第3話

シャオメイは庭の大きな岩に腰掛け彼の服を小さく畳んで持っている。


「変態か」


その言葉に肩をビクつかせて振り返ると兵士達が噂話をしていた。


「だってよ、女の部屋にはいかないし男の部屋には入り浸るわ。」


「まあな、もしかしたら不能なのかもな」


そういいつつ兵士達は立ち去って行った。


不能であれば男装などする必要はなかったのかな。


と、ほっと気が抜けるシャオメイ。


「それ俺の上着」


「陛下の匂いを嗅ぎたくて」


「のっけから変態だな」


うっかり口が滑ってしまい固まるシャオメイ。


「変態、次の遠征一緒にこい」


「えっ」


遠征の長い列の中程にエイシュンはいて、その顔すら見えない後ろにシャオメイはいた。


事件が起きたのは5日後、シャオメイのすぐ後から敵の伏兵が現れた!


味方の陣形が崩れ慌てた波が押し寄せる。


騎乗したシャオメイは身動きが取れない。


そこへ敵の騎兵が長槍を回しながら近づいてくるのがみえる。


震えて剣を抜くことさえできない。


「シャオ!伏せろ」


伏せたシャオメイの上で刃の交わる音がする。


そのままエイシュンは彼女の馬の腹を思いっきり蹴った。


「手綱はなすんじゃねぇぞ!シャオ!!」


「エイシュン!?エイシュン!!だめっ待って!!」


馬は荒々しく前に走り出した。


馬なんか上手に乗りこなせないのに全力疾走だ。


軍隊からだいぶ離れた場所で崖に気づき手網を引いて馬は止まったが、彼女だけが宙に身体が飛んだ。


そのまま谷底へと落ちていく。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


春先の冷たい川の中で気絶し、幸いにも枝に引っかかり途中で川辺に留まっていた。


「エイシュン…」


乱れた陣形、木々の間をくぐり抜けてけもの道からかけつけた彼の顔を思い出す。


「私が居なければ、あそこはちゃんとした力が保てたはず」


彼は優しすぎる。


見捨ててあのまま中央で陣形を固めていれば良かったのに。


「いたっっ」


肩に痛みが走った。


夕日が沈みかけ慌てて洞穴に駆け込む。


こんなに深いところには兵士は来ないはず。


とりあえず一晩ここで過ごそう。


火も起こせず、濡れた服を脱ぐ事しかできない。


懐に入れていた鏡は割れてはおらずホッとした。


男装用の化粧は全て落ち、白い素肌が見えてしまっている。


痛む肩は少し青アザになっている。


鏡を置くとぎゅっと強く膝を抱え込んだ。


寒さで歯がガチガチと震えた。


鏡とは違う何かが月の光を反射している。


刃だと判断した瞬間、木の棒を掴んで体制を構え振り返った。


「「!!!」」


次の瞬間、悲鳴をあげそうになるシャオメイの口は塞がれた。


ぎゅっと両腕に抱かれると、落ち着き彼女の力が緩む。


重なった唇がゆっくりと離れる。


「エイシュン……」


「大丈夫だ身体は見てない」


「そんな事より傷はついてないですか?崖から落ちたのですか?」


「ないない。崖から滑ってきた」


「なんて超人なんですか。さっきだってあんな狭いけもの道をどうやって使ったのか」


エイシュンは着ている物を全て脱ぎ、直に彼女に肌を重ねた。


胃のあたりに彼女の柔らかな胸が重なる。


恥じらってか離れようとした彼女を強く抱きしめる。


耳元まで赤くして黙り込む彼女に、自分の上着をかけた。


耳元に口付けるとくすりと笑いながら囁く。


「顔から上は体温が上がってきているようだな」


「陛下!」


「エイシュンと呼ばないのか?」


「呼びません!あれは陛下が死んでしまうと思って心配してっっもう」


我慢していた涙がぽろぽろと零れた。


「俺だって心配したんだ。そなたの馬が崖の上でさまよっていて崖から落ちて死んだかと思った。」


「んっぅ」


優しく口付けをされ、口が開いた所に彼の舌が押し入ってくる。


唇を何度か甘く痺れるように吸われると頭がぼうとした。


頬から首筋へと流れるように唇が這う。


そのまま呼吸が乱れる二人。


「アアッエイシュンっっ」


むちっとした胸を優しく両手を使い揉みほぐされる。


彼女は秘部に触れられてようやっとこの行為が何であるのか悟った。


「だっだめっっ」


「少し調べさせてもらう。黙って俺の指を受け入れろ」


くちゅくちゅと恥ずかしい音に顔を背け、行為に対する恐怖に耐えているのか、額を彼の肩にくっつけている。


「はぁっはぁっはぁっもう終わります?」


「もっと俺にしがみつけ。膝を立てないと触りにくい 」


いつまでもモヤモヤする感覚が続くのは堪らないと言う通りにする。


秘部を思いっきり刺激されると、その拍子にエイシュンの髪をぐしゃっと掴んでしまった。


「無礼ぞ。まぁ許すが」と頬にキスをする。


目を潤ませふるふると震えている姿が可愛いい。


彼女の身体が火照ってきたので、集めた小枝に火をつけた。


「ん?」


「…」


ゆっくりとエイシュンの髪から手を離し、その手を肩にまわす。


熱い吐息がエイシュンの耳にかかる。


「終わっ…た?」甘く可愛いい声が聞いてくる。


「あぁ、終わった」


「良かった」


ほっとした彼女の髪を優しく撫でる。


「陛下…まだ太股に触っています」


「それは制御できない」と照れた顔をするエイシュン。


下の物を確認して、はっとした。


「すすすみません我慢します!」


「ふっなんだそれ」


エイシュンがくくっと笑うと胸がきゅっとした。


日が昇ると2人は川沿いを歩き、迎えに来た兵士達と合流した。



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