第9話 令和の東京でオモフ
「日本人は群れてばっかで排他的 」
「日本人は英語すら話せない」
「メガネでチビで短足。カメラとウエストポーチ」
ボクが子供の頃に聞いた外人の日本人評だ。
違和感を感じた。独りを好むボクは何人なんだろって。
そんなことを観光外人グループを見て思い出した。
新しい仕事を初めて1ヶ月。残業が続く毎日がふと途切れた木曜日。
前職では勤務中に小説を書いていたが、新しい職場は真反対。軽い微熱と虚脱感をぶら下げながら、京浜東北線から中央線下りに乗り換える。
座れないが肩を押し合うこともないくらいの混雑の車内に、5人組の白人男女グループが楽しげに英語で話してた。
その音量は聞きたくなくても聞こえてしまうほどで、それが輪唱みたいに連なるもんだから、弱った身体を揺さぶるようだった。
格好はどうだ?いかにも旅行者と言わんばかりのキャリーバックに、Tシャツにジーンズで手にはgo pro。
新宿に行けば10メートル感覚ですれ違うようなやつら。
そんな奴等が「ミステリー」だの「ストレンジナットウ」だのってケラケラと。
ボクは正直イラッと来てた。お前が言うミステリーな国に産まれて、ストレンジなもんを毎日のように食ってんだと。お前にとっては非日常を日常にして生きてんだって。
そこで気がついたんだよ。あぁ、昔の外人もこんな感じだったのかなって。
そりゃ自国に別の国の奴が来て、言葉が分からないと思って小バカにするようなことを無意識でも言ってりゃ腹が立つ。
その瞬間にそいつらは敵として認めて、ある種特別視して、必要異常に意識する。そして、自分の仲間に伝えるために特徴を伝えて共感を誘う。
今のボクのようにだ。
ボクの国は商いの国。お金を落とす人を足蹴にはしない。しかし、外国ならストレートに言うだろうな。言われた方は自分の何が悪かったかも分からないから、人種や国に悪感情を抱くだろう。
そんなことを思ってたら、テンションが上がりすぎた外人が大きく動いた際にボクにぶつかった。
謝るかと思いきや、ボクの顔を見てヘラヘラしてたので肩を組んで「careful guys,you and freind doing bad maner should learn our culture」って言ってやった。
彼らはビックリした顔で謝罪し、押し黙り、次の駅で降りてった。きっと彼らにとっては悪い日になったかもしれない。でも、日本を学ぶきっかけになっただろう。
静寂になった車内で独り、自分に友達がいない理由が何となく分かり、少しだけ悲しくなってうれしくなった。
そんな日であった。
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