第24話 奪還

京も生徒会を早めに切り上げたのかこの場所にやって来て俺達はマンションの入り口に近付いた。

そのまま鈴華にオートロックを開けてもらい、マンションに入る。


そしてエレベーターで上がって、玄関から上がり。

そのまま鈴華に案内され、フロアぶち抜きの大きな部屋に辿り着いた。

余りにも大きな部屋で、びっくりする。


そんな広々とした家の中だが、寂しそうにポツンと花梨が俯いて私服姿で居た。

その花梨が気が付いた様に顔を上げて、おかえ.....まで言って、俺達を見て酷く驚愕している。


貴方達が何故この場所に居るの、と思ったのだろう。

俺は.....いや、皆んな静かに花梨を見つめる。

花梨はオドオドする。


「.....嘘.....」


その様に慌てる花梨。

俺はその花梨に笑みを浮かべた。

結菜と蜜柑も柔和な感じを浮かべる。

そして結菜が手を振った。


「花梨ちゃん!」


「花梨」


「.....花梨さん.....」


俺は静かに見据える。

この事に涙を浮かべる、花梨。


そして静かに俯いた。

それから顔を上げたその目は.....睨む感じだ。

俺はまさかの事に驚く。


「.....何故この場所に来たんですか!!!」


「.....お前を助けに来たんだよ」


「そんな!?敢えて.....危険を遠ざけたのに.....そんな事を.....何で.....」


あんなに嫌いと話したのに.....何で.....と。

その場で泣き崩れる花梨。

そんな花梨をただ優しく結菜が抱きしめた。

そして、結菜は頭を優しく撫でる。


「.....花梨ちゃんは私達の大切なお友達だから」


「.....友達.....?」


「.....そうだぞ。友達ダ」


えっと.....と、友達とはこんな感じなのですか.....?と目を丸くして呟く、花梨。

その事に涙ながらに頷く、結菜。

花梨は涙を流し出す。

口元に手を当てて、だ。


「.....ほ、本当に.....有難う御座います.....皆様.....でも.....この場所は本当に危険ですから.....!」


俺達にそう言う、花梨。

俺と皆んなは顔を見合わせる。

そして頷いた。


「.....花梨。思ったんだけど.....一時的に家を出たらどうだ?」


その様な、先程から皆んなで考えていた提案をする。

じゃないと監禁とか余りにも.....非道だ。

このままじゃ花梨は危ないと俺は思う。

しかし、その言葉に花梨は酷く困惑していた。


「.....え.....でも.....そんな事をしても.....行く場所が.....無いですし、お兄様が.....」


「お姉様。お兄様にはキチンと説明します」


俺達は声の方を見る。

鈴華が顔を真剣にして言っていた。


「.....でも鈴華.....!?」


「.....私だって見てられないんです。お姉様だけが.....こんな目に遭う姿を.....だったら逃げた方がマシですから」


そして花梨の手を握る鈴華。

その様子を確認しながら、俺は言葉を発する。


「.....花梨。一時的に.....俺達が匿うよ。来てくれ」


「そうだね、あ、私の家とかどうかな?」


「.....オレっちの家でも良いゾ?」


俯いて、嗚咽混じりに号泣し始めた、花梨。

その顔は何もかもが怖かった。


そんな顔をしている。

俺はその姿を複雑な思いで見つめた。

鈴華が俺達を見つめてくる。


「お兄様はもう直ぐ帰宅なされます。.....皆様、お姉様を連れて早くお逃げ下さい」


「.....分かった。.....状況的にお前は大丈夫か?鈴華」


「.....大丈夫です。お兄様は私には優しいですから」


その言葉を信じてるぞ。

俺はそう言って花梨の手を握って立たせた。

そして俺達は頷きあって花梨を見る。



そのまま準備させて花梨の兄が帰って来る前にその場から逃亡した。

そして俺達は街中を駆ける。

結菜が聞いてきた。


「.....どうしようか?花梨ちゃんのお家」


「.....じゃあ、コインで決める?」


「いや。今で有能なのは結菜だ。.....結菜」


俺は真っ直ぐに結菜を見る。

赤面する、結菜に頼めるか?とお願いをする。

すると結菜は俺の言葉に目をパチクリして親指を立てて、ウインクした。


「もち、だよ!」


「.....多分、大丈夫だとは思うが.....気を付けてくれ」


「うん。花梨ちゃんは責任をもって預かるから」


俺達は結菜の返事に頷きあってそのまま結菜の家に向かった。

結菜の家は南区に有るが.....。

花梨の家から離れているから.....若干は安心だろ。

俺はそう考えた。


「じゃあ、花梨ちゃん!」


「.....はい」


「私の家に泊まってね」


優しく結菜は花梨の手を握った。

そして柔和に笑んだ。

花梨は涙を流しながら、はい、と返事をした。


その光景を見ながら、俺は笑みを浮かべる。

すると、背後からジト目の視線を感じた。


「.....と言うか、お兄ちゃん。さっきから花梨さんばっかり。花梨さんばかり見ないで私も見てね」


「いや、ヤンデレ化するなよ.....」


あははと俺達は苦笑い。

しかし、京はマジな目だった。

説得までに時間が掛かりそうだ。


だが俺は少しだけ落ち着いた感じだ。

仮にも花梨を助けれたという事に、だ。

俺は今は安心しながら、結菜の家まで歩く。

取り敢えずこの後は後で決めよう。

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