第16話 京の誕生日会

不良どもにボコボコにされて病院送りになったが流石は俺だ。

身体の頑丈さだけは有る様で、特に骨折など傷を負っては無かった。

だが、全てがそのまま取り止めになり。

俺達は救ってもらったきっかけで花梨と友人になった。


そして月曜日の放課後の事である。

俺達は二人揃ってリビングのソファに居た。


「.....ん.....ダメッ.....」


「.....もう少しだ.....!」


「お兄ちゃん.....そんな大きいの入らないって.....!」


何を言っている。

入るに決まっているだろう。

俺はその様に思いながら、必死に入れる。

すると、入って.....って言うか!


「エロいんだよ!いちいち!耳かきをするだけだろ!」


「お兄ちゃんが喜ぶかと思ったから.....それだけだから!」


「喜ぶかァ!!!」


ツンデレは相変わらずの京。

ってか、下半身がエクスプロージョンするかと思ったわ!

俺はその様に思いながら、耳かきをテーブルに置く。

そして身体を逸らした。


「全く.....耳が痒いって言うからやっていたものの.....」


「ムゥ」


「.....頬を膨らませんな」


俺は溜息を吐いてそして京を見た。

全くな、コイツというヤツは。

すると京は立ち上がってニコッとして言った。


「.....でも、昨日は有難。お兄ちゃん」


「.....俺は何も出来なかった。全部、花梨のお陰だ」


「.....そんな事無いから。格好良かったから!.....すっごく!」


「.....そうかな」


昔と同じだよ。

また俺は何も出来無かった。

それだけだと思う。

俺は落ち込む様に話す。


「.....!」


「.....お兄ちゃん。気力出してよね。べ、別に元気な姿を見たいって訳じゃ無いから!」


「.....いや、京。有難うな。本当に」


ただ、ひたすらに京は良い子だと思える。

この部分がだ。

俺はその様に思いながら、見つめる。


「.....所で、お兄ちゃん」


「.....なん.....だ?」


「.....念の為に監視装置を付けて良かった!ね.....?お兄ちゃん.....?」


花梨とのメッセージのやり取りが印刷されていた。

俺はそれを見て、顔を引き攣らせる。

いや、勝手に携帯を弄るなよ。


「.....私に対して何か言う事は?」


「.....いや、勝手に携帯を弄るn.....」


「い・う・こ・と・は・?」


「.....す、すまなかった」


暗い表情の京に頭を下げる。

後で消してね、と言われ。

俺は、はい、と答えた。

でもそのメッセージは本当は.....気付かれたく無かったんだが。


「.....でも何のやり取りをしていたの。本当に」


「.....4月28日.....お前の誕生日だからな。その会の計画だ」


「.....え」


まさかの言葉だったのだろう。

見開いて固まる、京。

静かに頬を掻きながら、京に笑んだ。

そしてはにかんで言う。


「.....誕生日、おめでとう。色々有ったな」


「.....じゃあ、これって.....」


「お前の誕生日プレゼントをどうするかのやり取りだ」


「.....!」


今まで俺達は.....二人で祝ってきた。

だから今回は皆んなで祝おうとそう思ったのだ。

俺は静かに京を見る。


「.....別に.....嬉しく無いもん.....ッ」


「.....ハハッ」


涙目でクシャッと印刷した紙を握った。

そして胸に紙を抑えて、嬉しそうにはにかんだ。

本当に変わってきているなコイツ。

俺はその様に思いながら、嬉しく思った。



(有難うな。結菜。お前の案は正解だった)


(うん。きっと喜ぶと思ったから。.....昨日、嫌な事も有ったしね)


家事の仕事が終わったその様にメッセージを送ると、結菜はそうしたメッセージを送ってくれた。

因みに京はトイレに行っている。


誕生日会の件で少しだけ京の監視が甘くなったので隙を伺って送っているのだ。

俺は急ぎながらカツカツカツと画面を弾いてメッセージを書いて送る。


(結菜と花梨、そして蜜柑が集まったら.....喜ぶ。きっとな)


(そうだね。大丈夫、絶対に喜ぶから。京ちゃんは.....変われるよ)


「.....そうであると良いが.....な」


俺は少しだけ考えながら天井を見上げる。

誕生日会が当日に実行するのを待つ。

当本人にはバレちまったのだが。


「.....京」


その様に呟いて、スマホをテーブルに置いてから。

頬を叩いてやる気を出した。


京の誕生日まで後10日。

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