Episode15 想天空ステレオタイプ

最期の日―――PM1:40 岐阜県テレビ屋



『――――先ほどもお伝えいたしました、

 岐阜県のレンガ撲殺鬼についてのニュースですが……

 現場取材班の山さんから、生中継です。』


ガーーーーーーーーーーーーーーー

弯曲十字が、テレビの画面一杯に映し出される…


『あ、あれ、山さん!?この映像一体なんなんです………… 

 な、か、からだがかってにバババ……』


ガチャン――――――――!!!


「――――まずは、だ。

 僕が今考えてるのは…この後どうすべき、なのかダヨ。」


Voooooooooooooooooooo――――――


建物の上にそびえ立つ人間の山。その上に立つ神聖なる子供、

身長149㎝、白いマントを羽織り、金で紋様がかかれた純白のラバースーツを着用している金髪金眼の子供。(性別不明)

来日アトランティス人エンペラー・ゴールド。


「手は二つ。百賭とシルバーを殺すか、逃げて機を待つか。

 まぁ選ぶは後者だね――――――

 何故なら100m級の弯曲十字を発動させてなお、身を隠すことに成功したから。

 何故ならDDFはこの街に5個全てが揃っているから。


 フフッ、何より、四天刃“隠将“エメラルド・スペード。

 君がまだ生きている―――――」


死体の山の影からだるそうに歩きながら現る影。身長185㎝、黒紫色のシルクハット、黒紫色のトロピカルバトルジャケットを着用した緑目緑のワカメ髪褐色の男。

紫色の宝石が装飾された趣味の悪いスナイパーライフルを両手で持っているし煙草も吸ってやがる………

顔面にはX字の傷がついている。


「………」

「しかし、こんな優位な状況だというのに不愉快だ。トパーズは百賭に倒され、

 アクアマリンとルビーはカス二人に殺されるという大失態を侵した。」


洗脳兵が頭部を破壊されたアクアマリンとルビーの死体を持ってくる。

そして、ゴールドが人間の山の上から跳び、ふたりの胸の上に、ゴールドが着地。

二人の死体が破裂する。


「クーズクズクズホントクズ!あんなゴミ二人なんかにやられちゃってさ~!!」


ガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガス!!!

ゴールドが死体を執拗に踏みつけはじめる。

(その衝撃、約500kg。骨さえも粉々にするパワー)


二人の死体が原型を留めないミンチになったところで彼は、

ダルそうに自分の肩を揉むエメラルドに視線を移し睨みつけた。


「"また"仕事させちゃって悪いけどさぁ。

 残ってるやつら、全員キミが殺してくれない?

 “キミが宿敵シルバーにやってきた7年間に渡る攻擊“――――――――

 あれを利用すれば、シルバーも百賭も問題じゃあない。」

「―――フッ、安心して呉れ。

 既に始まっている。絶対正義さんもシルバーの嬢ちゃんも、

 すでにこの俺のカースアーツの術中にハマってるぜ……」

「…遊びすぎないでね。」


エメラルド・スペードが、手に持ったスナイパーライフル型を構える。

そして、ジャンプしてその場から姿を消す………


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

同時刻――――弯曲十字付近、コンビニ


コンビニの真上で百賭とシルバーが、対峙る。

下の歩道には状況に混乱しているエクサタと睦月が立っている。


「シ、シルバー――!!!」

「睦月、お前の能力は遠距離型だ!!表に姿を晒して戦うべきではない!

 良いか――――私と同じように戦おうとするな!

 お前にはお前だけの長所というモノがある!」


「………!わかった。遠距離からサポートする。」


睦月エクサタが場を離れ物陰に隠れる………

それと同時にシルバーが背後に跳びあがって百賭から距離を取る。


「クックック…」

「夜調牙…百賭…」

「シルバー、貴様も既にアトランティス人特有の波長や

 なんやらで既に認識しているだろう。

 今、この岐阜県には5つのDDFすべてがある。

 1つはこの俺。もう二つは貴様。残り二つはあのゴールドとかいうクソガキだ。」


百賭が一歩づつ近づくのと同時に、シルバーも一歩一歩後進する。

40m――――――――45m――――――――――


「フン……

 しかし貴様がこの決戦のバトルフィールドに立つのは少々予想外だったぞ。

 まさかお前がこの俺たちより早く、新潟博物館にあった

 最後のDDFを回収するとはな…

 全く、あの日、"ゴールドによる下らぬ妨害"が無ければ、

 あのDDFは我々が先に回収できたし、お前がこの戦いに参加する事も無かった…」


「妨害だと――――?」

(エクスの話によれば、奴のカースアーツの攻撃距離<リーチ>は最大20m。

 この距離なら問題ないが…)


