第14話 ただの変態・3
「どうしたんだーユウナー?」
ユウナの声を聞き待っていたと言わんばかりに勇者の剣が素早くユウナの方を向く。
バルトが死ぬと言ってたがそれは魔力切れによって戦えなくなって敵に殺されるという事だよな。なら魔力切れを起こさなければいいんだろ。なら……!
ユウナは立ち上がりバルトの元へと腰を下ろす。バルトの手を取る。
「ユ、ユウナ……?」
突然手を握られて焦るバルトを気にすることなくユウナは集中をする。
私に魔力があるならバルトに移すことも出来るはず。オークと戦った時剣に私の魔力が渡ったのは事実。ならバルトにも。
バルトへ魔力が流れるイメージをする。自分の魔力自体感じることの出来ないユウナだがそれでも自分の魔力がバルトへ流れるのを想像する。
ユウナは体から何かが流れていくのを感じる。
これが魔力?よくわかんないけど……。あの時剣を握った時と同じ引っ張られる感じ……。お願い!バルトに行って!
ユウナの魔力はユウナの意志に従ってバルトへと流れていく。バルトもそれを感じたのか目を見開く。
ゆっくりとユウナはバルトから手を離す。
「バルト。魔力はいった?」
「あ、ああ……。」
呆然とバルトがユウナの問いに返事をする。
「勇者の剣。私がバルトへ魔力供給をすればバルトは死なないか?」
「もちろんだとも。ユウナもしや……。」
「ああ、私もバルトと一緒に魔王を倒しに行く。」
ユウナの堂々した宣言。勇者の剣のこれでもかと笑顔を浮かべる。その顔はまるで狙っていた獲物が長い時間かけ手に入れた時のような笑顔だった。
「ああん!ユウナが一緒とか我昇天しそう!ユウナ愛してるよー!」
両手を広げユウナへ飛びつこうとする。ユウナは慌てず横に避ける。そのまま男はバルトを押し潰してしまう。
「おい!どけ!」
「さて、私は帰るから。後は二人でごゆっくり。」
あんな男とこれ以上一緒に居たくない。バルトならきっと大丈夫だ。どんなバルトでも私は受け容れる、さ……。
「ユウナ!置いてくな!ユウナー!」
バルトの悲鳴が聞こえた気がしたがユウナは無視して洞窟から出た。
勢いで魔王討伐について行くって言っちゃったけどまあいいか。勇者になんてなりたくないし。死ぬほど面倒だし。バルトの扱いを見てると変にチヤホヤされて居心地悪そう。でも、私が選ばれたのに何もしないじゃきまりが悪い。それに友達を見捨てる訳にはいかない。
勇者は義務じゃないのにバルトは自分から選んだ。そんな立派な奴をわざわざ死地に向かわせるなんてそんなことさせられない。バルトは絶対生かす。命に変えても。
あ、でも勇者と同等の扱いとか受けたくないから実は勇者として選ばれていたことは黙ってもらおう。
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