第17話 勇者とは
「――って感じですよ。勇者の剣との出会いからは。」
「はーなんか青春って感じねー。」
ゴルスタ王国の手前の国、フラリー王国のキュロット村の宿の一室でユウナはこれまでのことを目の前の女性に話した。もちろんユウナが本当は勇者の剣に選ばれたということは伏せて。そうするとどうだろう。ユウナはただ巻き込まれた人物となる。
「四人って同じ村だったのね。確かに仲良いとは思っていたけど。」
ユウナの目の前の女性は旅の途中で出会った僧侶のアカネ。色々あって勇者の仲間となった。
ポポ村を旅立ってから勇者一行はアカネ以外二人、計三人も仲間が増えた。
三人とも実力が高くユウナはますます影へと隠れていった。
「ねえねえ。それでバルトって村にいた時彼女とかいたの?」
声を少し小さくしてアカネが訊ねる。
聞きたかったのはそれか。突然自分と出会う前の旅の様子や旅以前のことを教えてくれって言ってきたのはそういうことか。
「さあ?そこら辺は興味なかったし。でもいたんじゃないかな。一応モテたみたいだし?」
「一応って!言っておくけどあれかなりの好物件よ!勇者じゃなくても普通にモテる類いよ!フィアーがホの字なのはすぐ分かったけどあんた達二人がどうなのか気になっていたのだけれどこの感じだとなさそうね。」
呆れたように肩を竦めるアカネに少し苛立ちを覚えたが一瞬で霧散する。
バルトに対して恋情とか少しも湧かないなー。カナリアもバルトだけはない。あんな子供って言ってたし。思ったけどカナリアって結構口悪いんだよね。そこも可愛いけど。
「それにしてもバルトも可哀想。勇者の剣に選ばれたからって魔王を退治することになって。」
「バルトが可哀想ですか?」
「ええ、だって剣に選ばれたら勇者になって魔王を倒さなきゃならないのでしょう。自分の人生が剣一つで決まってしまうなんて。……ちょ、何笑ってんのよ。」
アカネがバルトを可哀想と言った理由にユウナは笑ってしまった。
「あはは!ごめんなさい。でもバルトは可哀想じゃないよ。だってあいつ自分で勇者になるって選んだんだから。」
そうだ。あの洞窟の時。バルトは勇者を辞めることだって出来た。ユウナに押し付けることも出来たのだ。そもそも剣に選ばれたからだけで勇者にならなければいけないのか。
「勇者は義務じゃないんですよ。」
だって選ばれた私がやっていないんだもの。勇者の剣もそのこと自体を責めることは無かった。
「勇者は義務じゃない……?」
「そうですよ。勝手に選ばれたからってどうしてならなければならないんですか。自分の人生は自分で選ぶんです。剣が目の前に現れた時その剣を取るか取らないかはそいつが選ぶんですよ。」
私は取らなかった。バルトは取った。
「バルトは自分から握ったの。だからバルトは可哀想じゃなくて――最高に凄いやつなんですよ。」
だから私はそんな最高な友達を生かすために旅立つことを決めたんだ。気づくと生かさなきゃいけない人が増えていたけどいいさ、私の全ての魔力を分け与えて絶対全員生かしてやる。
これは義務じゃない!私が選んだ人生だ!
……選んでおいてなんだけど旅に人間関係って面倒くさいね。魔王を倒したらいの一番に離脱してやる。
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