38m――――――――34m――――――――31m――――――――


(これ以上は下がれない。この建物から落ちてしまう。)


「だが、お前がこの戦いに参加してくれてよかった事もある。

 ロンカロンカを始末してくれた事だ。

 正直言って奴の頭脳はこの俺でさえ侮れないものがあった。

 この戦いで一番の障害になると思っていたよ。

 だからよ、十分に成長する前に始末できて正直ホッとしているぜ。」


「―――――」


24m――――――――――――――――


「では、始めるか。」


百賭の頭上に、大きさ70㎝程の白金<プラチナ>と虹色の装飾で彩られた円盤がY軸回転しながら出現する。円盤の中心では、洋時計のように2本の針が回っている。


「まずは―――」


百賭が一歩前に進もうと思った瞬間、シルバーが首から黒い気の塊―――

デモニック・スカーフを放出。

ザシュウッ!!!!

黒い気の鎌で足元の床を切り裂き、下方、コンビニ店内へと素早く落下する。


「フン……距離を取り、俺様の前から姿を消したか。

 賢明な判断だ。時を記録し再生する能力。

 いくら予備動作が無いとは言っても、確実な攻撃には敵の位置の把握と

 一定の距離が必要だ。」


百賭が腕を伸ばし両手を下に向けて広げる。


「だが、こういう時のための対抗策もすでに用意している。」


その瞬間、ドンゴン轟音が鳴り響き、百賭けの下方、

シルバーが入っているコンビニのガラスがすべて割れ、地が揺れる。


それと同時に――――――――ガキンッ!!!

コンビニの壁が◇の形に切り裂かれ、中からシルバーが飛び出てくるッ!!


「床の先で粉塵爆発の記録を再生してやったが、この程度では死なんか。」


シルバーは飛び出した眼前にあった建物の壁を切り裂き、内部へと侵入する。

高層ビルの一階だ。


「屋内戦か。面白い。」


百賭が再度ディテクティブマスターを出現させシルバーの入ったビルの二階に侵入する。


「この百賭は今――――お前の位置が正確には把握できていない。

 だから正確な攻撃は出来ない………

 だが、それはお前とて同じこと。」


百賭が両腕をクロスさせると、円盤が自立行動し、百賭から離れる。

そして、シルバーが入ったビルの入り口に潜入する。


「時は再び再生される。」


瞬時、円盤の周りにリクルートスーツの男数人が出現し、手に構えていたアサルトライフルAK-69を乱射する!!!!!!!!!!


「トパーズ・クロスを倒した乱れ撃ちだ。

 室内なら跳弾も生じてさらに火力が上がる。

 そしてこの記録は最大10秒間まで再生する事が出来る。」


しかし―――――――――――


ドスッ―――――――――!!!

百賭けの脚が床から出現した黒い刃に貫かれる!!!!!!!


「なっ…」


ズボッ………


シュキキキキン!!!!!!!

百賭の足場が□の形に切り裂かれ百賭落ちる!!!!!!!!!!!


「――――なんだと、真下から……」

「クソッ、外れたか。見えないってのはやっぱやりづらいね。」


落ちる百賭の下には―――――――シルバーが立っている。


「アンタの時の再生は、確かに無敵だ。

 念じるだけで一瞬にして攻撃を発動する事が出来る。

 だが、分かりにくいだけで、予備動作はある。


 手に持った剣で相手を殺すには振るという動作が必要だ。

 手に持った銃で相手を殺すには敵に向けて引き金を引くという動作が必要だ。


 それと同じように、お前のデティクティブマスターには予備動作がある。」


シルバーが右足で百賭のデティクティブ・マスターの円盤を踏みつけている。


「時の再生の能力も時の記録能力も、この円盤を中心点として発動する。

 記録した情景の角度も円盤の向きを変える事によって調整できる。

 だから、こうやって浮いてる円盤を踏んづけてやれば、

 お前が再生した銃を持った男たちも、シュールに地の底に埋まってくれたよ。」


シルバーがデモニック・スカーフを構える。


「クックック……記憶によればその特性をエクスに話してなかった筈なのだがな。

 流石三羅偵全てを倒した女だ、この一瞬で見破るとは。」


「お前は探偵を越えすぎた―――――ここで全殺しにしてやる。」


落下途中の百賭けをデモニックスカーフが襲う、しかし―――!!!

百賭は落下中の床を蹴り飛ばし、その反動で二階天井に向かってJUMP!!!


落下中の床はシルバーに向かって蹴り飛ばされるが一瞬にして切り裂かれる。


次に百賭は2階天井についていたボルトに右手で捕まり、同時にデティクティブマスターの能力を解除。

左手に持った銃をシルバーの眉間に引き金を引く!!


