第18話 クルリ王国 1

「つまりバルトは選ばれたけどそれを全うしようと頑張ったってこと?」


 アカネの言葉は間違ってはいないが正解でもない。


「ま、そんなところです。他に何か聞きたいことでもありますか?」


 あえて正解は言わない。言えるわけがない。


「あなた達の旅についてもっと教えてよ。どんなことがあったか気になるもの。」

「じゃあ順番に話していきますか。では、クルリ王国のお話と行きましょう――」


 ユウナはゆっくりと語りかけるかのようにあの時のことを話し始めた。



 クルリ王国の小さな村。王都を旅立ち次の国であるシュナイン王国を目指しその国境付近の村である。

 日は落ち宿をとることになった四人は村の小さな宿へと足を踏み入れた。


「すみません。四人なんですが今晩泊まれますか?」


 バルトが笑顔でカウンターの女性に訊ねる。カウンターの女性は若く、見目の良いバルトの笑顔に僅かに頬染めた。

 それを後ろからフィアーが睨んでいるがバルトと女性は気づかない。


「4名様ですね。今空いているのはお一人様用の部屋が二つのみですね。いつもなら二人ずつでの利用を進めるのですが……。」


 女性は言葉を切りこちらを伺ってくる。


 二人ずつだと誰かがバルトと一晩二人きりになるのか。嫌だな。断固拒否だな。


 ユウナが気づくのと同時にフィアーとカナリアも同じことに気づく。


 カナリアは困ったような顔をしフィアーは真っ赤になっていた。


「じゃあそれでお願いします。人はこっちで分けますので――いて!」

「阿呆なの?ちょっとこち来なさい。お姉さん少し待ってもらってもいいですか?」


 ユウナがバルトの頭を勢いよく叩いてバルトの腕を引っ張りカナリアとフィアーの元へと連れていった。


「バルトあんたちゃんと考えて返事したの?」

「考えてって考えるも何も二人ずつに別れて泊まればいいだけだろ。」


 こいつ……さては馬鹿だな。


 ユウナは呆れてため息しか出なかった。


「二人ずつってことは誰かがバルトと一緒に寝るってことなるの。わかった?」

「ね、寝るって……!」


 ユウナの言葉にバルトの顔が赤へと変わっていく。


 え?なんで赤くなるの?まさかこいつ


「――むっつりスケベ?」

「バルト近づかないでよ!」


 むっつりスケベにいち早くフィアーが反応した。朱に染まった顔で何故か構えている。


「まあ、寝るっていっても特別な意味になるかは当人次第だけど。で、どうする?私はバルトと同じ部屋は嫌だ。」

「わ、私もさすがに……。」


 ユウナとカナリアが拒否する。


「二人がどうしてもって言うなら一緒の部屋でも構わないけどぉ……。」


 嬉しいくせに。フィアーはもう少し素直になるべきだね。恋愛方面以外ではあんなにサバサバしているのに。


「げ、フィアーとは嫌だ。だってこいつ寝相死ぬほど悪いんだよ。」

「はあ?だーれーのー!寝相が悪いってぇ!?」


 まさかのバルトがフィアーとの同室を拒んだ。それも面倒くさくなりそうな理由を付けて。


 確かにフィアーの寝相は悪かったけど本人に直接いうなよ……あほぉ……。


 ユウナは頭を抱えたくなった。バルトが嫌がらなければ穏便に済んだのだ。


 たかが部屋割りに時間がかかりそうな予感がしてユウナはため息を吐いた。

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