第20話 クルリ王国・3
「あっはっはっは!あんたらそんな部屋ごときで揉めてたの!」
話終えると目の前のアカネは腹を抱えて笑う。よほど面白いのか目尻には涙も溜まってきている。
「ひー、もーおっかしい!でもそれさあユウナが一緒の部屋になれば良かったんじゃない?」
「それはバルトとってこと?」
思わずユウナは顔を顰めていまう。
「うわー心底嫌そうな顔。だってそうでしょ。あの中でバルトとに対して特別な感情を抱いてなかった。そうでしょ?」
「特別って言うならカナリアもそうなんじゃ。」
「ちっちっち。特別って何も恋愛感情だけじゃないんだよ〜。」
指を振りながらいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「憶測だけれどあの子バルトがどういうことになっているか多分ずっと知ってるね。そしてそれをとっても嫌悪している。」
「どういうことって、どういうこと?」
「ユウナちょっと私に魔力を流してくれない?雫程度でいいから。」
そう言ってアカネが手を差し出してくる。
「雫程度ってほとんど意味無いけど。」
「いいからいいから。ほれ、早く。」
意味無いのにと訝しみながらアカネの手に触れる。
雫程度、雫程度……ほんとにこれだけでいいのか?
アカネの言葉通り雫程度の魔力を渡して手を離す。
「あー、うんやっぱり。これはバルト辛かろう。」
何かに納得したのかうんうんと頷く。
まって私さっぱりわからないだけど。
「カナリアは魔力感応が人より優れているからバルトと似たように反応していたのね。気持ちよさの度合い?むしろ意味合いが全く違うけど。」
気持ちよさって……確かにカナリアは魔力をあげると気持ちいいと言ってくれる。安心するとも。フィアーもちょっと温かくなるとも。バルトは特に何も無い。あってもなんか気持ち悪いからいいけど。
「その顔は分かってないわね。わからない方が幸せかもしれないからいいかもだけど。けどこれだけは言っておくわ。」
やに真剣な顔を向けてくるアカネに唾をゴクリと嚥下する。
「いい?絶対!バルトには二人っきりの状況で魔力をあげたらダメよ。絶対だから。」
二人っきりでって……えーと。
「過去のはノーカンですか?」
「もうやっていたですと!」
「あ、でも勇者の剣がいたから実質三人?」
「勇者の剣ねえ。いや、でもある意味ユウナにアプローチをすることで牽制しているから大丈夫ね。うん、良かった。」
二人きりで魔力渡すのってそんなまずいのかなあ。カナリアとフィアーも二人っきりと時あるし。
「言っとくけどこれあなたの貞操を守るためだから!」
「て、貞操って!」
ユウナは戸惑うしかなかった。そういった男女のあれやこれはまったく経験したことがないのだ。
「でも失いたいってなら別だけどね。」
「……アカネの言葉に従うよ。」
どこか釈然としないが身を守るためと言われたら頷くしか無かった。
けどなんで魔力を二人っきりで渡すと私の貞操が危ないんだろう。聞きたいけど聞くの怖いからやめとこう。知りすぎて面倒なことにはなりたくはない。
「素直な子は好きよー。けどあんた達大変だったのねえ。結構色んなことがあったんでしょ。ほら、他にも話しなさいな。」
冒険譚を待ち望む男の子のように目を輝かせるアカネに仕方ないとユウナはまた自分達の冒険の出来事を語り始めた。
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