「小細工ゥ!!!」


しかし弾丸は黒い刃によりあっけなく切り裂かれた。


「死ね………百賭!!!」

「死ぬ?すまんが実感が沸かんな、部下からは不死身と呼ばれているんでね。」


ズゥゥゥッゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!!!

バキッ…バキッ…

シルバーの上方から木の割れる音が鳴り響く。


「何……何の音!?これは天井から――――」

「…………」


ギギギ……………

1階天井、2階天井がひび割れて、沈みかけている。


「な――――崩れる!?馬鹿なッ!!!

 時を再生したのか!?いや、今奴はカースアーツを解除している…」


「驚いてもらえて、心から光栄だ。フッ、次は死んでみるか?」


崩れる!!!!ビル2階と3階が崩れるッ!!!!


「チッ……!!!!」


シルバー急いで近くの窓をジャンプで突き破り外へと脱出するッ!!!!


そして走ってビルから距離を取る………


「ハア………ハア………エクスの事前情報もあって、時を記録する能力の全容は大体わかったぞ。

 だがお前には、まだ隠された秘密があるようだな―――


 そして、それを見破らない限り私はやつに勝てない!」


Vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa―――――――――――――


シルバーがビルの方向に振り向いたと同時に、百賭が崩壊した天井の瓦礫から現れる。

脚の下には緑の血がついていた。睦月のアリの体液だ


(………奴は見かけたダークウォーカーを一匹残らず潰している。

 アイツのサポートの力も、やつの前では無力。

 つまり不意打ちは不可能……)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

最期の日―――PM1:44 とあるビルの2階、密封された一室。


睦月とエクサタが座っている……


「ビル入り口には、複数の蟻を配置しているし、警備も万全。

 ここならいざと言うときは窓から外に逃げれる。」


「……」

(俺やニーズのような事にはならないという事だな……)


「………ゴメン…悪い事思い出させちゃったかな。」


「……」


エクサタが首を横に振る。


「本当なら、シルバーの近くにいてやりたいんだけど……

 レンガ・ウーマンと違って百賭は頭がキレる。

 私達がいるとかえって足手まといにしかならない……」


エクサタが睦月の方を見る。


「遠距離からのサポートをしろと言っていたが、付近の蟻は全滅。

 流石は三羅偵の上に立つ最高の探偵と言ったところか……」


「……」

(睦月殿……今の貴殿は、先ほどの俺と同じだ。

 最大の仲間の死を前にして、何も出来ずにいる。

 俺にできる事は何だ……オレが、彼女やシルバー殿にできる事……)


「ん?どうしたんだ、そんなにジロジロ見つめて。」


ガッ!!!エクサタ睦月の手を握る!!!


「(/////◎△◎/////)~~~~!?なっ、ななっ、なに!?!?!?!?」


「……」

(考えても仕方がない………睦月殿、とりあえず貴殿は必ずこのエクサタが

 守り抜いて見せる………それが、ニーズやエクス殿に対する最大の敬意…)


しかし―――――――――


ピキィィィンッ!!!


「―――――――!!!エ、エクサタ君、今、玄関に誰かが……」


「………!!!」 


睦月がエクサタの掴んだ手を振りほどき目を閉じてその場にしゃがみ始める。


「い、い、い、いつまで握ってるんだ……もう……

 と、取りあえず確認だ、誰だ、誰が来たんだ………」


「………」


エクサタが足で床を数回叩いて衝撃エネルギーの塊を出現させる。


「この顔………」


「金………髪で………金色の目を………しているか?」


「いや、違う、ゴールドではないと思う。

 もしかしたら――――――――味方かも。」


「?」


「そういえばシルバーが、明日、本来の博物館襲撃決行の日の前に、

 "彼"を呼んでおくと言っていたな。」


「??????????????????????????」


「取りあえず、エクサタ君はそこで待ってて。」


「……?」


睦月が部屋から出る。エクサタもそれを追いかける。

そして、睦月の手を握ろうと手を伸ばす。


「……ついてくるんだ……でも、手は、つかまないでほしいな、

 びっくりするからさ。」


「……」

(手を握るのはダメなのか…?ニーズはオレが精神的に追い詰められている時、

 いつも手を握ってなだめてくれたが……)


睦月とエクサタが階段を使って1階まで下りる。

そして階段を降りた視線の先に―――一人の金髪の男が立っていた。

手に弁当箱サイズの包みを持っている。


「や、やっぱり…!!」

「……?知り…あいか…?」

「昨日シルバーが言ってたんだ。

 DDFが絡む闘いならとある強力な助っ人怪盗を呼びたいって。


 名は――――"怪盗ロル"」


男が2歩、3歩と歩いていく。


「金次第で他の怪盗を無線サポートで手助けする怪盗。

 表向きは陽気でフレンドリーな男だが、その実…

 己の正体に関する情報は一切明かさない慎重派。」


「私は雇われた運び屋です。

 あのロルさんにこの包みをお前たちに渡すようと頼まれてるだけの運び屋…」


互いの距離が2mになったところで男が包みを床に置き、睦月たちに背を見せる。


「故に、関わりません。

 ここで起こっている戦いにはこれ以上一切干渉しないつもりでございます。」

「それでいいです。

 あと、貴方があの弯曲十字の能力で操られていないかの証明が欲しいですね。」

「カースアーツを見せればよろしいですか?」


男が背を向けながら左手を上に向けると。

PON!

