第6話「集う人々」

「ファーの身体は元気だろうか…」

「ドーラ…」

「なんつってな…元気って言っても、ファーの身体は眠ったままだ」

 月の御子であるティナは寂しそうに笑うドーラを辛そうに見つめた。

 ドーラとティナはミーナたちのいる森の近くに来ていた。

 美麗の傀儡師ベルタムナスによって虐殺されてしまった村人たちの生き残りであるマチアスを魔法の塔へと預けたのはごく最近のこと。

 風神によって壊滅されかかっていた魔法の塔も、ようやく立ち直りを見せており、ドーラも安心してマチアスを預けることができた。

 そして、とりあえずはシモラーシャと合流しようとドーラは思った。その時に彼はティナに言ったのだった。

「シモラーシャと一緒にいたジュークという男は不思議なヤツでね。もしかしたら、ファーを甦らせる何かを知っているかもしれない」

「ジューク…ですか」

「そういや、ジュークもティナみたいな銀色の髪だったなあ。瞳も似たような色合いだったし…」

 ドーラはしげしげとティナの顔を見つめながら首をかしげた。

 ミーナはそんなふうに彼に見つめられて顔を赤くしている。

「なんだか雰囲気も似てるようだなあ…まるで親子か兄妹みたいだ…」

「そ、そんなに似ているのですか…」

 テイナはどぎまぎしてしまった。

 すると、ドーラが思い出したように言った。

「そうだ。思い出した。シモラーシャにあとで聞いたんだが、ジュークは光神の使いでこの地にやってきた光輝神官だって言ってたな」

「え?」

「だとすると、ティナたちの仲間ってことになるよな…いや、違うか。神官っていっても神というわけじゃないもんな」

(なんですって…おじいさまの光輝神官ですって?)

 テイナは驚いて言葉を失ってしまった。

 光輝神官──話には聞いたことがある。

 神の腹心とも言うべき存在で、互いに信頼しあわねばその存在にはなれないという。いわば、邪神の闇の神官と似たようなものとも言える。

 だが、闇の神官と大きく違う点があった。

 それは神以上の力を持つこと。

 神は不死ではない。気の遠くなるほど永い時を生きるし、統治する世界が消滅せぬ限りは生き続けるので不死と思われがちだが、神は死ぬこともある。切られれば傷つきもするし、止めを刺されれば死ぬ。それは人間と同じなのだ。

 しかし、光輝神官には死というものがない。どんなことをしても死ぬことはないのだ。

 そして、時たま、神以上の能力を持つこともあるとも言う。

「光輝神官…確か、ひとつの世界を滅ぼしたこともあると聞いたわ。おじいさまの光輝神官だったということよ」

 ティナの言葉にドーラが絶句した。

 ティナも話に聞いただけであり、その詳細は知らない。

「驚いたな。あの男にそんな過去があったとは…とてもそんな大それたことをするような感じじゃなかったが…」

 と、ドーラがそこまで言った時。

 二人は森の中の開けた場所の湖のほとりで休んでいたのだが、近くの茂みから何かの気配を感じた。

 それはドーラだけでなくティナにも感じられたものだった。

 彼らは緊張しつつも、油断なく構えた。

 すると、ザザザッと茂みが二つに割れ、一人の女がまろび出てきた。

「お願いです。助けてください。どうか…どうか、クリフを助けて!」

 それは赤い髪の毛の女剣士リリスだった。


 ドーラとティナはリリスの願いにより茂みをかきわけその場所へやってきた。

「邪神に遭遇したのです。クリフとの会話でわかったのですが、それは氷神バイスと言いました」

 青い顔をして唇を震わせながらリリスは言う。

「氷神バイス!」

 ティナが叫ぶ。

「そのバイスとの対決で、クリフはまるで凍ったように動かなくなってしまいました。死んではいないようですが、目を覚まさなくなったのです」

 うっそうと生い茂る木々に隠された洞窟に彼らは近づく。

 その奥で彼は横たわっていた。

 それはあの大地の御子であるクリフであった。その瞬間、ティナの額の月の痣がパァッと輝いた。すると、横たわるクリフの額が同じように輝き、たちまち痣が浮かび上がってきた。丸に十字の模様が入った形をしている。

