第3話(7)

「みんな夢でも見てたのかもね」


 ふむ、なるほど。


「集団催眠か」


「もしくは集団面接? 面接に受かった人だけが、夢に囚われるとか」


「面接ねぇ……」


 知らない場所にいて、知らない声を聴いて、走って逃げて。

 配達か何かのバイトだろうか。


「それだと、私は不合格っぽいかなー。なんかしょぼかったし」


「いやいや、女の子と直接会ったんだろ? 社長面接みたいなものじゃん」


「え?」


「え?」


 何か、疑問を挟む余地あったか。

 女の子が社長とか、ない話じゃないらしいし。というか昨今、別に珍しい話でもないような。


「女の子が夢を見せてる、ってこと?」


「……あれ?」


 そうなるのか。社長なら。何の社だよ。夢の社?


「他人の夢で死んじゃいけない。なるほど。知ったようなこと言うのも、夢を作った側だからか」


「ちょっと待てよ、縁が面接とか言うから、そっちに合わせただけだよ」


 いい加減、学校も近くなってきたので、それなりに人目が気になる。なーんだ、そうか、で話を終わらせてほしい。


「それは適当に言っただけだし」


 僕だってそうだし。


「んー? それだと年上の子が面接官、あくまで年下の子がトップの立場っぽいよねえ」


「それは……まあ、そうなるのかな」


 面は接してなかったけど。

「うんうん! 面白い考察が出来そう!」


 ありがとう、と僕の手を持って、犬の手みたいにブンブン上下に振る。こんなに嬉しそうな縁は久しぶりかもしれない。


 これは明日の俳句は無しかな?

 今日一日中、そればっかり考えているだろうから。


 縁は既に、僕なんか眼中にないらしく、そっか、夢を見せている主体がいるのね。目的は何? などぶつぶつ呟いている。こうなった縁は、僕では止められないし、ましてや学校の授業や教師なんてものでは、どうにもならない。つまらないからな。


 下駄箱に着き、じゃあ、授業受けてるフリぐらいはしろよ、と嫌味を言うが、手を振って返される。おいおい、喋るのも面倒ってか。もっと僕にリソース割いてくれよ。と、思う反面、僕は縁にどれくらい割いているのか疑問になる。


 学校、家族、将来、この辺りが大半を占めるとして……ふむ、教室に着くまでなら、考える価値があるかもしれない。リソースを割いてみよう。


 まず、と考え始めたところで、肩に衝撃が走る。


「なんだよ、お前も遅刻か?」


 悪友の朽原。考察終了。

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