第2話

「むー、異世界に行くべきか、行かざるべきか」


 押入れが別の世界――異世界に繋がっている。そんな事を言っても誰も信じてくれないだろう。

 万が一、億が一にも信じてもらえたら、それはそれでばーちゃん家が日本とかUSAとか国連とかに接収されてしまう可能性が大だ。

 なぜなら本当に異世界へと繋がっていて、その異世界が地球と同じサイズだと仮定したら、それはつまり地球一個分の資源が俺の家にあるということと同義。

 国のため、世界のためとして、ばーちゃん家は権力者たちにボッシュートされてしまうに違いない。

 もし秘密を明かすにしても、本当に信頼できる相手のみにした方がいいだろう。

 となれば、選択肢は一つしかない。


「んー、押入れのことは、しばらく誰にも言わないでおくか」


 なら次は、押入れの先にある異世界に行くか、行かざるべきかだけど……幸いなことに、いまの俺は誰よりも自由な身。

 そして押入れには地球一個分の資源。

 なにより、『迷わず行けよ。行けばわかるさ』とのばーちゃんが残したメッセージ。


 となると――


「やっぱ、行くっきゃないよね。ばーちゃんも事あるごとに孫には旅をさせたい、って言ってたし」


 俺は頷き、異世界ルファルティオに行ってみることにしたのだった。


 ◇◆◇◆◇


 そして翌日。

 近所のホームセンターでアウトドア装備を買い揃えた俺は、押入れの前に立っていた。

 モンスターがいるとのことなので、念のためサバイバルナイフとかも買ってある。

 これで異世界に行く準備は整った。


「ばーちゃん、俺行ってくるよ」


 仏壇に手を合わせる。

 手紙と一緒に入っていた指輪をはめ、押入れの襖を開ける。

 一歩踏み出し、いざ異世界へ。

 押入れをくぐり、森の中へ立つ。


 試しに後ろの襖を閉めてみると、す~っと消えていった。

 次に襖よ、現れろ! と念じると、す~っと現れた。


 ばーちゃんの手紙に書かれていた通りだ。

 この押入れの襖は、見えないだけで常に俺の後ろをくっついてくるそうだ。早い話が、いつでもどこでも俺の意思で異世界へ行き来できるってことらしい。

 凄いよね、ばーちゃん家の押入れ。


「さーて、いっちょ冒険してきますか」


 俺は気合を入れ、まずは森の向こうに見える町を目指すことにした。


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