第12話 ただの変態
森の外れの秘密の洞窟。気絶したユウナとバルトは何故かそこで寝ていた。
「ん――。」
ユウナの意識が覚醒する。どうにもおかしな感じがしながら体を起こしてそこが洞窟であることに気づく。
「ここどこ?なんでこんなところに……ってオークは!」
「オークはもういないよー。我とユウナの愛の力によってきれいさっぱり消えたのだよー!」
ユウナの耳に見知らぬ声が入ってくる。声の発生源を見ると見たことの無い銀の長髪の男がいた。
誰だこの人?見た目はかっこいいな。うん。
「ああ、ユウナー!会いたかったのだよー!我ずっーとユウナとこうして話したかったのだよー!」
破顔した顔でユウナの顔を手で挟んでくる。
突然のことでユウナは固まる。
「ああユウナ。本物のユウナだ。この肌触りに瞳に髪に腕にお腹に足に全てがユウナだ。」
うっとりとユウナの体を撫でていく。その手を徐々に降りていきユウナ胸へと触れる。
「おっぱいはそんな成長しなかったみた――ごふっ。」
「ああん?」
ユウナが怪しい男の頬に拳を放ちそのまま地面へとぐりぐりと押し当てる。
別にユウナは胸の大きさは気にしていないが触られ勝手に評価されては腹も立つ。
「んあああ、ユウナのこぶし気持ちぃぃいいい!」
男はユウナの攻撃を痛がるどころか頬を染めて身を捩りだした。
男を殴っている拳から体全体へと鳥肌が立つ。
「きもちわるーーー!!」
ユウナは地面に尻をつけたまま器用に男から離れ洞くつの壁へと寄りかかる。
「なんなの!果てしなく気持ち悪い!てか誰なの!?」
離れていくユウナを見て残念そうに立ち上がった男は服の汚れを払いユウナへと優雅へとお辞儀をする。突然の変わりようにユウナが驚く。
「我が主、ユウナ。我は勇者の剣だ。我はユウナを求めあの日ユウナの元へ現れたのだ。」
「勇者の剣?どこからどう見てもあなた人間だけれど。」
「ふむ。これならどうだ。」
男は指をパチリと鳴らすと勇者の剣へとなってしまった。
は……?
ユウナはあまりのことに声が出なかった。
ユウナの様子に満足したのか剣がポンと音を立てて先程の男が現れた。
「これで信じてもらえたか。さてユウナ、我の主はユウナだけなのだ。ユウナの魔力の質、量。どちらも最上級で我はユウナが欲しくてたまらないのだ。」
欲に濡れた目をユウナへと向けてくる。
私の魔力の質と量がいい?それはおかしいだろ。
「勇者の剣。お前は勘違いをしている。私には最低限の魔力しかない。さらに魔法も扱えない。そんな人間の魔力がいいなんてとんだ悪食だな。」
捲し立てるように一気に言う。どっか行けどっか行けと心の中で呟いている。
「くくく、勘違いはお前達の方だ。ユウナ、お前は魔力を使う能力がないだけでその器は魔力を貯めるのには最適なのだ。それにもうさっき使った魔力が回復しておる。ああ、なんと素晴らしいこと。」
至極真面目にいい顔で言ってくるのでこちらの自然と背筋が伸びる。
本当のことなのか?このセリフで魔力を除いて聞いてみると体目当ての変質者みたいだけど……。もしかして案外まとも?よく考えたら剣だし!それも伝説だし!
「さあ!我と交合おうよ!」
ユウナの顔が真顔になる。
大丈夫かと思った矢先にこれか……。
ユウナは目一杯息を吸い込む。
「近寄るなこの変態ー!!」
ユウナの叫びが洞窟、さらに森へ
ただの変態だ!これただの変態だ!
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