第22話 反撃の狼煙を上げる時

カチコチと時計の針の音で時間だけが.....過ぎていった。

つまり、簡単に言えば俺達は無力さに追い詰められ。

花梨が連れ去られたその日はそのまま家に帰る事にした。

ヤル気が全くと出なかったから。


「.....お兄ちゃん.....」


「.....ああ、大丈夫だ」


自宅にて、夕方。

なんて無力だと思いながら、俺はソファで俯いていた。

京の為だと思って行動していたらこの様だ。

何故こんなにも俺達に災いが起こるのだ?


ギュッ


「.....!?」


突然、京が後ろから抱きしめて来た。

俺は驚愕しながら、ちょ、と言う。

だが、京は前を向いて、恥ずいから!と。

俺は前を見るしかなかった。


「.....お兄ちゃん.....が他の女を考えるのが本当にムカついて仕方が無いけど.....私も花梨さんがあんな悲惨な連れて行かれ方して悲しい気持ちが有るの。そしてお兄ちゃんが俯いている姿は私にとっても悲しい。だから.....このままじゃ何も解決しないから.....お願い、頑張って.....お兄ちゃん」


「.....京.....」


「.....べ、別にお兄ちゃんが落ち込んでいるからサポートした訳じゃ無いんだから!」


ギュッとしてくる腕に力が込められている。

.....そうだな。

俯いている訳には行かないわ。

俺はこんな所で止まる訳にはいかない。

3年前を.....立ち止まったあの日を蘇らせる訳には.....いかない!!!


「.....取り敢えず、花梨にもう一度、会おう」


「.....うん。お兄ちゃん」


「.....協力してくれ。京」


「.....うん」


優しげに微笑む、京。

その日、俺達は意を決した。

花梨にもう一度、会うという思いが、だ。

そして俺はスマホを取り出して、結菜と蜜柑にメッセージを送った。


(そうだね、もう一度、会おうね)


(オレっちも協力するゾ)


そのメッセージを見ながら涙が出た。

3年前、俺は京を救出、出来なかったのだ。

だけど今は、味方が居る。

京も変わった。


だから、俺は頑張れる気がする。

全てを取り戻せる、気がする。


「.....取り敢えず.....先ず手始めに電話してみるか」


俺はスマホを取り出した。

そこに、2分前にメッセージが1通来ている。

そのメッセージ内容は。


(助けて)


花梨の、最後に送ったメッセージと思われる。

俺は見開いて、そして歯を食い縛ってスマホを握り締めた。

そのまま俺は花梨に電話をする。


しかし、出なかった。

そうだろうな、当たり前だろう。

監視体制に有るのだ。

こうなるに決まっている。


「.....花梨.....」


「お兄ちゃん、警察に電話するのは?アイツ、確か監禁するとか.....」


「駄目だ。家族内の揉め事に警察如きが介入して来るとは思えない。そのプランは駄目だと思う」


俺はメッセージを送る。

財閥となればそれなりに大きな場所に住んでいると思う。

自宅の場所は分からないが。

俺は心でその様に考え、メッセージを打つ。


「.....」


(テスト後に花梨の家に行こう)


(家って確か.....あ、聞いたよ!マンションに住んでいるって)


(.....じゃあ、そのマンションに行けば会えるんだナ?)


(そうだよ!)


協力してくれる奴らが居るって本当に良いな。

恵まれている。

俺はその事を噛み締めながら、少しだけ口角を上げた。


これまで分かった。

取り敢えずは家事をするか。


「.....仕事は仕事だ。家事するぞ」


「うん。お兄ちゃん」


放って置く訳にはいかないので。

家事をして対策方法を考える。

京の誕生日まで残り約8日。


誕生日は誰一人欠ける事無く、皆んなで祝いたい。

花梨も加えて、だ。

だから俺は今度こそ


『助けられなかった.....京ぉ.....ゴメンな.....!!!』


2年前の12月。

手首を切った京の様にならない様に助ける。

花梨の全てを、だ。

だから俺は全力で思いに打つかってやる!!!

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