「なんとっ!」

 驚いたのはドーラだけではない。

 リリスが叫んだ。

「あなたはいったい…?」

 ティナは自分の額を押さえながらリリスに問う。

「この方は神の子ですね。私と同じ…」

「え…ではあなたも?」

「そうです。私はティナ。月の御子です。この方はクリフと言いましたね。恐らく大地の御子なのでしょう。母から聞いていました。母の姉であるスメイルの一人息子だと聞いてます」

「ええ、その通りです。クリフはスメイルと善神ナァイヴティーアスとの間に生まれました。ですが、本当はスメイルと闇神イーヴルとの間に生まれたというのが真相です」

「ええっ! なんですって、それは本当なのですか?」

 リリスの言葉にティナは驚いた。



 一方、カーリーが消えてしまった後、残されたサフランたちはただ湖の傍で立ちすくむしかなかった。

「カーリーさま!」

 だが、サフランは諦めきれずに湖に向かって叫び続ける。

 それを気の毒そうに見つめるオリオン。

 ドドスもまたどうすることもできずに彼女や湖やミーナを交互に見ているしかなかった。

 そんな中で、ミーナだけは微動だにせず、何やら待っている風でもあった。

 と、その彼女の表情が動いた。

「やっと来たか…」

 彼女がそう呟いた瞬間、傍らの茂みから勢いよく飛び出してきた人物があった。

「やあーーーーーーっとついた! 水、水っ水だー」

 それは金色の髪をなびかせ紫のマントをまとった女剣士シモラーシャ・デイビスだった。

 よほど喉でもかわいているらしく、ダダダーッとばかりに湖に駆け寄ると、美しい意匠の透明なグラスを水に突っ込んでくみ上げ、グビグビと飲みだした。

 それをあっけにとられて見つめているのが、オリオンとサフラン。ミーナは訝しげなまなざしでシモラーシャに視線を投げかけていた。

 だが、一人だけ信じられないといった驚愕の目で彼女を見つめている者がいた。ドドスだ。

(な、なぜ奴がこんなところに…)

 彼女にはいろいろ痛い目に遭わされているので、思わず反射的にこの場から逃げ出したい気持ちになっていた。

 すると、シモラーシャが出てきた茂みから人の気配がして、二人の男性が姿を現した。

 二人ともその場にミーナたちがいることは承知の上であるらしく、ミーナたちを見ても驚きはしなかった。しかも、二人のうちの一人、ジュークはニッコリと微笑んでミーナに声をかけた。

