第4話(6)

「ありがとうございます……?」


「うーん。本当にいいな、これは」


 僕のお礼を無視して、うっとりと銃を眺めている。

 何か自分が生み出したものを、ここまで気に入られると、恥ずかしいな。

 子供が褒められたら、こんな感じだろうか。


「で、試験は……」


 なんとなく気恥ずかしくて、視線を反らして、何もない空中に目を向ける。

 すると、何もないところに半透明の壁が浮かび上がり、そこからザコキャラっぽい、筋肉質の人間に羽と牙が生えたような紫色の化物が、三匹程飛び出してきた。


「……ひっ!」


 僕の悲鳴に重なって、ずどどど、とでも表したらいいのだろうか。マシンガンのような音が聞こえ、化物どもはあっという間に肉片になり、僕が尻もちをつく頃には、その肉片すら燃えて消えてしまった。


「すごいすごい。これいいね。最高!」


 ぴょんぴょん跳ねるシロ。こうして座った状態で見上げてみると、さらにデカく感じる……じゃなくて。


「今のも、シロさん……シロが?」


「そうだよ。安心してよ。死なないようにしたし、わたしが倒してあげただろう?」


 つまり、僕の銃の出来に満足して、試し打ちがしたくなって、イメージで化物を出したのだろう。


 言ってよ、先に。

 まだ腰が痛いんだけど。


「うーん。でもちょっと不満かな? これと同じものをもう一つ出して、咄嗟に応戦するぐらいはしてほしかったなぁ。ヒーローとしては」


「えぇ……」


「大丈夫、大丈夫! 不合格ってわけじゃないからさ。でも、そうだな。戦場に出るのはまだ先かな? わたしのイメージした練習相手としばらくトレーニングだな!」


 それは、まぁ、死なないからいいのか……? 死んだらどうなるかいまいち理解してないけど。それより。


「トレーニングして、誰と、いや、何と戦うんですか?」


 夢の中で退屈してるから、わたしと延々戦ってもらうよ、とか言い出しかねない。そんな精神と時の部屋はいやすぎる。戦闘民族じゃないんだ、僕は。


「それは、『ナイトメア』だろうな。当然」


 当然、って言われても。悪夢? と戦う?


「ほら、さっきわたしが出したのもそうだし、君の事を夢の中で追い掛け回していたのも、そうだ」


「うーん……?」


「厄介なんだよ。ナイトメアは。いくらでも出てくるし、どんな姿でどんな能力かも分からないからね。人の数だけ、いやそれ以上にいるから当然なんだけど」


 説明の度に謎が増えていく。



 もしかしてシロ、説明ヘタクソなのか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る