第8話 夜の随想録

考えないようにしている。


脳髄を仕事で染め上げ、今をあしたへ先送りしている。


順繰りに、滞りなく。


世界は深い夜に抱かれている。


光を灯した虫粒のような人間たちがうごめいている。


自らが灯した光に朝だと急かされるように、どこかへと消えていく。


それを見たときにふと思った。


先延ばしされた今が積み上げられなくなった時、一体何を思えるのだろうかと。


世界は真夜中。


これを綴ったのちに、俺は電気を消してベットに逃げ込むだろう。


明日も仕事だからと思いながら。明日残した仕事の段取りを考えながら。 貴重な夜を繰り越すのだろう。


今を考えないようにしている。


そうしないと、どこにも行けないから。

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