「お久しぶりです、ミーナ」

「ジューク、待っていたぞ」

 彼の言葉に頷きながら彼女はそう答えると、いまだゴクゴクと水を飲み続けているシモラーシャに再び視線をやってから、とんでもないことを言い出した。

「その女はなんだ。新しい恋人か」

 その言葉にジュークは黙って首を振っていたのだが、一心不乱に水を飲んでいたと思われていたシモラーシャが大声を上げてミーナを振り返った。

「そんなー恋人だなんてーーーー」

「違いますっ、ぜーったいに違います!」

 すると慌てて叫ぶもう一人の男性。

 そう、言わずと知れた吟遊詩人のマリーである。

 背中にかついだフィドルが落ちてしまいそうなほどの勢いだった。

 そんな二人を面白そうな表情で眺めつつ、ミーナは言った。

「まあ、どちらでも構わぬが。それに、ジュークが早々に死んだ恋人を忘れるとは思わぬしな」

「な、なんですってええええ! ジュークって恋人がいたのおおおお?」

 その声に驚いて飛び上がりそうになったのがオリオン。

 目を見張っただけなのがミーナ。

 うるさそうに耳をふさいだのがサフラン。

 ドドスはというと顔をしかめて睨みつけている。

 その視線に気がついたシモラーシャがギロリとドドスを睨み返す。

「…なんでこいつがここにいるか知らないけど…ちょっとお、ジュークってば恋人がいたんだ?」

「ええ、そうですよ、シモラーシャさん」

「それだけではないぞ。ジュークにはその恋人との間に子供もいる」

「ぬあんですってぇぇぇぇぇ!」

 シモラーシャは彼女の言葉で失神寸前だった。

 だが、それだけでは終わらなかった。

「ジュークの恋人は私の母の妹トレーシアだ。そして、二人の子供はティナという」

「そ、そんな…ジュークってば子持ちだったんだ…あああ、なんてこと…」

 シモラーシャは、その場にガックリと膝をついてしまった。

 すると、マリーは自分の出番だとばかりに彼女の傍に近づき、こう言った。

「シモラーシャには僕がいるじゃないですかあ。あーんな子持ち男なんかもう諦めて、さあ、僕とめくるめく愛を……」

「でもっ!」

「!」

 いきなりガバッと頭を上げて叫んだシモラーシャの頭が、マリーの顎を直撃した。

「ぐおっ!」

 シモラーシャは変な声を上げて固まってしまった彼にかまわず、うんうんと頷きながら、握り拳を作る。

「子供がいるからって関係ないわよ。聞けば恋人は亡くなったって言うじゃない。そんな傷心のジュークを慰めるのはあたしの使命だわ!」

「いやいや、シモラーシャ? ジュークさんの気持ちも考えましょうよお。そんな勝手に使命だなんだと。あなたには思いやりってもんはないの? そのお子さんの気持ちも考えないと…」

 やれやれといった感じでそう言うマリーの言葉にギロリと睨みを聞かせると、シモラーシャはさらに続ける。

「そうね、ジュークのお子さんに気に入られるよう頑張るわ」

「……」

 さすがのマリーもウンザリといった表情を見せ、黙り込んだ。



 と、その時、再び人の気配がした。一同の間に張りつめた空気が漂う。

 すると、茂みから出てきたのは、赤い髪の男と金色の髪で背中に鍋をしょった男だった。そう、赤い髪の男はカーリーではなく、海の男のクリジェスであり、鍋をしょった男はアンドリュシアンテクニスマレネス・ドードリアスカタヘルナ、通称ジュリーである。

「クリジェスったら、やっと追いついたのね…って、それ誰よ?」

 クリジェスの姿を確認したシモラーシャが、彼の傍らにいる金髪の男に気がついた。ところが、ジュリーの姿を見た彼女は「おや?」という顔をした。

「あらーいい男」

「む…」

 それを見たマリーが顔をしかめる。が、彼はジュリーの背負った鍋に興味を示した。

(あれは…)

 そんなマリーの思考にはおかまいなく、赤髪の男クリジェスはジュリーについての説明を始めた。その場の空気などまったく頓着していないようだ。

「それがさー、オレ、薬の材料を買出しに行ったじゃねえか。その買出しに行った街でいきなりこの男に絡まれて困ったんだ。オレのこと誰かと間違えてるらしくて、聞きゃしねーの。だから、シモラー、こいつに言ってやってよ、オレはそんな炎神ディーズなんかじゃねーって」

