「弁当のその後」

『待ってくれサラ! 何で別れるなんて言うんだ!』

家から飛び出した女を、男が追いかける。

女は道端で足を止め、振り返った。

『仕方ないじゃない……貴方が私を捨てようとするから!』

『僕は距離を置こうと言っているんだ! 今は互いに別の道を進むべきなんだよ』

男は女の肩に手を置く。しかし女はその手を振りほどき、叫んだ。

『嫌! 私、メッシーと別れたくない!』

『サラ!』

再び走り出した女を、男はなお未練がましく、追いかけていった。


そんなことより唐揚げは旨い。

「道尾、何観てるの?」

隣の席で南蛮弁当を食べていた友人が、俺のスマホを横から覗き込む。

「ラブストーリーと見せかけた、B級クソ映画。この後延々1時間、今のやり取りが繰り返される」

「面白そうだね。猫は出てくるの?」

「出ねぇよ」


彼らは知らなかった。

陸上部のジャージを着て、南蛮漬け弁当と唐揚げ弁当を食べていたばかりに、見ず知らずの人物から恨みを買うとは……。

「アイツらか……僕の弁当を盗ったのは!」


2018/12/06

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