第28話

 森を抜けてニノリッチの町に戻った俺たち。

 帰ってきた安堵からほっとしていると、


「あっ! シロウお兄ちゃん!」


 なんということでしょう。

 町の入口でアイナちゃんが待っていたではありませんか。

 アイナちゃんは俺を見つけると、座っていた丸太から立ち上がった。

 たたた、と駆け寄ってきて、俺の一歩前で止まる。

 そして俺を見あげ、


「おかえりなさい、シロウお兄ちゃん」

「ただいま、アイナちゃん」

「……えへへ」


 アイナちゃんが嬉しそうに俺の手を握った。

 どうやら手を繋ぎたいみたいだ。


「ん、あんちゃんの娘か?」


 手を繋ぐ俺たちを見て、ライヤーさんが訊いてきた。

 その後ろではキルファさんが、「ボクのこと『かわいい』って言ってたのに子供がいるにゃんてー」とか言いながら、わざとらしくよよよと崩れ落ちていく。

 こらこら。アイナちゃんが戸惑っちゃうでしょうに。


「やだなー、娘じゃないですよ。この子はアイナちゃん。うちのお店を手伝ってくれてる子です」

「そうだったのか。変なこと言って悪かったな」


 ライヤーさんはそう言うと、しゃがんでアイナちゃんと目線を合わす。


「おれは冒険者のライヤー。あんちゃんの店にはこれから世話になると思うから、ヨロシクな嬢ちゃん」

「うん。えと……あ! おま――おまちしています!」

「だっはっは! まだちっこいけど立派な商人だな。あんちゃん、大事にしてやれよ」

「もちろんですよ」

「おっし。銀月に戻ってエミィに報告。そんで依頼達成だ。あんちゃん、もう少しだけ付き合ってくれ」

「はい。じゃあアイナちゃん、俺ちょっと冒険者ギルドにいってくるから、アイナちゃんは先にお店で待っててくれるかな?」

「うん」

「んよっと、はい鍵」


 俺はリュックから店の鍵を出し、アイナちゃんに手渡す。


「お店で待ってるね、シロウお兄ちゃん」


 アイナちゃんの背中を見送ったあと、


「あんちゃんいくぞー」


 俺はライヤーさんたちと一緒に銀月へと向かうのだった。


「エミィ、戻ったぜ。あんちゃんからの依頼完了だ」


 蒼い閃光と一緒に、意気揚々と銀月に入っていく。

 三日ぶりの冒険者ギルドだ。

 そこには――


「お願いしますぅ! おカネはもうちょっとだけ待ってくださぁい!」


 見知らぬおじさんに、完璧な土下座をキメるエミーユさんの姿があった。

 ……なにこれ?

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