第12話 戒めの制約

【警告:スキル名⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の詳細を明かした時点で、相手に『審判の天秤(アルカナ)』を付与する】


(審判の天秤⋯?)


【審判の天秤:制約スキルの一つ。相手を戒め状態にし、条件により天秤が傾く】


 その警告が頭に流れ終わると、すぐに鈍痛は治った。


「ノア君⋯? 大丈夫か?」


「え⋯えぇ、ただ⋯今から説明する言葉を聞いてしまうと審判の天秤という制約スキルが強制付与されるみたいです⋯」


「ふむ。それほどまでに機密的なものなのだろうな。まぁ、構わないから教えてくれ」


「えっと聞いてました? 戒め状態に入るんですよ?」


「聞くだけならば問題ないだろう。戒めとは『禁を犯したり、失敗することのないように前もって注意を与えること』だからな。想像する所、他言無用とかいくつか考えられるが、私達の間には関係ないものだとおもうぞ」


「分かりました」


 死ぬ間際の時間静止と静止状態に黒影モードと剣王モードに入る事を説明する。


「成る程⋯⋯納得がいった。確かにそれだと能力やステータスは全て無意味になるな⋯。更には死角からのカウンター攻撃か⋯」


「はい。あの、それで⋯戒めの方は大丈夫なんですか?」


「あぁ、頭に流れ込んできたぞ」


「やっぱり他言無用とかでしたか?」


「いや⋯違う。まぁ、それはあとで話すとして右手を借りていいか? あと心臓と言ってくれ」


「?? えっと、心臓ですか?」

 右手を差し出すと、そのまま手首で持ち自分の胸に押し当てた。


「なっ!!」

 柔らかい感触が脳髄に響いた時には、時間が静止する。

「わぁぁ!」

 咄嗟に手を離す。


 その時には既に自分の姿が黒影状態になっており、身体を這っている赤いラインが蛇の様に静止している花蓮先輩の胸に入っていった後であり、すぐに静止状態が解除される。


「ふむ? 今のが時の静止というやつか? 胸に当てたと思ったが次の瞬間には両手をあげて喜んでいるとは⋯」


「ビックリした反応であって喜んでないです。て⋯まさか今のって⋯」


「戒めの制約だ。捧げる部位の選択を指定されたから心臓と言っただけだから安心するがいい」


「ちょ! おーーーい!! なーに気軽に心臓って言ってるんですか!! 安心なんて無理でしょ! もしもの場合どうするんですか!!」


「そうは言っても、私達なら問題ないとだけ言っておくよ」


「信じていいんですね?」


「あぁ、内容は他言できないが天秤と言えば分かるだろう? 捧げるものに対して返ってくるものもあるとだけは言っておくよ」


「分かりました⋯。ただ、俺が何かしなければいけない事があったらなんでも言ってくださいね」


「⋯⋯⋯⋯ふむ。なら、こんな事を頼むのは恥ずかしいのだが、胸を弄ってもらったり◯◯◯してもらっていいだろうか? 捧げた部位を触ってもらわないと疼くのだ」


「⋯⋯最初の間が物凄い気になるんですが⋯⋯本当なんですか?」


「ロンのモチだ」


(あ、だめだ。この純粋な目をしてるように見えるけど獲物をロックしてるパターンだ。気軽に信頼するとは言っちゃだめだな⋯)


 どうやって断ろうかと思っていたら、双子が俺の腕を片方ずつ持ち服の間にスルリと入れて直接胸に当てた。


「あっ!!」


「ちょっ!」

 引き離そうとするが、双子の顔は真っ赤になっており恥じらいを表すかのように心臓が速く鼓動しているのが分かる。


 再び静止状態になり、先程と同じように双子の心臓に入っていく。


「あっ!! ノア君は私の胸で満足しているのだから上書きするんじゃない!」


『やだ! お兄ちゃん私達のだよ!!』


「いや、俺は誰のものでもないんだが⋯⋯。ん? あれ? 双子の声が分かる」


『ほんとに!! わーい!』


「な⋯ん⋯だと⋯。この世界でノア君の翻訳者として片時も離れる事がないようにする計画が⋯⋯。あわよくば⋯自分の都合がいいように訳せないではないじゃないか!」


(最低だ⋯)

