第22話 クルリ王国・バルト2
少し筋肉質などこかの赤髪の女の子を想起させるスラリと伸びた肢体。穏やかな顔立ちは金髪の女の子の母性を呼び起こさせ、真っ直ぐな茶髪は今の現況となった少し腹の立つ少女を嫌でも思い出す。
「単純にあの三人の複合劣化版なわけだが、これで十分だろ?この女子も喜んでおるし。」
「はい、その、勇者様なら、喜んで……。」
照れたようにバルトを見つめる。体の疼きが加速する。
「のうバルト。」
勇者の剣が耳元で囁く。
「このままだとお主ユウナの魔力を貰えば貰うほどそうなるのだぞ。だからここで覚えるのだ。快楽を、異性を。知らぬからそうなるのだ。欲に身を任せろ。」
欲に身を任せる?つまりこの体の熱の思うがままに動けと?嫌だ、それだけは。
「バルト。あの三人を無理に暴きたいのか?暴きたくないだろ?目の前の女子はお主に暴かれるのを心して待っておる。利害が一致しておるのだ。もう限界のはずよ。――ユウナを傷つけたくはなかろう?」
…………ああ、そうだ。傷つけたくない。あの三人は大切な仲間だ。それならこの欲を制御するために、三人を守るために――
――俺は、目の前の女を犠牲にする。
バルトの手がゆっくりと女へと伸びた。
早朝。バルトは目を覚ます。隣の女はまだ寝ている。
バルトはじっくりと女の顔を眺める。そして吐き捨てるように
「誰にも似ていない。」
それだけ言うと服をベッドから下り服を着た。着替え終わると女を揺すり起こす。
「――ん、あ、おはようバルト。昨日はその、すごかったね。」
体をくねらせ照れながら昨夜のことを思い出している様子はとても気持ちが悪かった。
「ねえ、バルト。魔王を倒した後また一緒に――」
「名前で呼ぶな。」
「え、その、ごめんね。でも昨日は。」
「お前はただの代わりだよ。でもよく見たら代わりにすらならない――」
パァン!バルトの頬に鋭い痛みが走る。
「このくそ男!」
目に涙をためた女がシーツで体を隠し部屋から飛び出した。
ゆっくりと頬なぞる。
「バルトー昨夜は良かったかー?」
そう言って現れたのシーツを持った勇者の剣だった。
「さっきの女子は記憶を消して置いたから安心するがよい。我って優しいー。」
自画自賛する勇者の剣をぼーっと見つめる。
昨日、俺は、俺は……。何を……。
「気持ちよかったろー?我がっつり聞いてたからのー。あー!我も誰かと
交合う。ああ、そうか、そうだった。俺は自分の欲に任せて、三人のために誰かを自分の思うがままに蹂躙したんだ。ああ、そうだ。そうだった。あ、ああ、
「あああああああああああ!!」
吐き気がする。気持ち悪い。最低だ。最悪だ。でも不思議と後悔がない。俺はこんなにも醜かったのか?愚かだったのか?
「どうしたバルト?気持ちよくなかったのか?」
気持ちよくなかった?残念、最高に気持ちよかったよ。思うがままにやったんだ最高に決まっている。
「そうか、良かった。なら試そうか。」
勇者の剣がバルトの肩に手を置く。そして昨日と同じようにユウナの魔力を流し込む。
バルトの体が熱くなる。
「どうだバルト――違うよなあ。」
「――ああ、もう大丈夫だ。」
本物の快楽を知った男は疼きだけで苦しむことはなくなった。しかしこれは、新たな飢えをもたらすだけだった。
バルトの成長に勇者の剣は笑みを深めた。
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