第24話 シュタイン王国・2

「……そっちがしてこっちがしないってのも変な話しよね。私はフィアー。ベル公国のポポ村って所の出身だけど分からないよね。」


 フィアーが一歩前に出て率先して自己紹介をする。


「それとこの子は使用人じゃないから!私たちの大切な仲間だから!」


 ユウナを指し相手を睨みける。特にバサラとコーリンに怒りをぶつけている。突然指をさされたユウナは驚く。

 間抜けなユウナの顔にバサラがふっ、と小さく笑う。


「何かおかしなことでもありましたか?ユウナちゃんは大切な仲間ですので。それと申し遅れました。カナリアと言います。私もフィアーと同じ出身です。私たち全員同じところで生まれ育ったんです。」


 カナリアが聖母を思わせるような笑顔を浮かべているがそこにはどこか圧がある。ユウナは少し、ほんの少しだけ距離を取った。


「まあ!みんなさん幼なじみと言うものですか!実は私とバサラ様もそうなのです。失礼致しました。幼なじみ、大切な仲間を傷つけてしまって申し訳ありません。」


 丁寧に深々とコーリンが謝る。それに倣ってバサラも頭を下げてきた。


「あの……気にしないでください。確かに私の格好は、その、ちゃんとしたものではないですから。そう思うのも無理ないですよ。」


 ここでユウナが初めて発言した。言われた当人が気にしないと言えば誰もこれ以上掘り返すことは出来ない。


「それに私この中で一番役に立たないですから、まあ、雑用係?みたいなものなんであながち間違っていないと言いますか……だから顔をあげてください。」


 ユウナ自身使用人と間違われたことは一切気にしていない。今述べた通り魔力庫として以外役に立たないからだ。


「ですが……。」


 顔をあげたバサラがちらりとカナリアとフィアーを見る。まだ二人の怒りは収まっていない。


「カナリア、フィアー。私は気にしてないから。はい、これでおしまい。いいね。」

「う、うーん、ユウナがそう言うなら……。」

「…………。」


 無理やりだが納得させる。いや、カナリアは納得はしていないがひとまずは抑えてくれそうだ。


「ユウナ様。本当に申し訳ありませんでした。」

「ユウナさん済まなかった。」


 二人がまた謝ってくる。


 あー!これじゃ堂々巡りになる!謝るのはいいけどせっかく終わらせようとしたのに!


 バサラとコーリンが思いの外真面目だったかまた頭を下げてくる。

 どうやって話を終わらせようかユウナが考えていると


「あのー、そろそろどちらが本当の勇者様かハッキリさせてもらえませんか?」


 おそるおそると管理人が声を上げる。

 全員がはっと気づく。バサラとコーリンも顔を上げてこちらを見据えてくる。


「そうでした。バルトくん。あなたが偽者でしょう。なぜなら私はこの勇者の剣があるのですから。」


 腰にあった剣を外してバルトに見せつける。バルトは目を見開く。そして自分の勇者の剣をバサラに見せつける。すると今度はバサラが目を見開いた。


「こ、これって……!」

「ものの見事に色違いねー。」


 フィアーとエンラが反応する。

 二つの勇者の剣。それは色以外の姿形がそっくりなものだった。バルトのは赤を基調としバサラのは銀を基調としていた。


「……バルト君。ちょっとあっちで色々確認し ないか?」


 神妙なバサラ面持ちにバルトは何か悟ってしまう。


「分かった……。」

「それじゃあ僕達は少し席を外すね。」


 その宣言通り二人は小屋の一室へと二人で入っていった。残された者は特に会話などなく黙っていた。そして十分後扉が開いた。

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