「そういえば二人の名前教えてもらっていいか? 俺の名前は守乃白鴉だ。改めてよろしく」


「サラです。お兄ちゃん助けてくれてありがとうございました」

「ティヤです。お兄ちゃん助けてくれてありがとうございました」


「で、改めて聞くが胸が疼いたりするのか?」


『ううん。お兄ちゃんといると胸がキュ〜となるけど疼いたりとかは無いよ?」


「ははは、バレてしまってはしょうがないな。守乃花蓮だ。よろしく頼む」


「いやいやいや、先輩、名字を間違っていますよ。花蓮先輩は河合でしょう」

 いやだいやだと腕に絡みついてくる。


『名字?』


「名字は家柄や家族で共通する名前だよ」


『へぇ〜なら、私達は守乃サラと守乃ティヤだね』


「ん〜まぁ、持っていないなら呼ぶのはいいと思うが⋯⋯親に聞いた方がいいんじゃないかな?」


『問題無いと思う〜。私達が成長したのはお兄ちゃんのお陰だもん』


「待て待て、私がダメで二人はオッケーなのはおかしいだろう? まさかロ◯コンなのか⋯君は⋯まさか! 反応して⋯⋯」


「違いますので、下を触ろうとするのやめてもらえます? それに、本当に最初出会った時は3頭身程度の子供でしたんですから」


『うん。私達エルフの成長期は心から好きになった人ができてたからなの。それまでは幼生期のまんまだよ』


「おい! 君達は何をサラリと告白をしているんだ」


『そもそも、お兄ちゃんとお姉ちゃんは仲のいい家族なんでしょ? 絵で描いてくれたもん。手を繋いでる私達と同じ絵。だからお姉ちゃんがやっていた事は全て私達がしてあげるの』


「描いたのか?」


「えぇっと⋯⋯説明できなかったので⋯」


「そうか⋯まぁいい。よく聞け! そこの双子よ! 私達の世界では男一人に対してメスは一人ではないと駄目なのだ! ノア君には私さえいれば問題ない!」


「え〜!! 強引すぎる! 俺の意思は含まれていませんよね?!」


『何言ってるのお姉ちゃん? 前の世界とこの世界は違うよ? 弱い者はすぐに食べられちゃうし強い者は子孫繁栄の為に沢山の女性と交わるものなんだよ?』


「ぬぐ⋯理解しているのか⋯⋯だが、そんなボディではノア君は満足しないぞ!」


(いや⋯⋯満足しないっていうか⋯それ以前の問題というか⋯)


『まだ私達は幼生期を越えたところだもん。これからはお兄ちゃんが望むままに成長していけるんだよ? それにお姉ちゃんの胸に触っている割にお兄ちゃん反応してないもん。さっきはあんなに反応してたのに』


「ちょ! まっ! それは言わないでくれ!」


「反応⋯⋯まさか」

 無言の圧力が降り注ぐ。


「い⋯いえ、先ほど、女性エルフ達の魔法封印を解く為に、みんな上を脱いだだけで⋯⋯」


「なるほど、それで360度何処を見てもキャッホイ! こんな細く白い身体の隙間から見えるお尻や胸最高だぜみたいな感じで興奮した訳というのだな」


(なんで今の説明でそこまで明確に当てれるんだよ⋯)


「で、結局そのテントの張りはどれぐらぃ⋯⋯」

 こちらをチラチラと見ながら小声で話している。

「ふむふむ。その張り具合から見ると普通の男性平均を⋯⋯」


 3人は不気味な笑顔でニヨニヨと興奮していた。


 何を言おうとも逆効果なので結局何も言えず、3人の不気味な笑顔の視線を浴びるしかなかったのである。


 その後、先輩と双子はなぜか和解して協定を組んだかのようにかなり仲が良くなっていた。

 そして、双子の親にも話を聞くと娘達が幼生期を脱している事から、反対どころか公認状態だという説明もしっかりとされて『娘達をよろしく頼む』と念押しまでされたのである。


 このやり取りをしている時に、王国では俺たちが知る事もなく動きを見せていた。




「どう言う事じゃ!! 爆発すら起きないではないか!!」


「王様⋯⋯大変です! 偵察隊によると、クリスタル化は解除され、さらにはエルフ女性達の魔法封印も解除されているとの事です」


「ありえん!! エルフ達は人間に警戒心と恐怖心を抱いておるのだぞ?! 心を開くなんぞ天地ひっくり返ろうともありえん事じゃ!」


「その事なんですが、S級の彼女と別に双子らしきエルフも幼生期を脱し彼の側にいたとの事です」


「双子じゃと?! もしかして回収するはずだったあの双子か?! なぜ成長しておる!! 幼生期のまま出荷した方が高く売れるというのに!」


「わ⋯わかりませんが⋯⋯あの、Gランクの少年が何かをしたとしか⋯⋯」


「ありえんありえんありえん!」

 近くにあった物ひっくり返す。

「あの小僧! 何か⋯何か伝えていない事があるのではないか! どうなんだ!」


「わ⋯分かりません」


「クソ! おい! あの黒竜はどうなっておる?!」


「腐敗による侵食度は68パーセントです。どちらにしても1週間は持たず崩れ落ちるでしょう」


「なら、そいつを使いエルフの村ごと焼き払い消滅させてやれ!」


「よろしいのですか?」


「構わん! どうせ仕える気がないのだろう」


「分かりました。では、侵食性の高いクリスタル化をしつつエルフの森に行かせるように致します」


「うむ。次こそはでかい花火を見せて我が王国を宣伝するのだ!!」

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