第21話 クルリ王国・バルト
これは俺の醜い、欲に抗おうと欲に身を任せた話だ。
ユウナが狩り行ったおかげで俺達の部屋割りはすんなりと決まった。
ユウナがおらず、さらにさっきまでいなかった男、勇者の剣がいるせいで受付けの人に変な目で見られたが笑って誤魔化した。
用意された部屋は一人用とあって狭かったが俺に関していえば勇者の剣に人から戻ってもらえば済む話なのだ。フィアーとカナリアの二人には悪いがそうさせてもらう。
「おい、剣に戻れ。」
「いーやー!我このままでいるもーん。せっかく人になった我をもっと見たくないのかー!」
相変わらず人になると果てしなくうざい。剣の時は比較的落ち着いているのに。
「そうだバルトー、こっちに来い。」
ちょいちょいと手招きをしてくる。あまりいい予感がしないが従うか。
勇者の剣の近づき目の前に立つ。
「我バルトの素直なところ好きだぞー。そんないい子のバルトにはご褒美をやろう。」
そう言って俺の肩に手を置く。なんだか分からず立っていると目の前の男が怪しく笑う。そう認識するや突然勇者の剣からよく知った魔力が流れてくる。
「――!おまえ!やめろ!」
「おっとっと。」
手を思い切り振り払う。
熱い、熱い、熱い。こいつ!ユウナの魔力をそのまま俺に寄越しやがった!
体が火照り疼く。熱が体全体に広がり特に熱が集中して集まる場所があるのがひどく気持ち悪い。
胸当たりの服を強く握りしめ耐える。人前で羞恥を晒す趣味なんかない。
「く、くははは!良い顔よバルト。朱に染まる顔。潤んだ瞳に隠せぬ欲。実に良い。しばし待っておれ。さらに良いものを持ってくるからの。」
優雅に楽しそうに部屋から歩い足取りで出ていく勇者の剣を睨む。しかし、相手はそれに気づかず消える。
「はあっ……はあっ……。」
自然と呼吸が湿り気を帯びてくる。この体を冷やしたい。
窓を開けようと手をかけ押してみるがビクともしない。鍵は見当たらないので引いてみるが動かない。
「あ、あいつ……!ロックをかけやがったな!」
勇者の剣の魔法によって部屋に閉じ込められた。どうせあいつの事だ部屋全体にかけてるから扉からも出られない。
くそ!ユウナの馬鹿野郎。どんだけあいつに魔力をやったんだ。
ユウナに悪態つく。ユウナは大量に魔力をやったつもりは無い。しかしそれはユウナにとってであり、ユウナにとって少量は普通の人にとっては莫大で、バルトほどの魔力を保有していても大量となる。
「アン、ロック……!――はあ、だめか……。」
魔法を解こうとしたが勇者の剣の方が強力で解除出来ない。
体の火照りが止まない。ユウナの魔力を受け取る回数が増えれば増えるほど体の熱の量が増えて行った。今までユウナの魔力を貰っていたのは外で体を動かすなりして発散していた。
だが狭い部屋の中激しく動くことは出来ない。燻りが溜まる。どうしていいか分からず服を強く掴む。
いや、どうしていいか分からないのではないそれをしたくないのだ。
呼吸がさらに荒くなった頃部屋の扉が開く。
「バルトー大丈夫かのーってその様子だとだいぶ辛かったみたいのー。」
ニヤニヤとバルトの情けない姿を笑う。
こいつ……!はったおしてやる!
強くそう思うが思うだけで行動には移せないほど体が疼きに支配されていく。
「今日はのー。大人の階段を登っともらいたいと思うんだよなー我。」
大人の階段……?何を言っているんだ?
「じゃじゃーん!というわけで連れてきたのだー!バルトの好みそうな女をー!」
勇者の剣の後ろから一人の女が現れた。
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