第18話 胸の傷が痛む

京の誕生日会の計画について5つの計画。


1、京にはこの事は知らせない、買い物ということで誘い出す。


2、各それぞれ、同時に動かない。

つまり、簡単に言うと一人づつ京に関わるという事。

じゃ無いと京に怪しまれる可能性が有る。


3、取り敢えず、京が欲しそうにしているものに目星を付ける。


4、ケーキは花梨の家で保管


5、当日、俺が京をデートに誘う。


6、家に帰ったらサプライズ。


計画はそんな感じだ。

取り敢えずは上手くいくだろ。

また何か有ったらその時に考えよう。



今は誕生日会も最優先事項だが、テストも最優先事項だ。

取り敢えず、良い点を取りたいものだが。

因みにテストは1週間後。

それまでにテストに備える為に今は勉強だ。


「お兄ちゃん」


「どうした?京」


「不思議に思った事が有るんだけど、聞いて。何で皆んな私を大事にしてくれるの」


全員が帰った後の話。

しかし、それは難しい問いだな。


俺は顎に手を添えて考える。

あまり答えが浮かばない、だけど.....。

そうだな、こう仮定する。


結菜は元から優しい。

花梨は正義感が強い。

蜜柑は幼馴染。


つまり簡単に言えば皆んな.....俺達を大切にして守ってくれるチカラを持っている。

それだけだと思う。

だから、きっと信頼して良いのだ。


そっくりそのままを京に伝える。

京は俺に見開いて潤んだ目で見つめてくる。

そしてニコッと簡単に笑んだ。


「嬉しい.....本当に感謝。なんか.....涙が出るんだけど」


「.....」


涙を拭っても涙が止まらない京。

全てと戦い抜いた戦士の真珠の涙だった。

俺はそう思いながら、京を複雑な顔で見据える。

胸に手を置く、京。


「なんか駄目.....胸の傷が疼いて涙が止まらないから.....」


その言葉を聞いて思わず立ち上がって強く、強く京を抱き締めてしまった。

女の子を抱き締めるとか何なんだという感じだが。

京は驚愕しながらも俺のされるがままになっていた。


俺もただ涙が浮かぶ。

それから京の涙を拭ってあげた。

何コレ、彼氏っぽいじゃ無い?と思いながらも首を振る。

やましい事は考えるな、と。


「.....京。皆んなでお前を幸せにしてやるから。絶対に.....お前を」


「有難う、お兄ちゃん。本当に嬉しいけど.....どさくさに紛れてお尻を触らないでね?」


.....尻!?俺、無意識に.....ぎゃあぁぁ!

しまった!と思った瞬間には俺はぶん殴られ、そのまま吹っ飛んだ。

そして後ろに倒れながらなんか笑っていた。


ある意味、本当に色々と嬉しい感じがして、だ。

本当に皆んなには感謝だな。

そう思いながら、俺は上下逆さまの外を見た。



翌日の午前。

京の涙を見てから俺は考えた。

これまで俺達は死にものぐるいで歩み続け、今に至る。


落ち着いた、今に、だ。

その苦労は半端じゃ無く、人を踏み越えて俺達はここまで来た様な感覚に襲われる。

京がヤンデレの引き金になってしまった中学の奴らは今でも絶対に許せない。


だけど、何時迄も恨むのはガキと思える感覚も有って複雑に学校で考えていた。

仲間が出来て、恨みをまだ持つべきか?

持たざるべきか。


俺はどうしたら良いのだろうか?そしてどう生きていけば良い。

忘れる事は出来ないだろうし先ず、傷の事を考えたら.....。

と思っていると、声がした。


「しゅ、修兵」


「?」


「楽しそうだな?宮間?」


あ、と気が付いた時には既に教科書でビシッと叩かれた。

俺は痛みに悶えながら数学教師を見る。

なんて事をすんだ。

人が必死に考えているのに。


「痛いっす.....」


「お前が悪いだろ」


どっとクラスが笑う。

俺は苦笑いを浮かべながら周りを見つめる。

結菜も蜜柑も笑う。

幸せだな、本当に、だ。


「全く。キチンと話を聞けよ?宮間」


「本当にすいませんでした」


「分かったなら、よし。では次に話を進めるぞー」


数学教師は肩を教科書で叩いて去って行く。

ただ頭を触りながら俺は周りに笑んだ。

高校ではきっと上手くいく。

人を信じて良いのだ。


その切なる願いがようやっと叶って。

今は京の誕生日会とか考えれる。

この幸せを壊さない様に気を付けて今は歩き出そうと思った。

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