ステージ17 トライフィールド
伊佐家三世代、玖子を除く六人が目を覚ますとそこはなぜか家の中だった。家の外で来客を見送りに出たはずなのに、なぜかまた家の中に戻っていた。
「あー…………」
眠っていたと言う自覚すらおぼろげな一同の中で、真っ先に異変に気が付いたのは総司だった。自分たちが目にしている景色は、まったくと言っていいほど変わらない。いつも通りの実家、と言ってもこの十年間で二度しか帰っていない実家でありいい思い出のない場所だが、それでもこの辺りの風景はよく覚えている。青い空、灰色のブロック塀に、アスファルトの十字路。築三十年だから、生まれてすぐこの家に入り十八年間眺めて来た風景。ただひとつ違った事があるとすれば、空が少し灰色がかっていたことぐらいだ。
「天気でも悪いのか」
この家に新次郎に対する憎しみを抱え込んだ母を説得しに行くべく、大事な日曜日を割いて兄夫婦共々当たって来たのだ。だが半日近くかけておきながら成果はまるでなく、かわいいはずの孫娘から認知症呼ばわりされてなおそれならそれでいいとばかりに創作実話、イマジナリーフレンドならぬイマジナリーブラザー呼ばわりした。裏切るという事で言えば、家出同然で家を飛び出した自分の方がよほど裏切っているはずだ。それなのに、自分のように親不孝者呼ばわりすることさえしない。いなかった事扱いを貫き続けている。
(まるで俺たちの気分のような空だ!)
青空と言えば青空だが、どうにも重苦しくすっきりしない。空々しい振る舞いを続ける玖子、玖子と言う名の空気に殴りかかり続けている自分たちを見下ろしているような感じの空。もういっそ義姉のようにおべんちゃらでも兄をなじり続けていた方がいいのかもしれない。
「それにしてもいやに静かだな」
「ああ」
総司はいつのまにか隣にいた長兄の雄太に話しかける。その通り、やけに静かだ。日曜日の昼下がりの住宅地、確かにそれほど声の大きい時間帯でもないが車の音さえもしないのは確かにおかしい。やがて甥姪や義姉、父親も目を覚まし状況を怪しみ始める。
ただ一人、自分たちをここまでさせている玖子だけはものすごく安らかそうな寝息を立てていた。そして顔は緩み、口もよだれを出しそうな程になっている。一体どんな夢を見ているのだろうか。大方新次郎がらみだろう。父親と同じ天命食品か、中央省庁か、さもなくとも新次郎が現実に入ったIT企業かの勤め人として粛々と才能を発揮している新次郎が孫と妻を連れて来てにこやかな笑顔をしている夢。それが夢であるからこそ、現実とのギャップの大きさが彼女を苦しめる。もうそんな者はいない、伊佐新次郎と言う人間はもう死んだ。その事を認めさせ、少しでも彼をいつくしむ気持ちを持ってもらいたい。それなのにまるで効果はない。あるいはそんな夢を毎晩見ては現実と言う悪夢に打ちのめされますます憎しみを深めているのだろうか、だとしたら本人以外全部不幸ではないか。
「ん……!?」
総司が玖子に対してそんな八つ当たりにも似た怒りを抱きながら窓の外を眺めていると、別の人間の姿が見えた。両手を組みながらじっと目をつむるその姿、青く長い髪をして赤紫色のスーツを身にまとっている人間。まったく車に轢かれる心配などないかのように、車道のど真ん中に立っている彼は長い髪を振り上げると、優男の顔を総司たちに見せた――――鋭い牙が生えている事を除けば。
「あんた……!!」
髪の毛を短くして黒く染めスーツを紺色に染め牙をなくしたら、先ほどまで家の中にいたはずの来訪者と何も変わらない。不破求と言うホスト、高校生の父親には見えにくいほど若々しい男。
「…………」
「おい!」
