第10話 初めての友達

夜も更けて時間が経ち深夜になった。

俺は天井を見ながら床に布団やら色々敷いて寝ている。

ベッドでは京と結菜が一緒に寝ている。

俺はスースーという寝息を聞きながら考えていた。


「.....何でだろうな.....」


「何が?修兵」


見開いて俺は横を見る。

結菜が和かにこっちを見つめていた。

かなり驚愕しながら結菜を見る。

どうしたんだろうか。


「どうしたの?何か眠れないの?」


「.....そうだな。この偶然とかを考えていたら.....な」


「そうなんだ。ふふっ。可愛い」


「.....結菜」


俺は起き上がって真剣な眼差しで結菜を見た。

そして頭を下げる。

結菜は目をパチクリとする。


「.....ごめんな、結菜。京は.....マジにお前を.....」


え?何かしようとしたの?と結菜は見つめてきた。

俺は暫くそのまま見ていたが、首を振った。

そして何でも無い、と言って横になる。

駄目だ、言い出せない。


「.....すまん。えっとな、つまり.....京はお前を嫌っているんだ」


「.....あ、そうなんだね。.....嫌いな訳は?」


「.....それは.....」


言い淀んでしまった。

それはちょっと京の許可を取らないと駄目な様な気が.....と思っていると。

スクッと京が眠気まなこを擦りながら起き上がり、そして話す。


「アンタが私達の仲で邪魔だから」


「.....邪魔?」


「.....京!?」


驚く俺を一瞥してそして結菜を見据えて言い出す京。

結菜は目を丸くして驚きの目で見つめていた。

そして数秒経って結菜は、あっ、と言って口を開く。


「.....もしかして.....修兵の事.....」


「違うから!」


「いや、どっちだよ。今、仲って言ったよな.....」


と、とにかく!とごほんと咳払いして結菜を見る京。

その目は本気の目だった。

いや、殺害しようと思うような目じゃ無い。

ただ、奪われたく無いと、そんな目だ。


「アンタはとにかく邪魔なの!」


「.....」


口を半開きにして結菜は居た。

だが、やがて結菜も真剣な顔付きになって笑み。

そして京を改めて見た。


「.....分かった。まだ分からないけど.....その点では負けたく無い。だから.....」


「.....!.....はい」


京は怒る様にしながらもニヤッと笑みを浮かべる。

何だか知らないが、京の理解者が初めて出来た気がした。

俺は昔をふと、思い出す。

京が初めて.....俺を好いたと思われる頃を、あの地獄の様な日々を。


『気持ち悪いんだけど.....』


『バカじゃ無いの?』


『兄妹同士の恋愛とか.....』


そう言って全てを遠ざかって行ったアイツら。

教師も気持ちが悪いとか馬鹿にして俺達を見放した。

義妹だと説明しても中学の奴らはそんな感じだったのだ。

所詮は妹だから、だ。


つまり俺はこのままでは理解者なんか到底出来るとは思わなかった。

だから全てを敵視して俺が守ると。

そう、決めた。


だがそれから3年目にして俺の元恋人、結菜が理解して動いてくれた。

俺は少しだけ涙を浮かべる。

そして今の時刻を見た。


「.....もう寝るぞお前ら。明日も学校なんだから、寝ろ」


「.....あ、そうだね」


「.....おやすみ、お兄ちゃん」


そして俺達はおやすみと言い合ってそのまま寝た。

そのまま、翌日になって。

何だか俺は久々にゆっくり寝れた気がした。



「泊めてくれて有難うね。修兵」


「.....問題は無いな。俺も久々にゆっくり話せて良かった」


「.....うん。.....あ、京ちゃん」


ちょいちょいとニコニコしながら京に手招きする、結菜。

京は警戒しながら、近付く。

すると、結菜はそのまま何かを取り出した。

そして見せる。


「.....はい。これ、お守り」


「.....何ですかコレ」


「.....私の大切な人にあげている手作りのお守りだよ。中に私が布で作った仲が何時迄も続きます様にって願った輪っかが入ってるの」


「.....!」


その言葉に見開く、京。

そしてお守りを見てそれから大切そうに胸に押し当てた。

本当に変わったなコイツも。

俺は思いながら、ニコニコしている結菜を見る。


「.....有難うな。結菜」


「全然構わないよ。私に良い友達&ライバルが出来たなって思えるし」


ニコッと結菜は笑んだ。

髪をなびかせて晴れた外を見る。

そして俺を見てきた。


そしてそれじゃあねと結菜は言って玄関から歩いて行った。

俺達は手を振りながら見送る。

京も手を振った。



今の時刻は午前6時だ。

少しだけ早い時間とは言え。

学校が有る事に変わりは無い。

俺は静かに前を見据えてそして意を決した。


「.....京。良かったな、本当に」


「.....べ、別に.....」


「.....」


ただ、ただ赤くなる、京。

俺はその様子を見ながら、笑みを浮かべた。

初めての友人、か。

その様に思いながら、だ。


「.....所でお兄ちゃん」


「.....ん?何だ?」


「.....胸を揉まなかった?私の」


「.....」


思いっきり赤面で見てくる、京。

俺は青ざめて冷や汗をブワッとかく。


朝起きたら確かにコイツはベッドから落ちて俺にのし掛かっていた。

だが、胸は揉んでない。

柔らかい物に手が当たりましたけど、無実です。


そのまま、俺は説明に追われた。

あっという間の1時間後、俺達は登校の時間を迎えて。

俺は思いっきり衝撃を受けた。

それなりに見開いたぐらいに、だ。


何故なら、結菜が転校して来たからである。

俺は唖然とするしか無かった。

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