何もない場所から[?]と書かれた箱が出現した!!


「―――ありがとうございます。それで十分です。」

「さーて今日はなにがでますかな…あっと、中身は見ないんですか?」

「時間が無いので…」

「フフ、それでは、ご健闘をお祈りします。」


男がビルを出て、近くに止めてあった血まみれの車に乗車する。


それと同時に、エクサタがすぐさま2m離れた位置から

センチビートを使い、遠隔で包みを破る。

包みの中には、透明のガラス製の箱が入っていた。

透明の箱中に、翠色に輝く宝石と端末番号が書かれた紙が入っているのが見える。


「本物だ。シルバーの言っていた情報と完全一致する。」


睦月が携帯端末を取りだし、紙に描いてあった端末番号に連絡をする。


<ガチャッ…>


「―――!」(つながった……)


『フフー―――その青髪その体型、怪盗睦月さん、だな。

 シルバーから既に情報は貰ってるよ。』


「怪盗ロルさん―――ですか。」

(無気味な声だな…ボイスチェンジャーを使っているのか?)


『ああそうだ。ちょっと疑心暗鬼になっているようだから

 オレが俺であることを証明してやるぜ。


 アンタから7時の方向52㎝先には軍服と軍帽を被った男がいる。

 両手を服の中に隠していて、片足立ちをしているようだ。

 今アンタのいるビルは八階建て。中に人間はほとんどいない。』


睦月がエクサタに視線を向ける。


「――――さ、流石です。

 サポートをいただくのは、明日からとなっていましたが、

 今日からでも大丈夫でしょうか?」

『シルバーの嬢ちゃんからは前金二千五百万を支払ってもらっているから

 協力できるのは―――25時間だな。』


一時間百万円の男。


「それだけあれば十分です。」

『追跡目標は?』

「シルバーです。今シルバーは探偵王の百賭と交戦してる最中なんです。

 近くに行ってサポートしてあげないと。」

『百賭か………フッ、嬢ちゃんも大物になったもんだ。』

「……」

『まず言っておくが、俺のカースアーツ"ザ・レーダー"の能力範囲は、

 お前の側のガラスケースの中にある宝石の位置から150m。

 其れ以上離れたものはこちらからは確認できない。

 そして、御前達の近くにはシルバーも百賭もいないようだな。』

「まず、近づかなくてはいけないと。」

『そうだ、その宝石を持って、シルバー達のいる場所に向かえ。

 俺だって嬢ちゃんの事は好きだ。ここで死なれちゃあ困る。』


『――――ん?どうした、そんな暗い顔をして。』


「いえ、なんでも…」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

最期の日―――PM1:43


2階が崩壊したビルの前で百賭とシルバーが互いの間合いを計っている。


(夜調牙百賭…テレビで見るよりもずっと……印象の良い顔をしてやがる。

 誰にも好かれるようなその、笑顔。

 だがお前はどんな顔をしながら、自分の正義の為に人を殺してきた?

 どんな顔をして、私の父や母を殺してきた?

 何年の犠牲――――何人の犠牲―――。)


シルバーが路地裏に身を隠す!!


「―――――――――クックック……」


百賭が円盤を出現させる。


「円盤か、だが範囲外、25m―――――何をするつもりだ…」


百賭がポケットから黒い宝石を取り出す。


「!!ッ……それは―-――――」


DDF。


「もともと俺は10年ほど前から2つのDDFを所持していたんだ。

 カース・ミラーを報酬にDDFの捜索を依頼された後は4つかな。

 つまり俺には、4つのDDFを揃える機会があった。」


百賭が手袋越しに指をパチンと鳴らす、すると――――

その瞬間、3つのDDFが百賭の周りを飛び交う。


「なっ……!?」

「深き闇を再接続する――――繋げッ!!!」


言葉を発したと同時に百賭が手に持っていたDDFと宙に舞う3つのDDFが

黒色の輝きを放ち合体する!!!

そして―――――――ズサアアアアアアアアアアアッッ!!

シルバーの上着が何か重機のような力で引っ張られる!