「終わりましたよ」
その自称四十二歳の男の面相は、決して牙により台無しになっていない。まるで、あるべき物がそこに戻って来ただけ。能ある鷹は爪を隠すでもあるまいが、その鋭い牙は優男にしか見えない中年男性の本性を、どこまで表していたのだろうか。男は皆魔物とか狼とか古めかしい事を言う気もないが、その牙が人ならぬ物の持ち物である事は総司にもわかる。終わりましたよと言う、何らかの作業をしていたことがまるわかりの言葉を放ちながら求は笑った。
「誰だよあんたは!」
「インキュバス……と言う名前がこの世界で通っているとは思いませんが」
「何ぃ!?」
「おやおや……ご存知頂けていたとは有り難い事です。そう、魔物のインキュバスです」
「何の話?あの人なんで声も出さないのに話が通じてるの?」
インキュバスは右手をあごに当て左手の手のひらを伊佐家に向けながら、自ら名乗りを上げた。インキュバスと言う存在が、女性の精気を吸い上げる淫魔であるという知識は総司にも雄太にもある。そんな存在を子どもたちに父や叔父として認識させるわけには行かないと思っていたが、どうやら祐樹にも由紀にも話は伝わっていないらしい。
「ノイズキャンセラーでも使ってるのかよ」
「まあ似たような物です。さすが、わが主が見込んだ通りの人間ですね」
「主って誰だよ!」
「今作業中ですので、しばらく」
「まさかあの高校生じゃ!」
「ええ」
「その父親として、主である高校生はどうなのか。改めて聞きたい」
あの高校生、不破龍二がこの魔物の主人だと言うのか。だとすれば自分は半月近くそんな恐ろしい存在を受け持って来た訳か、雄太は混乱する頭を必死に動かしながら必死に教師たろうとしていた。
「ああ、父親としてあなたの話は幾度か聞きましたよ。公正無私で優秀な教師であると、でも時にかつて自分たちぐらいの年齢の時の流行に疎い事があると……」
「しょうがねえだろ、俺だって今時の高校生の流行ってのはわからねえ」
「いやいや、あなたが高校生だった頃のおはなしですよ。何でもあなたぐらいの年頃の男性の多くは料理人に憧れていたと言いますが、あなたはまったくダメだったと言う話で」
「………………」
高校時代雄太のあだ名はナノジーであり、中学校時代の新次郎のあだ名は皿なし男であり、小学校時代の総司のあだ名はフニューだった。玖子がディッシュマンズを夫の会社を脅かす存在として極度に嫌っている事が校内に知れてから、雄太は「大人の事情」を乱暴に略してナノジー、新次郎はディッシュ=皿から皿なし男、総司は男子厨房に入らずを連呼するディッシュマンズの悪役女性キャラをもじってフニューと呼ばれるようになった。哀れみと同時に軽蔑の意が込められている事は言うまでもなく、三人ともかなり鬱屈とした気分で過ごす事を余儀なくされた。玖子はその度に気にするなと言い続けて来たが、その事もまた玖子自身と他の母親たちとの壁を作り上げた。その結果、ディッシュマンズの知識を全く持たないままに成人してしまった雄太も総司も、今仕事に差し支えが生じている。雄太はまだ同期や生徒との話が合わないだけで済んでいるが、此度ディッシュマンズのミュージカルをやる事になった総司は台本とか演技とかとは別に原作を読まねばならなくなっている。
「まあ、それはそれとして」
「それはそれとして何だよ!」
「この世界の人口をお知らせいたしましょうか?」
「何人だって言うんだ!」
「七人です」
七人。まさか、自分たちだけだと言うのか!それならば奇妙なほど静かなのも筋が通るが、それ以上になぜそんな事になってしまったのか、たった六人だけでこれからどうやって生きろと言うのか!
