俺が任されたクラスの生徒の名前はみんな回ってる
今日は俺の勤める高校の入学式。新一年生の初々しい姿を見て高校時代の事を思い出す。
憧れの高校デビューに見事失敗し、クラスメイトから『オタク』のレッテルを貼られ、三年間底辺カーストから抜け出すことができなかった。……いかんいかんネガティブなことを思い出してしまった。もう忘れよう。
それにしても教師になって五年目。俺は二年連続で一年生の担任をすることになった。去年はやんちゃな奴しかいなかったからな。今年はおとなしい子がいることを祈る。
入学式が終わり、俺は担任する一年三組の教室に入り教壇に立った。
「あ、先生だ」
見れば分かるだろ。ほかの生徒は微妙な笑いを浮かべていた。そういえば去年もこういう奴いたな。俺は男子生徒の言葉をスルーして話を始めた。
「えー、みんな入学式お疲れ様。あんまり
みんな緊張な面持ちになった。そりゃそうか。
「そんなに難しく考えなくていいよ。出身の中学とか、自分の趣味や得意なことを言ってくれればいいから」
俺は出席簿を出して出席番号と名前を確認する。えーと……。
「じゃあ、一番の
丹下君は無言で立ち上がり、落ち着いた声で自己紹介を始めた。
「出席番号一番、丹下
おぉ、あの名探偵のクラスメイトと同じ名前か。でも性格は正反対っぽいな。
丹下君の短い自己紹介が終わり、次の生徒が立ち上がる。
「出席番号二番、
今度は艦○れの摩耶と同じか。でも俺は
「出席番号三番、
変わった名字だな。まあ世の中探せばもっと変わった名字あるだろうけど……。次は『苅枝』
これは『かりえだ』でいいのか? 教師だけど漢字は苦手なんだよなぁ。とりあえず順番が来るまで待とう。
鹿谷君の自己紹介が終わり、
「出席番号四番、
ふぅ、合ってた。これ間違ってたら教師としてマズい。えーと、次は
「出席番号五番、田中かなたです」
ここで俺はある違和感を覚えた。生徒の名前自体は別に珍しくない。けど普通の人と何かが違う。違和感の原因が分からずもやもやしている間に田中さんの自己紹介が終わり、次の生徒が立ち上がった。
「出席番号六番、
俺はもしかしてと思い。丹下君から小矢さん六人の名前をひらがなにして並べてみた。もちろん脳内でだ。
『たんげげんた』
『やまだまや』
『しかたにたかし』
『かりえだえりか』
『たなかかなた』
『こやまやこ』
そうか。回文だ! 生徒の名前が皆回文になってる。偶然にしては出来過ぎている。一体どこまで続くのか。
「出席番号七番、
俺はすぐさま脳内でひらがなに変換する。『さかつきつかさ』……回文だ。
「出席番号八番、
これも回文! これで八連続!
その後も
ちなみに、俺に「あ、先生だ」と言ったのは
そして最後は『今井』
これで名前が『マイ』であればパーフェクトだ。なんか緊張するな。頼むぞ!
「出席番号三十五番、
……今井?
「……今井
なぜ!! なぜ最後の最後で回文じゃないの!? ここまで来たら最後まで行ってほしかった。
こうして全員の自己紹介が終わり、緊張していたせいか、俺の手が汗で少しだけ
ちなみに後で確認してみると、実は今井さんの名前も回文だったのだ。ひらがなだと回文ではないがローマ字にすると『IMAIAMI』。それを知った俺は少しだけ感動を覚えた。
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