第15話 ただの変態・4

洞窟に取り残された男二人はユウナが去った後もまだ重なって倒れていた。


「おい!いい加減どけ!」

「――なあ、バルト。気持ちよかったか?」


気持ちよかったか?その言葉に何を言ってるんだと首を傾げる。


「とぼけるな。ユウナの魔力のことよ。」


ユウナの魔力と聞いてバルトの顔をが真っ赤になる。


「くくく。その反応を見る限り気持ちよかったみたいよな。どうだ初めての快楽は心地よかったろ?」


怪しい笑みを浮かべる勇者の剣にバルトは恥ずかしくなる。

バルトは性的事情に疎かった。快楽なぞおよそ経験したことなくユウナの魔力が流れてきた時の謎の体の疼きが怖くてたまらなかったのと同時にどこか興奮していた。そしてそれが快感、快楽だと今初めて知った。もう戻れない。


「バルト。お主はもう少し性的なことを知るべきだ。このまま成長してユウナの魔力を大量に受け取ったらお主、ユウナを襲うぞ。」


ま、我は別にそれでもいいけどねー。でも、


「お主は嫌よな。」

「……その、襲うって子作りを、無理やりするってこと、だよ、な……?」


真っ赤になりながらたどたどしく勇者の剣に訊ねるバルト。

バルトの発言に一瞬固まる。そして大きく笑う。


「くっ、くははははは!お主!子作りて!いや、確かにその通りだが!あはははは!」


腹を抱えて笑い出した勇者の剣にバルトは羞恥で目に涙が溜まり始めていた。


「いや、すまぬ。笑いすぎた。ここまで純朴とはな。わかった。これからお主を強くしよう。あまり我は干渉する気はなかったがバルトのためだ。身体の鍛え方、魔力を増やす方法。後は大人の事情を教えていこうではないか。これから長い間共にいるのだ。我も別にお主を殺したい訳では無い。」

「あんな死ぬ死ぬ言っておいてか?」

「む、それはだな。ユウナが欲しくての。ユウナの罪悪感をつつけば勇者になるー!って言うと思ったのだ。許せよ。」


いじけたように人差し指を合わせる目の前の人物にバルトは呆れる。


「分かったからとりあえずどけ。」


うっとおしそうに手で払う仕草をすると何故か抱きついてくる。


「おい!どけって言っただろ!なんでさらに密着する!」

「嫌なのー!ユウナとバルトの混ざった魔力死ぬほど気持ちいいのー!こうバルトと抱き合うとさらに気持ちよくなって我ほんとにどうにかなっちゃいそうー!」


頬を染め蕩けきった顔の勇者の剣にバルトは拳を力強く握る。


「とっととどけ!気持ち悪ぃ!」

「ごふぅっっ!」


本日二度目頬に拳を受けた勇者の剣だった。

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