「なっ……なッ!!!まさか……私の持つDDFが引っ張られているッ!?」


「DDFピースを3つ揃えた時の記録を再生した………

 俺の狙いは最初からそれだったのだ。

 貴様が新潟から持ち出し、俺が一度も触れた事のない

 そのDDFとこのデティクティブ・マスターの記録さえあれば――――――

 他の4つを所持していなくても俺は願いを叶えられるッ!!!!」


「あッ!!」


シルバーの上着のポケットから、DDFが零れ落ちる。

そして、百賭目掛けて飛んでいく。重力を無視し、ふわふわと。


「さっ、させるか……それだけはッ…!!!」


シルバーがデモニックスカーフの剣先でDDFを掴もうとする―――しかし更に引きずり込まれるッ!!


「無駄だ無駄だ、DDFの力を止める事……

 それは何者ですら成しえない事だ―――

 こうなってしまっては誰にも止められん…俺も、お前もッ!!!」


「クソォォォォォッ!!!」


シルバーが銃を構え、百賭け目掛け撃つ!!

しかし――――当たらないッ!!


「チッ……片手じゃダメかッ……

 この距離、やっぱ両腕じゃないと――――」


「さあ、あと15mだ――――その前に貴様を始末するか…

 貴様のウハウハもこれで終わりよ!」


百賭がポケットから4本の鉄杭を取りだし、右手指の間にサッとハメる。

そして腕を振り、シルバーに向かってそれを投擲する!!


「うおおおおおおおおッ!!!!」


ガンッ…!!!!!


「ん……?何の音だ……」


百賭が音の方向に視界を映すと、黒い気を纏った鉄板が自分の方に向かって飛んできているのが見えた。


「怪盗睦月の『夜を歩くもの<ダーク・ウォーカー>』!」


ボンネットの影が通り過ぎた場所から、無数の蟻が出現するッ!!


ガンッ…ガンッ…!!!!!

近くにあった二つの鉄板が光の衝撃エネルギー波に吹き飛ばされ、

百賭の上空に向かって飛んでくる!!


「『センチビート』と『夜を歩くもの<ダーク・ウォーカー>』の連携技!」


百賭がDDFの記録を解除し、DDFの欠片を回収する。


「と言う事は、奴ら……この近くに潜んでいるのか―――」


そして、地面に召喚されるアリを踏まないようジャンプし―――


「『俺の体温は-273.15度<アイアム・アブソリュート・ゼロ>』」


能力を再発動――――東結金次郎の記録で蟻を全て凍結させる―――



しかしその背後に、シルバーが立っている。


(ありがとう…二人共…)


デモニック・マフラーを装備したシルバーが襲いかかる!!!


「そんなゆるふわな攻撃で俺を殺す事は出来ん…」


シッ!!!!!!

シルバーがデモニックスカーフを制止させる。


「お前の今のその妙な落ち着き…やはり第二の能力によるものか?」

「ニィッ……」


ガンッ!!!シルバーがデティクティブマスターの円盤を吹っ飛ばす。


「今、頭の中で完全に推理できたよ、アンタのもう一つの能力。

 近距離用・装備型・爆破の能力。それが二つ目の能力。」

「思っていたよりずっと強いじゃないか……

 あのロンカロンカやレンガウーマンを倒したのもうなずける。」

「―――――。」

「最後にいちおう聞いておこう。お前、俺の仲間になる気は無いか?」

「何!?」


Vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa―――――――――――

百賭がスウっと息を吸う。


「これだけの実力者を消してしまうのはこの俺にとっても惜しい。

 その上、お前はとてもいい奴のようだからな。気に入ったよ。

 俺の正義のために働く片腕となってくれ。」

「――――断る。冗談じゃあない。」

「そういうと思ったぞ。その眼美しい。

 お前もまた、この私とは別の形の正義を持っているからな。

 だがその正義はくだらない。

 短い時間でしか効力を発揮しないその場しのぎの正義にすぎん。


 この私の永遠の絶対正義には遠く及ばない。」

「フッ…永遠だと?なんてものは存在しないね。馬鹿の信じる戯言さ。」


ブォォォォン

百賭の右背から白い気が放出される。


「――――フッ、私より年は10つも上だというのにくだらないモノの考え方をする。

 それだからこそお前の正義は絶対正義に及ばないのだ。」


白い気が、固体となり、二本の、先端に槍を付けた触手に変形する。


「ッー――――!!!出したな……ついに出したなッ…!!!

 記録を再生する能力では無い――――――――

 それは、そのエネルギーは…!!!」

「『永遠なんて存在しない』『人間には限界がある』

 馬鹿どもが好む言葉で、この俺の最も嫌う言葉だ。

 いいか、人間の持つ可能性と言う力の前には、限界という言葉は存在しない。」


左背からからも、白い気が放出される。


「服の無い時代では、台風は確実なる死を呼び込む風の悪魔と呼ばれて、

 人間の力では対抗するのは不可能と呼ばれていたが、

 時代の経過と共に人間は某風に耐えうる建造物と生き残る知恵を身に着け、

 その恐怖を亡き者とした。」


固体になる――――百賭の背から、4本の白い槍が生えてきた!!!


