第6話

「シロウお兄ちゃん、ここが役場だよ」


 役場は町の中心部にあった。

 レンガ造りの二階建てで、町の住民以外でも利用していいそうだ。


 俺はアイナちゃんの案内の下、役場へ入り手続きをはじめる。

 手続きといっても、とても簡単なものだった。


 まず、氏名と営業期間を書き、次に立売りか露店か、はたまた店舗型かを選択するだけ。

 立売りは一日銅貨三枚で、露店型は銅貨一〇枚。

 そして店舗型は一〇日単位での契約で、一〇日につき銀貨三枚が必要とのこと。

 俺は露店型を選択し、期間はとりあえず五日としておいた。


 申請用紙に必要なことを記入していく。

 かかった費用は銅貨五〇枚。日本円で一日、一〇〇〇円の計算だ。

 都内でのフリマ出店費用が一日三〇〇〇円なのを考えると、破格の値段設定ともいえるだろう。


 役場の担当者曰く、発起人は町長。

 辺境にあるこの町に人と商人を呼び集め、町を発展させるため特別安く設定しているんだとか。しかも、自警団が見回りもしているので安全もバッチリとのこと。

 町長もなかなかやるじゃんね。


「はい。書き終わりました。これで大丈夫ですか?」


 俺は申請書類を担当のおばちゃんに見せる。

 ばーちゃんが残した指輪の効果で、異世界言語も問題なく書けたから凄いよね。


「シロウ・アマタさんね。露店型で出店期間は明日から五日間。合ってるかしら?」

「はい。合ってます。まー、儲かったら延長するかもしれませんけどね」

「あらー、いいじゃない。町の発展のためにもあなたの商売が上手くいくことを祈ってるわ。じゃあこれで受理しておくから、がんばんなさいよ」

「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」


 こんな感じで、出店申請は一五分ほどで終わった。

 よーし。市場に戻って何が売れるか考えるぞー。

 俺は再び、市場へと戻るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る