第1話(4)

 布団の中で僕は思案する。


 これまでのこと、これからのこと、そして何より今日のこと。


「夢はあるけど、夢の中」


 縁の今日の俳句。俳句か?

 縁は、叶えたい夢が夢のまた夢、とかなんとか言っていたけど、別の解釈はないだろうか。夢の中をそのままに捉えて、睡眠中、つまりは叶えたい夢が有るけど、どうにも今は寝ていたい、とかそんなんだ。


 僕らの街には、そっちの方がしっくりくる、気がする。


「……夢囚病、か」


 怖くないと言えば嘘になる。意識の無い状態が、何日も続くのはやっぱり、怖い。だけど、死ぬわけじゃない。今月に罹患した七人(と言っても一日か二日ぐらいらしい)以外は一人の例外もなく目が覚めている。スッキリした気分で。


 だったら。だったら別に、罹っても良いのかもしれない。いつの間にか僕の周りにまとわりついている、嫌な気分を掃えるならそれで。


 家族は心配するのかな。学校の皆は?


 ……縁は?


 他の人なんか、わりとどうでも良い。

 さっきはあんな風に言ってたけど、本当に事が起こったなら、きっと、お見舞いに来てくれるはずだ。多分。というか、来なかったら本気で哀しいんだけど。


 ごちゃごちゃ考えてたら、意識が遠のいてきた。


 体が布団に沈む。感覚は浮遊する。


 この眠りに落ちる前の、なんとも言えない感じが好きだ。

 疲れとか悩みとか、全部取り去って、まっさらな自分に戻る感じ。


 縁なら分かってくれるかな。

 聞くだけ聞いて、俳句の材料にするのかな。

 どっちでもいいか。そんなことは。

 覚えていたら、明日話すことにしよう。


 それでは。

 



 おやすみなさい。

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