第19話 ケーキを捨てられた

なんとか眠気も有ったが、勉強して乗り切って放課後になった。

帰宅途中で蜜柑と一時、別れて京と歩く。

そして部屋の前で京と別れて自室に入り、制服を脱ぎ捨て全ての計画を思い出す。


絶対に上手く行く筈だが、一応しくじらない様にしよう。

俺はその様に思いながら過ごしている。

この部屋には監視が付いている。

その為、油断は禁物だ。


「.....」


こんな楽しい事をする日々が訪れるとは思わなかった。

全ては結菜、蜜柑、花梨のお陰だと思う。

だけど、功績がでかいのは恐らく結菜だと思う。


あの能天気な感じの性格に.....大幅に救われた。

俺は横の壁を見る。

京が居る部屋を、だ。


「.....よし」


着替えて、出陣だ。

いざ、京のプレゼントを買いに。

その様に思い上下を着替えた。



「.....よお」


「あ、修兵!」


「修兵様」


「修兵」


この街のモニュメント前。

後ろに池が有るのだが、その集合場所に向かうと性格に合わせた色々な格好の結菜、花梨、蜜柑が居た。


スカートを履いてTシャツの様な服を着ている結菜。

そしてズボンが決め手のネックの有る服と清楚な格好をした、花梨。

上着を羽織って、スカートにズボンの蜜柑。

俺はそいつらに手を挙げて挨拶をする。


「元気か?」


「うん」


「そうですね」


「おう」


それぞれ、その様に笑みを浮かべて挨拶をした。

その中で花梨だけが何だか申し訳無さそうな顔をしている。

俺は?を浮かべながら聞こうとしたのだが、先に結菜が聞いた。


「.....花梨ちゃん、元気無いね.....?」


「.....はい。あ、大丈夫です」


「.....どうしたんダ?」


「.....いえ.....」


俺をチラ見して、そして黙り込む、花梨。

どうしたんだろうか、本当に。

思っていると、黙り込んでいた花梨が唐突に笑顔になった。


「.....大丈夫。元気にいきましょう」


「.....お、おう?」


「.....花梨さん?」


目をパチクリする、俺達。

そうしていると、花梨はモニュメントの前から歩き出す。

俺達は顔を見合わせて、同じ様に歩く。

そして何歩か歩いた所で花梨からのメッセージを携帯が受信した。


(実はケーキを捨てられました)


その様な、メッセージをだ。

俺は見開くいて、そして花梨を見る。

花梨は前を向いている。


「.....」


俺は複雑な顔付きで京達に気付かれない様にメッセージを打った。

タンタンタンという感じで、だ。

何がどうなっている?


(大丈夫か?)


(.....申し訳無く思っています)


(違う。お前が、だ)


返信が途絶えた。

ケーキはどうでも良い。

花梨が心配だ。

家庭環境は大丈夫なのだろうか。


(.....本当にごめんなさい.....)


「.....」


花梨は訳は話さなかった。

が、俺は何か深刻な事態が迫っている。

そんな感じが.....する。

俺は訳が知りたいと思ったが、敢えて何も言わなかった。



「京ちゃん。行きたい場所有る?」


「え、あ.....はい」


「それじゃ分からないゾ」


ショッピングモール内。

キャイキャイはしゃぐ、三人、俺はそれを見ながら控えめにはしゃいでいる花梨をチラ見した。


そしてメッセージを.....送ろうと思ったが、止める。

駄目だ、と思って。


「修兵?どうしたの?」


「.....あ?ああ、いや.....」


「お兄ちゃん。暗い顔しないで」


「す、すまん」


その際に、花梨と目線が合った。

花梨は目線を逸らす。

俺は下を見て、そして笑顔になった。


「.....すまん、ちょっとテストの考え事を、な」


「えー。勉強?今日ぐらい忘れようよ」


「そうだぞ。修兵。今日は遊びに来ているんだからナ」


「ハハッ.....すまん」


大丈夫、きっと、大丈夫だ。

俺はそう思いながら、ただ元気に振る舞う。


ただひたすらに今の花梨の状況を友人として見守るんだ。

大丈夫、悪い方向に移行したりはしないと。



「..........お兄ちゃん本当に反省してる.....?」


「.....す、すまなかった」


ショッピングモールに入って30分後。

思いっきりジト目の京に睨まれる俺。

漆黒のオーラを纏いえらい事になっている。

俺は試着室前で野次馬も集まりながら正座させられているのだが。


何でこうなったかって?

それはな、試着室を間違えた、という事だ。

良く靴とか見てなかった。


「.....試着室を間違えるとか無い.....よ?修兵」


「.....す、すまなかった」


あの。

野次馬が集まっているからそろそろと思いながら俺はただひたすらにガミガミと説教を受けていた。


今から数十分前に服を見ようという事で服屋に寄り、それで服を見てみようという事になり。

そして服を着替えようと思い、開けたらまさかの下着姿の京。

特に何も気にしなかった俺がアホだった。


って言うか、ずっと考えている。

花梨の事をだ。


「.....お兄ちゃん聞いてる?それとも何か別の.....女の子の事を考えてない?」


「.....そんな事、有る訳ないぞ?京。ハッハッハ.....」


「...........」


「.....す、すまなかった」


怖いんですけど。

そんな中で俺はマジでこのままだと店員が集まって来るから、と言う。

周りを見てそれもそうだね、とようやくそそくさと移動を開始した。

花梨の様子を気にしながら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る