「人間一人一人の人生はそれぞれ形の違う理不尽な壁がある。

 理不尽な因果、理不尽な運命だ…

 人生とは、その壁を越えるために努力する闘いの記録………。

 

 フッ…私はな、今より最後の壁を破壊しに行く所存だ…

 壁の名は"死"だ…私は"死"を破壊する。」

「多重人格故に二つの能力を有するカースアーツ使い…!!

 二重能力者<デュアル>ッ!!!」


「『ホワイト・キネシス<聖なる暴力>』…

 Dead or Aliveの二つの道…貴様はDeadの方を選択したッ!!」


槍触手が伸びて、シルバーに襲い掛かる!!!!

シルバーもそれに対抗し、デモニックスカーフを発現させるッ!!!


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!

うおおおおおおおおおおおおお4つの短剣と槍が弾き合う!!!

まるで時代劇の殺陣のように!!!まるで時代劇の殺陣のように!!!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

「フフ……やはりと思ったが僅かとはいえ貴様の短剣の方が素早いか。

 なら――――――――これは…………」

百賭がデモニックスカーフと打ち合いながら槍先をシルバーの耳元へと持っていく。

そして―――その瞬間……

ドンゴンッ!!!!!!!!

爆発した!!!槍先が爆発音とともに火を噴いた!!!


(……やはり―――槍先が爆発するのか―――!!

 しかし今のはマズイ――直接は当たらなかったが、爆発音で、耳がおかしく…)


「Aieeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!」


今度は百賭がホワイト・キネシスの槍先をシルバーの腹付近に持っていき―――

ドンゴンッ!!!!!!!!

爆発で吹き飛ばす!!

シルバーの体が吹き飛び―――ビル内の廊下に投げ飛ばされるッ!!


「ガッポッ……!!!!!」

「百賭<"B"YAKKA>のBは爆裂<Burst>のBだ。」


その百賭がビル内に入ってシルバーの前に立つ。


「くっ………!!!」


シルバーが立ち上がるがその瞬間――――


ドンゴンッ!!!!!!!!

前腹の一部分が破裂し、爆発するッ!!

そしてシルバー更に後方に数十mほど吹き飛ばされるッ!!!

そして背後にあった壁を突き破り、2Fから地面に墜落する!!


「ぐおおおおおおおおおおお!!!!」

「『デティクティブ・マスター』先ほどのカースアーツによる爆発を再生した。

 コンボ成功…満点ハイスコアだッ!」


ドオオオオオオオオオーーーーーーーーーーンッッ!!!

シルバー仰向けに倒れ痙攣する。


「知と覚悟の結晶見せてもらった…だが、この俺には及ばん…

 世界最強のカースアーツ使いであるこの俺にはな…

 だが勝った!興奮もある!」


百賭走り出す!!

この走りは、2Fから飛び降り!!!

シルバーの死体を確認し、DDFを回収する事を目標とした走りだ!!!


「確信もある!!!」

「ちょ―――アンタ!!何の騒ぎ!?」


洗脳されていないおばさんが爆発音に驚いて近くのドアから出てくる、

しかし、百賭はホワイトキネシスを使ってそのおばさんの喉を一つ突き…


ドンゴン!!!!


爆裂させる!!


「ばああああああああああ」

「俺の作り上げる絶対正義の未来を信じてくれっ!!!

 ずあああああああああああああああっ!!!!」


百賭け2Fから地上に下り、シルバーの死体を確認するが、

無い!!!!!!!!!


「血痕がある―――――ビルの中に再び入ったかッ!

 まだ動けるとは……

 戦いの中で、人は何故肉体の力を限界以上に引き出せるのか…!?

 俺は知らん…!!」


百賭再びビルの中に入る!!!


「面白い………

 アドレナリンバリバリで精神が勃起している…」


ドンゴン!!!

百賭、左側の壁をホワイト・キネシスで爆破し、移動するッ!!!


「は!!!」


ドンゴン!!!

百賭、天井をホワイト・キネシスで爆破し、移動するッ!!!


「はあああああああああああ!!!!」


ガガガガガガガガガ!!!!!!!!!

百賭が走りながらビル2階の壁や天井、床を無造作に爆破していく。


「このビルそのものをぶっ壊す!

 さあどうする怪盗!!どうするシルバー!!」


瞬時―――――――――――――――――

シャキンッ!!!!!!!!!!

3本の黒い斬撃が百賭右側の壁を突き破り、百賭に襲い掛かる!!