「嘘吐け、テレビは付くぞ!ここにいる七人だけで発電所が動くか!」
「…………そうだ、つまらないギャグはやめろ!」
「いえいえ、この世界にはあなた方七人しか人間はいません。電気が動いているのは、あくまでこの世界が、あなた方から見て異世界であって異世界でないからです」
異世界であって異世界でない。後ろのテレビからはクイズ番組の音声が聞こえ、発電所が生きている事を遠慮なく証明している。冷蔵庫の中のブラックコーヒーも冷えていた。
「この世界を、わが主はトライフィールドと言っております」
「どういう意味だよ」
「われらが故郷でも地球でもない第三の世界…………とでも言う所でしょうか」
「なぜわざわざこんな所に連れて来たんだよ!」
第三の世界。魔物と言う物が実際に存在する以上第二の世界があるのはもう理解せざるを得ない。しかし、その第二の世界ではなくなぜこんな世界にわざわざ連れ込んだのか。
「被害は少ない方がよろしいので」
「俺たちに恨みでもあるのか」
「全然ありませんよ」
「じゃあなおさら意味が分からんぞ!」
総司が俳優らしく怒りの表情を露わにして吠えかかるが、インキュバスは笑顔をまるで崩そうとしない。見下していると言うには気品がありすぎ、侮っていると言うには目が笑っていない。かと言って賓客扱いするには、殺気がありすぎる。
「全てはわが主から説明いたしましょう。どうぞ」
「フフフッ…………」
インキュバスとは違う、若い男性の笑い声。インキュバスのそれが先ほどと変わらない良い意味で平板なそれだとすれば、今度は普段より上乗せされた声。そう、普段よりも。七人の内一人は、その声をよく知っていた。
「お前、龍二か!」
「先生」
「この世界は一体何なんだ、まさかお前が作ったとでも言うのか!」
「いいえ、先生たちを連れて来ただけです」
「じゃあどうしてこんな世界があるんだ、説明してくれ!」
紛れもない、不破龍二の声だった。しかし姿はまるで見えず、それでいてインキュバスの真後ろから声を出しているように思える。その上に自信に満ち溢れ、決して媚びず驕らずと言うインキュバスと似たような声。
「バタフライエフェクトと言う言葉がありますよね?ニューヨークとか言う町での一頭の蝶の羽ばたきがこの国に竜巻をもたらすように、ほんの少しの影響でものちには大きな影響を与える可能性があると言う事ですよね」
「聞いた事がないな」
「あるいはタイムパラドックスの方がよろしいですかね?」
「タイムパラドックスって何だよ!」
「タイムマシンとやらを作り、過去に行って誰かを殺したらどうなります?その殺した人間の子どもはすべていなくなった事になります。そしてその子どもたちによりもたらされた影響もなくなり、あるいはタイムマシンとやらも消えてしまう可能性があります」
「結局のところ、どんな影響が起きてこんな世界が生まれたと言うんだね!」
「この世界は、伊佐新次郎と言う人間が死んでいない世界です」
ここまで息子二人に任せていた泰次郎が重く太い声を出し、目の前の異形二人に言葉をぶつけた。今さら人生の未練などほとんどないが、他者を巻き込むような真似は絶対是とできない。だからこそ、全てが解決するのであれば最悪自分の命を差し出しても構わない。そこまで思いながら、魔王を名乗る存在に最大級の怒気をぶつけてみた。だが声の主はまったく冷静だった。その事を把握したこと自体実は昨晩インキュバスから言い聞かされたからに過ぎないのだが、それをまるで感じさせない程度に彼の言葉は揺らぎがなかった。伊佐新次郎と言う人間が生きている――。七十億分の一がいなくなっていないだけでこうも変わってしまうのか。見た目こそまったく変わらないが、あまりにも荒涼とした薄気味悪い静寂ばかりが覆う世界。機械類は動くが、生き物の姿はない世界。
「たった一人の人間が死を選ばなかった事により、世界はこうなったのです」
「その結果、この世界には誰もいないって事なのかよ!」
