来てくれたあの人』

『あの刑事か。龍牙さんの知り合いみたいだったな』


 蒼汰を連れてきた刑事の顔をぼんやりと思い出す。真面目そうで穏和な雰囲気の男だった。


(あの刑事の顔、どっかで見たことあるんだよなぁ。よく似た人を知ってる気がする……)

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