「釣れたッ!!!デモニック・スカーフ…シルバーは2m以内!!!」


ホワイト・キネシスはデモニック・スカーフに対し、

スピード面でやや遅れをとるが、防御に徹していればシルバーの斬撃を総べて受け止める事など造作も無い。

そしてその槍先は、刺した対象を確実に爆裂させるほどの威力を持つ。


「壁を破壊した。さぁ出てこいシルバー。」


右側の壁を破壊したが―――シルバーの姿は見えない。

上方向を見ると、◇の形の穴が開いていた。


「かくれんぼか―――フフ、百賭10歳、初めての体験だ。

 だが、その穴の中に無鉄砲に突っ込むのは、賢者のやり方では無い。」


百賭が爪先立ちになり、一切の音を出さず2F廊下に脱出する。


(最初にビルに入った時、脚に攻撃を受けてしまったのは、

 立ち止まっていたからだ…

 なら音を出さず、忍者のように走り抜けていれば、

 貴様はこの俺を確実に見失う………)


百賭が階段を使い、3Fまで駆け上がる。

しかし―――――


天井から3本の黒い斬撃が飛び出してくる。


「何!」


百賭、ローリングでそれを回避する!!


「なんだ、今の正確な攻撃は…」


百賭立ち上がるが――――――――

次は下側から斬撃が襲いかかる!!


「ぬけぬけッ!!!!」


百賭ジャンプして指の力で天井を掴むことによって攻撃を回避する――――


「――――正確すぎる攻撃だ!!

 奴は俺の位置を正確に把握している!しかしどうやって……」


斜め上後ろから黒い斬撃が3本襲い掛かってくる!!!

しかし百賭それをガードする!!


「わからん、わからないが―――――」


百賭辺り一帯に槍を突き刺し、爆破させまくるッ!!!!

天井も!!!床も、壁も、すべて崩れ落ちるッ!!!


「さあ出てこい!!俺の前に姿を見せろッ!!!」


百賭が落下しながら、正面前方上、3m先に見える影を確認する。

シルバーだ。4Fの廊下に立って、右手に電話を持ち―――誰かと通話している。


「…………通話、誰と通話している?睦月か?

 だが奴の蟻は何処にも見えない…」

「予想通り。流石ロルと言ったところか、

 遠隔からこの私に奴の正確な位置を教えてくれた…

 そして今奴は、爆破の反動で槍の攻撃をする事が出来ない…」

「距離3m、デモニック・スカーフの完全攻撃範囲外。

 御前は俺に攻撃することは出来ない。

 だが、奴の自信に満ちたあの顔はなんだ―-――」

「Demonic Scarf-デモニック・スカーフ-」


シルバーがデモニックスカーフの触手を操作し、

4本の触手を百賭けに向けて振り落すッ!!!


「いや…マズい!!!これはッ!!!」


百賭が一歩身を引き、頭を右腕でガードする。

しかし瞬間―――――――自分の右腕が自分の体から離れ宙に舞っていた。


「ク―――――――」

「プラス『ストーン・トラベル・ブレード』。

 水道の水を石化させた刃をデモニックスカーフの剣先に装着し、

 リーチを伸ばした。」


デモニックスカーフの黒い剣に、灰色の剣がくっついていた。


「『デティクティブ・マスター』!!!」

「そしてッ!!!!」


百賭がデティクティブ・マスターを出現させるより前に、

シルバーが3Fの天井を蹴り、百賭に向かってジャンプする!!

そして二人は密着する!!!


「こうやって密着すれば、お前の『デティクティブ・マスター』と

 『ホワイト・キネシスの爆破』は無力化できる。

 密着している私を範囲攻撃で倒すという事は

 自分自身をも倒してしまう事になるからな…

 あの弯曲十字のゴールドが生き残っている状況で、

 深手を負う事は貴様だって避けたいだろう。」

「時を再生する――――死ね、シルバー」


瞬時、記録の再生によって現れた男が、

手に持った槍でシルバーと百賭の胴体を貫いた!!!!!


「なッ………馬鹿なッ……こんな事ッ!!!

 貴様も大ダメージだぞ!!!」

「確かにダメージは同じだ、だが精神状態はどうかな?

 俺は覚悟して今の攻撃を受けたので、すぐに次の攻撃に移れるが、

 お前には一瞬の精神の戸惑いがあるッ!!!」


百賭とシルバーの密着状態が解除され、二人の間に1m程の距離が生まれる!!


「たかが一瞬!!されど一瞬!!!

 『ホワイト・キネシス』!!俺の方が速い!!!」

「『ストーン・トラベル』ッ!!奴の瞳の粘膜を石化しろォォォォーー!!!」


百賭の瞳の粘膜が石化される!!