「いえ、世界にはいろんな可能性があり、その可能性の数だけ世界は存在するのです。この世界の一年とちょっと前、ひとりの男性が自ら死を選びました。その結果、この世界は必要のない世界になったのです」
「まさかそれって」
「そう、伊佐新次郎です。まあ、そんな世界などごまんとありますからね。たまたまここにこうして存在しているだけで、この世界の人間の数だけあるのかもしれませんね」
必要のない世界。まるで伊佐新次郎一人の選択により運命が狂い、置き捨てられた世界。伊佐新次郎がそんなに大きなことをなしたと言うのか。雄太も総司も、驚くとか呆れるとか言う前に、ただ感心していた。
「そこに俺らを連れ込んで何のつもりだ」
「この世界の建物がいくら壊れようとも、元の世界には何の関係もありません」
「壊す気なのか」
「ええ、今から壊します」
「やめろ不破龍二!」
「先生は本当にお優しい。素晴らしい先生です」
「龍二、どこにいる!」
「忙しいのでしばらくお待ちください」
その言葉と共に声が止まり、それと同時に何かが落ちて来た。雨粒とは違う、何らかの黒い点。遠い方向から何かが落ちて来る、視力1.0以上の人間が一人もいない伊佐家の人間には点にしか見えない何かでしかなかった。時折刺激的な音がするが、それとて耳を澄ませなければ聞こえない。この静寂の世界でさえ聞こえないほど遠くの、音。
「100%は無理でしたか」
「だが大半が雑魚だ、いじめっ子とやらから取った」
「それは問題ないでしょう」
続いてうっかり聞こえてしまっているのか、あえて聞かせているのかわからないインキュバスと声の主の会話。いじめっ子とやらから、何を取ったと言うのか?それが雑魚だと言うのは、どういう事なのか。わからないという恐怖に包まれながら男たちはじっとインキュバスの方を睨み付け、久美は子どもたちを抱えながらうずくまった。
やがて、わずかな静寂が途切れると共に伊佐家の人間の前に一つの影が落ちて来た。
「これが、本当の僕ですよ」
「何っ……!」
インキュバスの隣に立った男子。服こそほんの先ほどまで見ていた不破龍二と変わらないが、その頭には二本の角、背中から蝙蝠のような羽を生やし、肌は青く手の爪は伸びている。そして牙は鋭く輝いている。
「何だお前は、化け物か!」
「魔物と言って欲しいな」
「龍二!」
「伊佐先生、半月の間申し訳ありませんでした。これが本当の僕の姿です。不破龍二と言うのも偽名であり、本当の名前はアフシールJr.です」
アフシールJr.と言う名前を名乗った、その魔物を自称する異形の生物。だが肌の色と牙が生えたと言う変化はあるが、あとはほぼそのままの顔。美少年と言う肩書が通りそうな、そのままだった。不思議なほど恐怖感はなく、むしろ堂々とした器の大きさを感じさせるそれを聞きながら、雄太は背筋を正しつつ口を動かした。
「今までなぜ高校生の姿をしていたんだ?」
「人間のふりをしようとしたらこうなっただけです、深い意味はありません」
「あなた、冷静すぎよ!」
「他に何のしようがある?」
久美は台所から持ち出した包丁を持ちながら、ブルブル震えている。窓ガラス越しとは言え、異形の存在が怖くて仕方がない。二人の好奇心旺盛な子どもたちを左手で制しながら、アフシールJr.と名乗る存在を睨み付けている。その妻を横目にしながら、雄太は教師として生徒である「不破龍二」と話していた。
「最近、死刑執行が増えたと思いませんか?」
「そう言えば……」
「っておいまさかお前がやったっつーのかよ!」
「僕ではありません、僕の家臣です。まあ命じたのは僕ですがね。死刑囚とやらは、日本と言う国が定めた法律により殺してもよいと判断した人間なのでしょう?それを殺させる事の何が悪いのです?」
「ふざけるなよ、俺らも同じ原理で殺させる気か!」
「あなた方を殺す理由はありません、使えませんから」
「使えない?」
「魔物たちには、人間の基準でいう所の汚い魂が必要なんです。汚ければ汚いほど魔物は強くなります。あなた方など殺しても先生の子どもさん達でも倒せる程度のそれにしかなりませんから」
「じゃあ死刑囚を殺させたのは!」
