美術部の日常「石像」

友人と学校から帰る途中、道端に人間の石像が立っているのに気づいた。いつもは通らない道なので、知らなかったのだ。

「立派な石像だなぁ。町の偉いさんとか?」

友人に尋ねてみたものの「俺もよく知らん」と興味がない様子だった。

石像は男とも女とも言えない顔立ちと背丈で、見た目では人物の特定は出来そうもない。

ふと、石像の足元に置かれた石版に目を落とした。

そこには「早見」と名前が彫られていた。その2文字を目にした途端、憧れのあの人が思い浮かんだ。

「まさか……早見沙◯の石像ッ?!」

そういえば何処となく、似ているような気がする。

僕は憧れの人(の石像)を前にし震えながらも、思わず手を伸ばした。

「早まるな!」

だが触れる寸前、先程まで興味なさげにしていた友人が僕を羽交い締めにした。

「は、離してよ! こんなチャンス、滅多にないんだぞ!」

「何言ってんだ! 足元に彫ってある名前をよく見ろ!」

友人に言われ、もう一度石像の足元にある石版に目を凝らす。

「早見……表?」

すると『早見』の文字の隣に、『表』と続いていることに気づいた。

「誰?」

「だから、知らん」


後日調べたところ、前の町長の石像だと判明した。

……何であんな道端にあったのかは、分からなかった。


2018/12/08

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る