「弁当の恨み」

昼食を買いに、購買に来た。今日も多くの生徒達で賑わっている。

中には人気の焼きそばパンを手に入れるため、取り合いになっている者もいた。

愚かなヤツらだ。僕のようにキチンと列に並んでいれば、買い損なうことなんてないのに。

「いらっしゃい。何にする?」

しばらくして僕の番が来た。購買のおばちゃんが朗らかに笑いかけてくる。

トレーには唐揚げ弁当とチキン南蛮弁当の2つが残っていた。どちらも僕の好物だ。

「さて、どちらにしようか……」

これは究極の選択だ。慎重に考えないと。

「唐揚げ弁当いっただきー!」

だが直後、一方の弁当が目の前から消えた。

1人の男子生徒がトレーの横から手を伸ばし、奪っていったのだ。

「ちょ、勝手に決めんな!」

続けて彼のツレらしい男子生徒がチキン南蛮弁当をさらっていく。

「おばちゃん、はいお金。アイツの分も含めて」

「はい、毎度」

しかもツレの男子がちゃんと購買のおばちゃんにお金を払い、去っていった。これでは文句のつけようがない。

「ごめんねぇ、売り切れちゃって。向こうに菓子パンがあるから、そっちで買ってくれるかい?」

おばちゃんは申し訳なさそうに人混みを指差す。

冗談じゃない。先に弁当に目をつけてたのは、僕なのに。

「……いいです。外で買うんで」

僕は購買に背を向け、近所のコンビニに走った。


その日、僕は彼らへの復讐を誓った。

彼らの名前は知らない。学年も、クラスも。

だが、ヤツらのジャージは見覚えがあった。

「陸上部、許すまじ」


2018/12/03③

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