第11話 勇者の剣・6

 ユウナは気づくと気を失ったバルトを庇うように弓を構えて立っていた。


 どうする。思わず木から降りたけど……。

 バルトをこのままになんて出来ないし。

 けど弓矢じゃオークにはどう足掻いても勝てない。バルトを持っては足が遅くなってオークに追い付かれる……。どうすれば、どうすれば!


 何かないかとユウナは辺りを見渡す。


 何か、何かせめてバルトだけでも生かす何か……!


 バルトの方をちらりと見ると自然と目に入るはバルトの持つ勇者の剣。ユウナはこれしかないと気を失っているバルトから勇者の剣を取った。

 普段なら絶対手にしない。けれどバルトを守るためと焦りが生じているせいか正常な思考が出来ていない。


《ニヤリ》


 誰かが笑った気がした。しかしユウナにそんなことを気にする余裕はなく剣を構える。


 私にこれを扱えるのか。たぶんバルトがよろけたのは魔力を消耗していたから。でも使っていた魔法はアクセルとスウィングとウインドエッジ。バルトの膨大な魔力量から考えてこれだけで失うはずはない。つまりこの剣が光った時。あれはバルトの魔力を使っていたということ。私の魔力で果たしてオークを倒せるのか、いや、悩んでも仕方ない!いちかばちかだ!


 ユウナはなけなしの魔力を剣へと流れ込むイメージをする。


 ユウナの魔力量は最低レベルだ。誰もが魔力は少なからず持っているの少なからずしか持っておらずさらに魔法も使えない。

 不安がユウナを襲う。けれど後ろのバルトを守るため村を守るため。ユウナは剣を高く掲げた。


「今だけはこの瞬間だけ私に力を貸して!」


《喜んで》


 ユウナの中の何かが大量に引っ張られる感覚がする。突然の初めての出来事に驚くとユウナは気づいた。剣が光り輝いていることに。


《さあ、ユウナはどうしたい》


 謎の声がユウナの脳に響く。


「あのオークをぶっ倒したい!」


《了解した。オークを消し去るイメージをするんだ。そして剣を思いっきり振り下ろして》


 謎の声に従いユウナは自分が剣を振るいオークを消し去るイメージをする。そしてオークに向かって剣を振り下ろした。


 振り下ろしたと同時に眩い光がオークへと向かっていく。圧倒的な光量。けれどどこか優しさと荘厳さのある光にユウナは見蕩れた。


 光はまっすぐとオークへと向かい巨体を呑み込む。


 光が消えるとオークが消え辺りの自然が蘇っていた。


「終わっ……た――。」


 ユウナはオークが消えたのを確認するとゆっくりと倒れ意識を失った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る