「炎神だって?」

 その場にいた者のほとんどが同じ反応を示した。

 ミーナはしげしげとクリジェスの顔を見つめ、オリオンは訳がわからぬといった顔を見せ、サフランは何も言わずにジュリーをじっと見つめていた。

 すると、そのサフランの視線に気づいたジュリー。

「おまえはサフランじゃないか?」

「………」

 びくっとした表情を見せるサフラン。

「どうした、カーリーはどこにいる。おまえたちはいつも一緒だったはず」

「ジュリーさま…」

 気の強そうな彼女の顔が今にも泣きそうな顔になる。

「あの者を見知っているのか?」

 傍らに立つミーナがサフランに聞く。サフランはこっくりとうなずく。

 すると、ミーナはすたすたとジュリーのそばにやってきて、

「お前は誰だ?」

 彼女はその清冽とした青い瞳でじっとジュリーを見つめて問うた。

 そんな彼女にジュリーは物怖じもせずに尊大に答える。

「俺か? 俺はアンドリュシアンテクニスマレネス・ドードリアスカタヘルナ、通称ジュリーだ。ジュリーって呼んでくれ、美しいお譲ちゃん」

「待てっ! ミーナに向かってそんなこと言ったら…」

 ジュリーの言葉にオリオンが慌てて叫んだ。が、しかし、遅かった。

「……誰のことをお譲ちゃんだと…?」

 ミーナは怒髪天を衝くを地で行くように髪を逆立てたのだ。

「ミーナ! ミーナ! やめてくれ。こんなところで感情を爆発させないでくれよ!」

 オリオンが慌ててミーナの身体を押さえた。

 そうでもしないと、ジュリーに向かって何をするかわからなかったからだ。

 だが、遅かった。

 逆上したミーナはその手から炎神にも勝るとも劣らない炎を繰り出したのだ、ジュリーに向けて。

 しかし、その炎がジュリーを焼き尽くすことはなかった。

 確かに、その場には光輝神官であるジュークもいたので、ミーナの理不尽な行いに待ったをかけることもできたのだが、その場の事態を収拾したのは当のジュリー本人だったのだ。

「おおっ!」

 その場の者たちの驚愕の声が上がる。

「お譲ちゃん、いけないねえ。いくら気に食わないことを言われたからって、逆上したら、それだけ自分がお子様だって証明しているようなものだよ。人々の上に立とうとするような立場の者がそんなことでどうする。もっとお譲ちゃんは帝王学を学ぶべきだ」

 ニッコリ優雅に微笑んだジュリーは、背中に背負っていた鍋を繰り出された炎の前に突き出していた。

 そう、ラスカルの創り出した神器である。

 これまでにもジュリーの命をその鍋は救ってきた。ついでに、おなかも満たしてくれる、優れもの。

 クリフに託されてから肌身離さず持ち歩いていたのだ。これを持っていれば、またクリフに会えるだろうと思いつつ。

「そ、それは…まさか…」

 鍋を見たミーナは信じられないといった顔を見せた。

 そして、何か言おうとしたその瞬間。

「それっ! それって…ねえ、あんた、それってもしかして地神ラスカルの創ったという神器じゃないの?」

 大声を上げて駆け寄ってきたシモラーシャ。鍋を物色し始めた。

 そんな彼女の姿を見たジュリーは「ひゅー」と口笛を吹く。むかっとした表情を見せたのはもちろんマリーだ。

「その通りだ、美しい剣士さん。君は名声高い剣士シモラーシャ・デイビスと見受けられるが」

「あら、あたしのこと知ってんの。嬉しいわ、ハンサムさん」

「これでも一国の王子なんでね。たいていのことは見知ってるのさ」

「ふーん。そうなんだ。って、それより。これってやっぱりラスカルの神器なのね。あたし、これ探してたのよ、長い間ずっと…」

「ちょっとちょっと、シモラー。オレの話聞いてくれよー」

「あー、はいはい、なんだったっけ…」

 シモラーシャはクリジェスの不満顔にやれやれといった顔を見せると、いったん鍋のことは置いておこうと思ったらしい。未練たらたらな視線をジュリーの鍋に向けてから言った。

「えーと、あんた…ジュリーって言ったっけ。クリジェスを炎神と思い込んでるみたいだけど、違うわよ」

「だが、この者の面相は炎神ディーズにそっくりなのだが。まるで本人のようだぞ。まあ、確かに言われてみれば、炎神がまとっていた尊大さとか高貴さというものはこの男からは感じられぬが」

