正義を護る女子

第15話 通行人、七道花梨

「ね、修兵」


結菜が腕を後ろに回して聞いてくる。

俺はその言葉に答えた。


「何だ?」


「私達のコーデ、服を選んでよ」


「あ、それ良いですね」


京はウンウンと大きく頷く。

俺はまさかの言葉にあ?と驚愕する。

そうしていると、二人で俺を引っ張り出した。

京が言葉を発する。


「お兄ちゃん。今日は覚悟しなさいよね」


「いつそう決まったんだよ.....」


「.....ふふっ」


その様にしている時だ。

背後からやたらに野太い声がした。


「オイ。姉ちゃん達よ」


「そんな奴を放っておいて遊ぼうぜ」


それぞれ金髪の不良三人組。

俺はビックリした。

と同時に、何だこいつら?と思い。


「.....何ですか?」


「そんなヤツを放っておこうぜって言ったんだ」


これは何か、マズイ気がする。

直ぐに俺は京の手を、全員の手を握って逃げようと思ったのだが。

相手の動きが素早過ぎて結菜が捕まった。

俺はまさかの事に見開く。


「.....ちょ、ちょっと離して下さい!」


「.....良い顔してるな。こっち行こうぜ」


「.....お前ら!」


男の一人は胸の辺りに手を添えようとしている。

これには流石に俺も黙っては居られなかった。

拳を振るうが、それを片手で止められて。


思いっきり左手の拳で右の頬を殴られた。

そしてそのまま、怯える二人も連れて行かれ.....クソッ!

クソッタレめ!なんてこった!!!


「.....110.....番.....」


左頬を抑えて蹌踉めきながらスマホを取り出す。

だが、110番したところで直ぐに来れる様な警官が居そうな場所は無い。

ここは人通りが少ない!


俺は頬を拭って、そしてスマホをポケットに直した。

このまま黙って居られるか.....!

クソッタレが!


「.....お前ら!」


「.....あ?」


「.....まだ諦めて無いのかヒョロガキ」


諦めれる訳ねぇだろうが!

俺は其奴らの.....友人として、兄として、大切な人として.....!

絶対に見捨てれるか!

その様に震えながら思っていると、三人は顔を見合わせた。


「.....まぁ痛め付けるか」


「.....そうだな」


そして、次の瞬間。

三人掛りで殴る蹴るなど俺は痛め付けられて来た。

俺はボコボコにされながら、微かな意識を持って三人を見る。


それぞれ、何かをやっていた。

どうやら警察に連絡している様だが.....逃げて欲しい。

そう思っているが、叫べない。


『あはは!なっさけねぇの!』


『いや、死ねよマジで』


あー、マズイな。

喧嘩でボコボコにされた昔の記憶が蘇る。

俺に力さえ有れば.....こんな奴ら.....!

その様に、思っている最中だった。


猛烈な勢いで横から凄まじい足蹴りが飛んで来た。

まるで、空手の様な。

その足蹴りを見ながらゆっくりと顔を上げる。


そこに、激昂している様な凛としたスパッツを履いた制服の少女が居た。

全然、見た事が無い少女だが.....誰だ?

俺は左目の上の方が潰れたので右目で見ながら、そう思う。


「君達、寄ってたかって暴力を振るうなんて恥ずかしく無いんですか?」


「.....何だお前?」


暴力を振るうのを止めてそしてお互いに見つめ合う、男ども。

怪しげにニヤッと笑みを浮かべる。

そして、とんでもない事を言い出した。


「また女だな。......犯すか?」


「顔も良いじゃねーか.....なぁ!!!」


コイツら卑怯だ!

折り畳式ナイフを取り出しやがった。

まだこんな隠し球を!あぶねぇ!

驚愕しながら、止めようとしたのだがその凛とした顔の少女は全く動揺せず。


「.....下品な奴らに負ける気は無いわ」


そう言い放ち、ポニテを揺らしながら腕を掴み手首を有り得ない方向に猛烈な勢いで折り曲げた。

猛烈な悲鳴が上がる。

そして地面にカランとナイフが落ちた。


「.....ひ.....!?」


「.....私は悪を絶対に許しません。貴方達の様な野蛮な方々に私は負けません」


まさかの力に狼狽えながら、逃げ始めた男ども。

って言うか、この少女どこかで.....。

俺は思いながら、居ると三人が俺に駆け寄って来た。


「.....修兵.....!」


「お兄ちゃん.....ごめんなさい.....本当に何も出来なかった!」


結菜と京の二人は言う。

いや、蜜柑が呼びに行ってくれたから大丈夫だ。

俺はその様にジョーク交じりに言いながら血を拭いつつ手を抑えながら空手少女を見つめる。


「.....助かった。.....アンタ.....強いんだな」


「.....いいえ。ただ単に制裁を下したまでです」


凛とした顔だが、それでも笑顔が似合う。

俺はその少女を見つつ、思った。

すると、結菜が涙を拭いながらその女の子を必死に見る。


「でも、この女の人.....何処かで.....」


「.....申し遅れました。.....皆様、私の名前は.....七道花梨と申します。佐藤保健体育学校の生徒です。.....皆様がご無事で良かったです」


黒髪のゴムで縛ったポニテ、着こなしている制服。

そして高い身長、スタイル抜群。

相当に鍛えて有ると思われる身体。


俺はその名前に痛みを伴いながらもハッとして思い出す。

この子は全国空手大会で優勝した、女の子だと。

思っていると、誰かが呼んだのかサイレンが聞こえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る