有効活用

ツヨシ

第1話

「いらっしゃいませ」


客が来た。


一人。


女だ。


女を見て私は驚いた。


忘れもしない小学生のときに、私に酷いいじめをしていたグループのリーダーだったからだ。


二十一、いやニ十ニ年ぶりにもなるか。


ずいぶん久しぶりに会った。


二十年以上の年月は、さすがにその風貌を大きく変えたが、私には彼女だということがすぐにわかった。


なにせ今目の前にいるのは、私の心の奥底に深く大きく今なお癒されることのない生々しい傷を残した張本人なのだから。


彼女は私には気付いていないようだ。


それは当然のことだろう。


いじめた者といじめられた者とでは、その印象や記憶と言ったものが、天と地ほどの差があるものなのだから。


女は私に指示をし、私はそれに応えた。


いつも以上に細かく丁寧に、女の髪を整えた。


深く大きく愛しむように。


「あら、うまいじゃない。いい腕ね、あなた。またここに来ようかしら」


「恐れ入ります。どうぞまたご来店くださいね」


「考えとくわ。じゃあね」


「ありがとうございました」


女が帰った後、私は彼女の髪を一本も残すことなく、集めた。


そして笑った。


――これだけあったら、いったいどれだけのわら人形が作れることか……。



        終

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有効活用 ツヨシ @kunkunkonkon

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