第9話 勇者の剣・4

 ユウナは一度家に戻り弓矢を手に取ると南西の森へと走っていった。


 ユウナは母が死んでから母の村での役割、魔物退治を担っていた。

 退治と言っても魔物はほとんど来ることは無く、さらに役目は魔物が現れたことを火矢で他の魔物退治を担う人物に伝えるのが主な役目だ。


 ユウナは村で一番の足の速さと運動神経を持っていた。バルトも確かに高いが魔力を持たいない状態ならユウナの方が上だった。


 ユウナは森に入り動物達の気配がしない方を探る。


 あっちか……!


 素早く音を立てずに移動する。数分すると遠くに巨大な魔物を見つける。


 あれはオーク!まさかこんな所にまで……。他にはいないみたいだな。あれ一匹だけか。なら焦らず落ち着いて対処できる。


 ユウナは鏃に火を付け矢を高く打ち上げる。それと同時にユウナは木の上へと上る。


 高い音が森に響き渡る。オークが音を聞きユウナのいた方へ醜い顔を向ける。ゆっくりとした歩みでユウナのいる木の下まで来る。


 オークは当たりを見渡し何も見つけられずまた村の方へとゆっくりと歩み始めた。


 木の上からそれを見たユウナはわざと音を立て別の木へと飛び移る。オークが上を見上げると一瞬黒い影が視界の端に移る。


 ユウナはオークが自分のことを捉えたことを確認すると次々と木に飛び移って行く。


 なんとかオークをここにとどまらせなければ……!


 ユウナの素早い動きにオークは次第に苛立ち始め木を棍棒でなぎ倒し始めた。


 ユウナは慌てずオークを村とは逆の方向へと誘導する。


「オークさんこちら木の鳴る方へ♪ってとこかな。」


 余裕もなるのか聞こえる訳でもないがオークを煽る。


 さてさて、オークが木をなぎ倒してくれたおかげで火矢を無駄打ちすることはなくなった。さすがに木がなぎ倒されてたら気づくでしょ。


 オークと付かず離れず、一定の距離を保ちながら木を渡っていく。


 はやく誰か来てくれないかなー。さすがにずっとこれだと森がなくなっちゃう。


 ユウナの願いが届いたのか。誰かが走ってくる音がする。ユウナは喜んだがそれはすぐに打ち消された。


「魔物!この俺が相手だ!」


 現れたのはなんと勇者バルトだった。


 ユウナよりかなり遅くやって来たがバルトは森に入って道に迷っていた。木が倒れる音がしてようやく来れたのだ。内心でやっとついたと少し喜んでいる。


 現れたバルトを見てユウナは小さくマジかよ、と呟いた。



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