第23話 誕生日は四人揃わないと駄目だ

真面目に花鈴、俺、結菜、蜜柑。

この四人全員で京を祝福をしたい。

そう、一人でも欠ける事は.....許せない。


そして、あんな無理矢理に連れて行ったままで京の誕生日を迎えるのは如何なものかと思うのだ。

多分、全員が納得しない。

あんなに花梨は祝えるのを楽しみにしていたのに、だ。

このままでは絶対に許せない。


「.....」


俺は勉強に集中していた。

今日はどうやら花梨は登校していない様だ。

俺は複雑な思いを抱きながらテスト範囲を予習する。

これで安心して、全てに立ち向かうのだ。


「.....大丈夫?」


「.....ああ。ちょっとまだムカつくがな」


「.....そうだね」


声を掛けてきた結菜にそう答えながら。

空を見る様にする結菜。

俺は手を止めて、同じ様に空を見る。


「何で子と親ってこんなにこじれる家庭も有るんだろう?」


「.....多分、成績が全ての家庭なんだ。だから.....こうなっている」


「そうなのカ?」


蜜柑も教科書を見ながらやって来る。

そうだと思うぞ、多分。

大体.....高級なお嬢様が成績を気にしない訳が無いのだ。


だけど、やり過ぎってもんは有る。

許せないし、かなり腹立たしい。

花梨の人権.....を考えてほしい。


「.....花梨が可哀想だ。余りにも」


「.....そうだナ」


「.....そうだね」


絶対にこのままではいけない。

誕生日までに絶対に花梨を救い出す。

そして一緒に京の誕生日を迎えるんだ。


昔の過ちを繰り返さない様にして.....と思っていると。

蜜柑が俺を見つめてきた。


「.....ストレスを感じすぎるなヨ」


「.....ああ。俺は昔とは違う」


「.....3人が居たら無敵だよね!京ちゃんもだけど!」


そうだ。無敵だ。

思っていると、チャイムが鳴った。

蜜柑と結菜は手を挙げて戻って行く。


「じゃね」


「じゃあナ」


「後でな」


俺は頬をバシッと叩き。

そして、よしっと言ってから。

数学の授業を受けた。



テストまで残り4日となる。

思った以上に早く学校が終わったので、俺達はやって来た。

何処にやって来たかと言われれば。

勿論、花梨の家だ。


「.....デカイマンションだな」


「.....そうだね」


京は生徒会の為、居ないので。

俺達だけでその南区のマンションまでやって来たが.....見上げると、そこには巨大なマンションが有った。

高級マンションだな、まさに。


「.....ここに花梨が.....」


ギリッと奥歯を噛み締め。

そして前を見据える。

玄関が見えるが、どう入ったものか。

恐らく、答えなんぞ決まっている。


『帰れ』


と言われる答えが、だ。

俺達は静かにどうしたものか、と前を見据えていると。

凛とした制服姿の.....女の子が入って行くのが見えた。

.....ん?花梨にそっくりだな。


「す、すまない!」


「.....はい?」


俺らしくも無い。

何故かその子に声を掛けてしまった。

すると、その女の子は不愉快そうに俺達を見てくる。


ツインテール、顔立ちは美少女、目だけ鋭いがそれでも花梨に似ており。

泣き黒子が有って、顔は小さく童顔。

所謂、中学生の様に見えるが。


「.....君は.....七道花梨の妹さんか何か?」


「.....?.....貴方達は誰ですか」


「.....あう.....えっと.....」


目が鋭すぎる。

まるでヤンデレ化した京の様だ。

俺は冷や汗を流し胃痛で言葉に詰まっていると。


背後から結菜がその子に声を掛けた。

まさに怪しい者じゃ無いよという感じで。

こういうのは結菜が得意か?


「私達、花梨ちゃんの友達なの。.....体調が悪いって聞いたから.....」


「.....まさか.....貴方達は.....」


「.....友人として来たゾ」


少しだけ驚く様な表情になって。

そして俯いた、女の子。

それから横に俺達を確認しながら見つめてくる。


「まさか.....花梨お姉様にお友達が.....?それも来てくれるなんて.....」


涙を浮かべながら、その様に話す、女の子。

俺達は顔を見合わせた。

そんな中で、結菜だけが優しく聞く。


「.....花梨お姉ちゃんは.....良い人だよ。本当に。だから友達も.....出来たんだよ」


「.....そうですか.....」


涙を拭って、そして俺達を見てくる、少女。

そして頭を下げて。

自己紹介をしてきた。


「.....私は七道鈴華(しちどうすずか)と言います。中学3年生です。えっと.....」


涙がどんどん溢れてくる。

それを結菜が静かに和かに拭った。

悔し涙の様に見えたのだが。

それが現実となる。


「.....もし良かったら.....で.....構いませんけど.....その.....お姉ちゃんを.....助けて.....可哀想で見てられないから.....お願い.....します.....」


鈴華から嗚咽混じりで必死の願いが発せられ。

俺達はその涙の姿を見ながら俯いて、意を決した。

結菜も頷いて俺を見る。

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