第11話 転校生、長谷部結菜

「初めまして。天候が遅れました。私は長谷部結菜と言います。皆さん宜しくお願いします」


「「「「「うぉおおお!!!!!白髪の天使の美少女だぁ!!!!!」」」」」


「.....!?」


その日の3時限目の事だ。

教室内、男子大騒ぎで女子は控えめの様な状態になった。

俺は見開いてその娘を見つめる。

長谷部結菜を、だ。


って言うか、この状況は唖然とする他無い。

何故、結菜がこの場所に居るのだ!?

何で3時限目?


しかも南高校に通っていただろ?

俺の頭の中がかなり混乱する。

これは一体どういう事なのだろうか。


横に居る、蜜柑もオーと目を丸くしている。

俺はそれを見てから目をパチクリしていると。

キョロキョロしていた結菜が、あっ、と俺側に声を上げた。

手を振って俺にアピールする。


「修兵!」


嬉しそうに手を振って振りまくる。

俺はまさかの事にハァ!と赤面で言って思考を停止させる。

ついそのままそっぽを見てしまった。

いきなり何を言ってんだ!


「ぶっ殺して良いのか、アイツ」


「.....何でよりにもよって.....」


「マジかよ.....」


そんなキルするという声が聞こえた。

俺は苦笑いを浮かべながら、そっぽを見続ける。

その時だった。


「落ち着けってんだよ馬鹿ども」


ぶっ殺されてぇのかという感じの空気を担任が醸し出した。

俺は先生を見る。

斎藤琢磨先生である。


独身、36歳、黒髪、天パ、無精髭。

結構性格が良い担任の先生。

独身ってのが有り得ないぐらいに良いのだが。

付き合っている女性の事を聞くと変貌するのが玉に瑕だが。


「という事で、仲間入りだ。お前ら美少女だからって手出しすん.....」


「「「「「宜しく!!!!!結菜さん!!!!!」」」」」


「.....喧しい、つってんだろお前ら」


周りの男子に頭に手に添えて言う、斎藤先生。

俺は苦笑しながら見つめる。

まさか結菜が転校してくるとはと思いながら、だ。

10年目にして何でこんな事になるのやら。



「.....結菜、質問攻めだナ」


「うーむ」


結菜は転校生でしかも美少女で清楚な感じで、周りからの人気は絶大だった。

当然、女子も男子も質問攻めだ。

俺と蜜柑はそれを見ながら、苦笑いを浮かべる。

女子はさっきの事で近付いた。


「.....でも、嬉しいナ」


「何がだ?」


「また三人で遊べるナ。みんな揃ったカラ」


「.....そうだな」


このまま、また、幼稚園時代に戻る様にまた遊ぼう。

俺はそれを考える度に嬉しく思う。

幼稚園時代が一番楽しかった。


質問攻めに遭っている結菜を見た。

その時だ、女子の一人がウキウキしながら聞いた。


「ねぇねぇ!結菜さんって宮間の事、好きなの!?」


「バァフ!」


いや、思いっきり吹き出したわ。

ってか、聞くなし。


俺は赤面になりながら結菜を見つめる。

え?あ、えっと、とその白い髪の毛を弄りながら、赤面で俯く。

そして俺をチラ見して言った。


「.....うん大好き.....」


「「「きゃー!」」」


「.....えっと、世界で一番、好きだと思う.....」


「「「きゃーー!!!」」」


その言葉に手を取り合って真っ赤になる、女子の連中。

そして、青ざめて俺をぶっ殺すという目で俺を見てくる、男子の連中。

いや、言うなし、俺の居場所無くなるし。


「.....ほほゥ結菜はデレデレだナ.....」


「何だそのジト目は」


「.....べっつニ.....?」


ツーンと八重歯を見せながら横を見る、蜜柑。

それを見ながら俺はクエスチョンマークを浮かべる。

一体、何だ、と思ったその瞬間。

ハッとして横のドアを見た。


「.....」


ゴゴゴと黒のオーラを醸し出す京が居た。

目をハイライトを消して静かにこっちを見据えている。

負のオーラ凄いな!お前。

俺は顔を引き攣らせながら、手を挙げて挨拶をする。


「.....よ、よぉ。京」


「.....」


「.....」


なんて言うか、その死の視線に冷や汗が吹き出た。

コイツは一体いつから見ていたのだ。

怖すぎる。


俺は命を刈り取られる、人間のごとく。

死神に近付いて.....逝く。


「.....京。落ち着け。良いか.....」


「.....ふーん。こっちに通い始めたの?結菜さん」


「.....そ、そうです」


「.....ふーん.....まぁ良いけど.....お兄ちゃん。デレデレしたらどうなるか分かってる.....?」


何これマジで恐怖なんですけど。

あ、はい、と俺は背筋を伸ばして汗を流しながら答える。

すると、背後から結菜がやって来た。


そしてニコッとしながら、京を見る。

京はその顔にビクッとした。

青ざめながら静かに去って行こうとする。

その手を掴んだ。


「こんにちは。京ちゃん」


「.....な、何ですか」


「いや、私も楽しそうな話に混ぜてもらうかなって」


「.....べ、別に今の話は何も無いですし、楽しくは無いですけど.....」


京は困惑しながら答える。

えー、そうなの?と言葉を発する、結菜。

京はオドオドしている。

すると背後から蜜柑もやって来た。


「おっと、話なら私も混ぜて欲しいゾ」


「いや、蜜柑さん.....」


「じゃあ落ち着くし、修兵、蜜柑ちゃん、京ちゃんとみんなで屋上に行こうか♪」


「いや、ちょ、何で俺まで.....」


ハーレムかよ?と負の視線を背後から感じる。

俺はその様に控えめに蜜柑とかに訴えたがまるで効果が無く。

そのまま結菜に手を引かれて屋上に行った。

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