第17話 京の誕生日会の計画
あと約10日で京が16歳の誕生日になる。
俺はそれなりに京の誕生日会のプランは考えてはいるが。
その前に迫り来る4月のテストをどうにかしないといけない。
なので勉強会という面目で俺は皆んなを呼んだ。
「修兵。しかしオレっちを家に呼ぶなんて久々だな。心境の変化カ?」
「私までお邪魔して宜しいのですか?修兵様」
「修兵の家.....良い香りだね」
それぞれの制服姿のみんなが集まった。
因みに部屋が良い香りなのはフレグランスしたからだが。
今はそれは良いとして。
本来の目的は勉強だが、コイツらも女子。
女子のアドバイスは役に立つだろうと思ったからだ。
因みに今は京は生徒会で居ない。
京の誕生日会を考えるまたと無いチャンスだと思う。
まぁ盗聴器でも有ればバレるんだが、流石にリビングには設置されては無いだろ。
思っていると、結菜が皆んなに話し出した。
「あ、それでお誕生日会、どうしようか?蜜柑、花梨ちゃん」
「えっと.....私は.....お誕生日をそもそも祝うものとは認識が出来ないです。祝われた事が無く。.....役に立たなくてすいません」
その言葉に俺は見開いた。
何だろうか、花梨も結構大変な人生なのか?と、だ。
祝われた事が無いのは相当なもんだと思うが。
その様に考えていると柔和に結菜が困惑している花梨に聞いた。
「そうなんだね....花梨ちゃん、誕生日いつ?」
「誕生日.....は5月12日ですが.....どうしました?」
「じゃあ、京ちゃんの次は花梨ちゃんの誕生日もお祝いしようね!私は5月19日だよ。とっても近いね!」
花梨は見開いた。
そして困惑顔をして少しだけ頷きながら赤くなる。
まさに誕生日を祝われた事が無い顔だ。
俺は少しだけ複雑な思いを抱く。
そうだな、花梨の誕生日計画を検討しよう。
迷惑かも知れないが、花梨の事を祝ってあげたい。
俺はその様に思いながら居ると、蜜柑が顎に手を添えた。
「しかし、誕生日会ならケーキやプレゼントを用意しないといけないナ」
「あ、えっと京様の誕生日ケーキならお任せ下さい。私がご用意致します。千◯屋で宜しいでしょうか」
「.....◯疋屋?」
いや、それ高級ケーキだろ。
幾ら何でも払えねぇからと俺は苦笑いする。
花梨は俺の様子にその場で首を振った。
赤くなりながら、だ。
「私のお友達の為です。自らが払いますので大丈夫です」
「は?」
思いっきり俺は目をパチクリした。
なんで高校生でそんなケーキを買えるのだ?と思いながら。
みんなが見る中、花梨は言いづらそうにゆっくり話す。
「私の家は.....その、携帯会社の財閥なんです」
「え?それって金持ちって事か?」
「そうなりますかね。分かりません」
自慢気では無い、控えめに答える花梨。
俺は目をパチパチしていたが考える。
当たり前か、と思いながら。
あの体育高校はお嬢様学校だった。
それは恐らくマジな金持ちしか通えないという事。
ちょっと考えて、そして花梨を見る。
「その、任せて良いのか?」
「はい、大丈夫です。えっと.....ふふっ。何だか楽しいですね、こういう事」
花梨は控えめに小さく笑う。
俺はその姿を見ながら少しだけ赤面して複雑な顔になる。
可愛いのと。
花梨も大変だなと思いながら。
「.....えっと、花梨ちゃんがケーキ。じゃあ、ケーキは良いとして.....プレゼントだよね。どうしよう」
「.....うーん。アイツが欲しいものって何だろうか?」
「何だろうネ?」
皆んなただひたすらにうーんと悩む。
そんな中で俺は顎に手を添えて、あ、と思った。
そうだ、あれだ、包丁とかどうだろうか。
.....いや、料理するからだぞ?俺を切り裂く為じゃ無いぞ?
俺はその様に脳内で否定する。
その事を取り敢えず皆んなに提案した。
「何だろう、台所用品とか喜ぶんじゃ無いだろうか」
「.....え?でも可愛いものが良いんじゃ無いかな?」
結菜はそう少しだけ首を傾げて言う。
そうか?良い案だと思ったのだが。
そうなると.....どうするかだな。
と思っていると、花梨が手を叩いた。
「じゃあ、皆様で近所のショッピングモールに出ませんか?」
「.....ん?しかし、京を置いてか?」
「いや、京も敢えて引っ張り出す。京の欲しそうな動きを観察してプレゼントを考えるってのはどうカ?」
「あー、成る程ね、良い案かも。蜜柑」
ん、そうか、じゃあ、明日にでも出るか。
明日は午前授業だしな。
早いし、京は生徒会も無いから。
そうなると、これは隠して誘わないといけない。
「その点はオレっちがやるゼ?」
「.....蜜柑?」
「安心しろよ、修兵。秘密裏に誘うからナ」
蜜柑がやる気を出してその様に八重歯を見せる。
俺は頷いた。
そして皆んなを見る。
「俺も何とかするけど、手伝ってくれ」
「おう、任せてくレ」
ふむふむ、役割分担も決まりつつあるな。
そうなると俺と結菜はどうすっかな?
その様に考えながら居ると結菜が手を挙げた。
ニコニコしながら、だ。
「はいはーい。じゃあ私は飾りを作ります!」
「.....お?そうか、任せれるか?」
「もちよ!京ちゃんの為なら!」
結菜はニコッと笑む。
そうか、と俺は見つめる。
じゃあ俺はどうするか。
ああでも、なら俺は.....そうだな。
「この誕生日会の全てを統括しよう。どうかな」
「うん?じゃあ統括委員長だね。ヨロー」
結菜が言いながら拍手した。
皆んなが拍手する。
俺は少しだけ恥じらいながらも、頑張る気持ちを抱いた。
よし、良い感じだ。
「えっと、今からケーキの予約します」
その様に話す花梨に、頼んだ、と返事する俺。
ってか、この場所で注文かよ。
と思いながらもまぁ良いかと思った。
その時だ。
「ただいまー」
その様な声がした。
京が帰ってきた様で。
俺達は和かに頷きあって、何事も無かった様に京を迎え明日に備えた。
明日の放課後が勝負だ、と。
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