「ええ、死刑囚とやらはこの国で最悪の存在でしょう?少なくとも二名の罪なき人間を殺めるような。そんな人間の魂こそ、強き魔物を作る礎なのです」
そして暴力団の同士討ちによる大量殺戮、夫婦同士のDVを通り越した殺し合いについてもアフシールJr.は得意げに語った。人間同士の殺し合いを誘発する非道な行いを是とする、まさに魔王のやり方に泰次郎も久美も総司も怒りを覚えたがどうにかできる物ではない。
「そういうのは選民思想と言うんじゃないか?」
「選民思想ですか……魔物だって人間だってどうしてもダメな物は生まれます。我々は犯罪者と言う最大の税金を人間からもらう事により、治安を保証してやるのが役目です。人間が死に絶えよう物なら我々だって魂がもらえなくなり、あとは自滅しかないですからね」
「それでは人間は魔物の家畜同然ではないか」
「畜産農家だって、家畜を大事にせねば滅びます。家畜はそれにより生を受け種として安全に数を増やせている。ああ、その事が分かっていない人間も少し殺しておきました」
かろうじて雄太だけは、教師として反論する。だがアフシールJr.はまったく揺らぐ事はない。社畜社畜と言うが、その社畜たちが一斉に倒れよう物ならばそれこそ会社は終わる。倒れさせないために何とかするのは飼い主の役目だろう。それを怠るような存在をアフシールJr.は何人か殺していた。
「危険だ!そうやって一罰百戒をやろうとしているのかもしれないが、それはただの選民思想であり恐怖政治だ!」
「僕は地球などと言う世界の事などどうでも良いのです。少しばかり最低クラスの人間の魂をいただければ、これ以上とどまる理由もありません」
「そんな事を教えたつもりはない!」
「僕の師は父です、父の教育の結果です。もちろん先生の事も尊敬していますよ、人間の師としてはですがね」
「お前さっき、アフシールJr.とか言ってたな。するってーとお前の父親の名前はアフシールか?」
「いかにも。そしてこんな事ができる存在、できる魔物を何と言うと思います?」
「魔王だっつーのか」
「ええ」
弄ぶような口調、自然なほど上からの物言いなのになんとなく仕方がないと思わせてしまうカリスマ性。その上に、あれほどの大量殺人を誘発させたという力もまたその物言いに説得力を与える。物的証拠はないにせよ、他の誰もそんな事はできないだろう。そう考えれば、魔王と言う言葉も合点が行く。
「母さんを眠らせたのも」
「ああ、その通り。彼女には相当に刺激が強いからね。僕らは決して、ターゲット以外に乱暴な真似をする趣味を持たないから」
「ターゲットだけ狙えばいいだろ!」
「手を出したり乱暴したりはしませんが、少しは責任を取ってもらわないとね。関係者として」
総司がまさかと思うとほぼ同時に、魔王の空いていた左手から一個の塊が投げ付けられた。その塊は避ける間もなく伊佐家を覆い、そしてアフシールJr.とインキュバスの姿を覆い隠し、代わりにはるか遠くの風景を見せた。
「なっ……!」
そこは、東京。紛れもない、この国の中心部。その無人の東京に、先ほどまで目の前にいたインキュバスとアフシールJr.が我が物顔に立ち、空から何かを迎えている。先ほどまでほんの小さな点にしか見えなかったそれが、はっきりと見えた。
「おい!」
六人の視界に、女の顔をして羽のような手を持った生き物が入った。背丈こそ人間大だが、胸をまる出しにし、鷲のような足と羽根を下半身に蓄えている生き物。明らかに人間とは別物のそれ。
「ハーピーって奴か!?」
「よく知っている……でもまあ、気にする事はない。彼らの敵はあなた方じゃないから」
「だから誰……!」
アフシールJr.が声だけを飛ばしながらハーピーたち魔物を東京に迎える中、突如ハーピーの頭に剣が刺さった。ハーピーは頭から血を出しながら墜落して行く。そのハーピーを殺した下手人の姿に、泰次郎の目は大きく開かれた。
「北本……菊枝……!!」
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