第4話

 串焼きを食べ終えた俺は、改めて【等価交換】のスキルを検証することに。


「日本円が異世界の通貨になることはわかった。問題はこの『銅貨』を元の日本円に戻せるか、だよな~」


 となると、問題はどうやってスキルを使うかだ。

 さっきは無意識にスキルが発動してたけど、きっとなにか条件があるはずだよな。


「ふーむ」


 俺は手のひらにある銅貨を乗せたまま、日本円になれ! と念じてみる。

 すると、


「おお……。元に戻ったぜ」


 なんとなんと、三四枚の銅貨が三四〇〇円になったじゃありませんか。

 内訳は千円札が三枚に一〇〇円玉が四枚。

 つまり、


 日本円→異世界の通貨


 異世界の通貨→日本円


 となったように、検証の結果、俺の【等価交換】スキルを使えばどっちの世界の通貨にも両替出来ることが証明された。

 なにこのスキル。ちょっと凄いんですけど。

 続いて財布から一万円札を取り出し、等価交換スキルを発動。

 一万札はしゅんと消え、代わりに銀色の硬貨が一枚しゅんと現れた。


「さっきと色が違うな。銀貨ってやつかな?」


 俺は屋台に戻り、


「おっちゃん、これ使える?」


 と銀色の硬貨を見せた。

 おっちゃんはちょっとだけ嫌な顔をして、


「兄ちゃん、もう銅貨はないのか? 銀貨を出されたって釣りはねぇぞ」


 と言ってきた。

 おー、やっぱり銀貨だ。

 とゆーことは、


 銅貨一枚→一〇〇円


 銀貨一枚→一〇〇〇〇円


 ってことか。

 そして俺のスキルを使えば、日本円を異世界のおカネに変えることが出来るってわけか。

 それどころか、もし異世界でおカネを稼いじゃったら日本円にもできるってことだよな。

 なにそれ。すげーんですけど。


「まずは所持金をこっちのおカネに換えておくか」


 俺は財布のおカネを等価交換スキルで両替する。

 全部で銀貨が二枚と銅貨が三四枚。

 五〇円玉や一円玉が両替されなかったということは、この国(この世界?)の最少額は銅貨ってことか。

 とりあえず屋台のおっちゃんの反応を見るに、町をぶらつく所持金としては十分だろう。


「こっちのおカネもゲットしたことだし、散歩してみますか」


 俺はポケットをじゃらじゃらさせながら、町を観光することに。

 町を囲む畑。その畑を囲む森。町を流れる小川もあり、洗濯している人たちの姿もちらほらと。


「きっと、スローライフってこんな感じなんだろうな」


 そんなことを呟きながら気ままに散策していると、市場のような広い通りに出た。

 おそらく、町で一番活気がある場所なんだろう。

 道の両端には屋台や露店商が並び、ときたま通行人が足を止めている。


「へええ。正にファンタジーって感じの通りだな」


 鎧を着こんだ冒険者っぽい男。

 ねじれた杖を持つローブ姿のお姉さん。

 なかにはネコ耳を生やした獣人の姿も。


 こうも異世界ファンタジーされてしまっては、俺のテンションは天井知らずに上がっていく。

 ぜひ彼らと――できることなら可愛いネコ耳娘なんかとお話ししてみたい。

 でも、それにはひとつだけ障害があった。


「俺の服……やっぱりこっちじゃ浮きまくってるな」

 日本の最先端をいくアウトドアスタイルは、異世界人にはさぞ奇抜な格好に映ったんだろう。


 みんな奇異の目で俺を見ているぞ。


「うん。ますは服だな。服を買おう」


 そうと決まれば服屋を探さなくては。

 服を売ってる露店商はないかな?

 そんな感じでキョロキョロしていると、


「あの……お花いりませんか?」


 不意に、後ろから声をかけられた。

 振り返ると、そこには可愛らしい一〇歳ぐらいの女の子の姿が。

 左右で瞳の色が違う。たしかオッドアイっていうんだったよな。

 オッドアイの女の子は鮮やかな色をした腰布を巻いていて、手には花かごを持っていた。


「ん、俺になにか用かな?」


 そう訊くと、女の子はおずおずと、


「ぁ……お、お花。お花……いりませんか?」


 と言ってくるのだった。

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