「悪かったな!」

 ジュリーの言葉にベェーッと下を出すクリジェス。

 それを見たジュリーは首を傾げた。

「やはり違うのか…ふむ…考えてみれば、確実に俺の目の前で奴は死んでいったのだからな」

 ジュリーはその時のことを思い出し、身震いをした。

 そんな彼の呟きを聞き逃さなかったのはミーナだった。先ほど感情を爆発させたことは微塵にも感じさせぬ落ち着きをすでに取り戻している。

「ジュリーとやら、おまえは知っておるのか、炎神を殺した者を」

「知っている。俺は炎神が消されていくのをこの目でしかと見届けたからだ」

「!」

 人々は凍りついた。

 そして、その様子を湖の中で窺っていた者も驚いていた。

「なんと…ディーズを殺した者をこの者は知っているというのか…?」

 狂おしいまでの表情を見せて呟く水神フェイトを、そばでカーリーはなんとも言えない気持ちを抱いて見ていた。外で繰り広げられている出来事は水中に映し出され、彼にも見えていたからだ。見せてもらえていることに感謝しつつ、彼は別のことも考えていた。

 我が友ジュリーがここにやって来たことを一番驚いていたのはカーリーに他ならないだろう。その彼が、炎神が倒されたのを目撃したという。恐らく、自分とサフランが国を旅立ったあとの出来事なのだろう。日頃から、国外を旅したいと言っていたジュリーであるから、自分がいなくなってから国外に旅行と称して出て行ったに違いない。

(まったく…ジュリーって奴は…ベン王子の心痛が思いやられる)

 そして、このフェイトという神もまた…。

「オレ、思うんだが、あなたもあの場所に行き、彼の話を聞くべきなんじゃないか?」

「なんだと?」

 カーリーの言葉にフェイトは不審な顔をする。

「彼が、あの金髪で鍋をしょった男が俺を許してくれ、友となってくれた男なんだ。彼の話を聞けば、炎神の最期を聞くことができると思う」

「………」

 フェイトはカーリーの顔をじっと見つめていたが、しばらくして一言呟くように言った。

「…そうだな…」

 次の瞬間、カーリーは皆の前に立っていた。水神フェイトと共に。

 あっという間の出来事だった。

 その場にいたすべての者が固まって動けなかった。あまりの出来事に。

 だが、それを最初に破ったのはサフランだった。

「カーリーさまぁぁぁ!」

 彼女はカーリーのもとに走り寄り、彼に抱きついた。

 それが合図となって、皆がそれぞれに動き出す。

 ミーナを庇うように身構えるオリオン、誰だかわからないがとりあえず敵のようだと判断して剣に手をかけるシモラーシャ、マリーは黙ったままシモラーシャの後ろにつき、いつでも彼女を守れるように身構えた。ジュリーはいきなり現れたカーリーに何が起きたのかわからないままきょとんとし、クリジェスは慌ててシモラーシャの後ろに隠れるように逃げる。そんな彼らの後ろを、ジュークは一人無表情に見つめているだけだった。

「この者を解放する。その代わりに我にも聞かせてくれ、ディーズの最期を。いったい誰に殺されたのか、我はそれを知りたいのだ」

 静かに有無を言わさぬ声色でフェイトは言った。

 フェイトは金色の巻き毛をキラキラ輝かせるジュリーをひたと見据えている。

「それに、そのラスカルの神器のことも聞きたい」

「ラスカルの神器…」

 フェイトの言葉にジュリーは少し首を傾げた。

「確かにこれは地神ラスカルが創り出したものだが、大地の神器と言われ、炎の神器と対を成すものだと聞いたが…」

「違うよ! それは確かに神器だけど、ラスカルがかわいそうな魔族の兄弟のために創ったものだって聞いたよ!」

 そう叫ぶシモラーシャ。

「何だって?」

 それに驚くジュリー。

 だがしかし、彼は炎の神器と大地の神器が奇跡を起こすところを目撃したのだ。

 封印されていた炎神を目覚めさせることとなった奇跡を。

 ジュリーの言葉にフェイトは静かに答える。

「炎の神器、大地の神器か…そのどちらもラスカルが創り出した物だ。ただ、炎の神器はラスカルとディーズが一緒に創ったものだから、確かに奇跡は起きたかもしれない。しかし、その者の言うとおり、その鍋の形をした神器は魔族のために創ったものだ。料理もでき、奇跡も起こし、誰をも守る、それがラスカルの究極の神器であることは間違いない」



          2011年1月23日記

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