「こんなものは意味が無い―――私は視覚だけに頼らない………」

「そういうと思ったよ、だがあの時と同じだ……

 あの時のロンカロンカのように、貴様は一瞬だけ怯んでいるッ!!!!」


シルバーが百賭を蹴り飛ばすッ!!


「カッ……ぐおっ!!!!」


シルバーと百賭が、2Fまで落下する。


「ストーン・トラベル、傷口を止血する。」


シルバーが、倒れている百賭けに向かって歩いていく。


「貴様の能力、時の記録と爆破の槍…

 どうやら二つ同時には発動するのは難しいらしいな。

 能力の発動に必要なリソースが足りていないと言ったところか。

 同時に発動させたもそれぞれ50%程度の力しか出せない」

「…………デティクティブ・マスター時を再生……」


百賭が立ち上がり自分の上方に円盤を出現させる―――

しかしその瞬間シルバーが銃を使って円盤を弾き飛ばす!!!


「―――――お前、私の両親を殺した、夜調牙百賭では無いな。」


「フッ、何を根拠に……」


「その体は確かに、夜調牙百賭そのものだ。

 だが、その肉体の中に入っている精神は、百賭そのものでは無い。


 両親を貴様に殺されてから、私はお前の事を必死になって調べていた。

 活躍やインタビュー、生まれまでを、徹底的にな………。

 そして一つだけ、分かった事がある………

 それは、私の両親を殺した数ヶ月後―――

 『お前の性格がまるで別人のように変化している』という事だ。」


「………」


「そして今日、実際にお前に会って、エクスの発言を聞いて、

 お前が二重能力者<デュアル>だと知って、

 お前の数々の"矛盾"した発言を聞いて、私の一つの推理は確信へと変わった。

 『今のお前は、私の両親を殺した後、百賭自身が作りだした――――

  新たなる人格』だ!」


「フフッ…フフフフッ……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

24年前、シルバーが誕生する4年ほど前。

怪盗組織「ウィザーズ」と探偵協会「マッレウス・マレフィカルム」の対立が、

今よりも激しかった昭和の時代。

その少女は、天才探偵を生み出す研究の過程で、この世界に生み出された。


その少女は、とても高い身体能力と、知能を持っていたが、

精神力が弱いという致命的障害があったため、

研究者たちからは失敗作と呼ばれていた。


しかし、精神が弱くとも、その高い知能と身体能力、そして強い正義感を持って、

怪盗に敵対する探偵として生きる道を選んだ。

10歳を迎える時には、彼女は、同僚から、若き天才探偵と呼ばれるまでになっていた。


将来有望、いずれ未来を変える少女、彼女を見る誰もがそうだと思っていた。


だが!転機が訪れ、彼女の心はガラスのように砕けてしまう!!!!

初めて怪盗を殺した―――あの雨の夜!!!


「これまで、一度も思った事は無かった。疑おうとも思わなかった。

 でも―――今初めて疑問に思ったんだ………」


「本当の正義……『絶対正義』は、何処にあるんだろう…

 駄目だ―――私には見つけられない―――!!」


当時マレフィカルムには、強力な二重能力者を生み出すための、

とある闇の研究装置があった。

人間に新たなる人格を後付けする、実験中の研究装置だ。

百賭はそれで、自分自身で性格を設定した新たなる人格を自分に植え付けた―――

『全ての人間に好まれるような絶対正義』『決して絶望しない強い精神力』

『誰よりも正義感の強い心の持ち主』。

新たなる人格の名は―――エンゲル<天使>。


百賭は、肉体の主導権を、新たなる人格エンゲルに渡し、

自分自身は心の中で閉じこもる事に徹した。


………余談だが、マレフィカルムの人格を植え付ける実験装置は、

失敗作とされていた。

人間の精神学の研究が進んでいない遥か昔に作られた装置であった為、

新たなる人格の性格が極端になりすぎてしまうからだ。


案の定、エンゲルも暴走した。

特に、『全ての人間に好まれるような絶対正義』という設定が

暴走を起こした。


彼女は、自分自身を最高の正義のシンボルとするためなら、

あらゆる手段を択ばない人格となる。

マッチポンプ、反対派の皆殺し、金を使った偏向報道。


当時の日本マレフィカルムの探偵王は、急成長するエンゲルの人格を恐れる!!


「この無能共が!この腐れ切った正義をいつまで続ける気だ!?

 俺の絶対正義に反対するというのか!?

 怪盗との対立をいつまで続ける気だ!?」

「何が絶対正義だ!!!この俺たちはそんなもの絶対に認めない!!1」

「ならばお前らを皆殺しにすれば俺は絶対正義だあああああああああああ!!!」


彼女は自らの反対派を総べて皆殺しにし、

三羅偵と新生マレフィカルムを作り上げ、乱世探偵冥王としての日本を統一する。


そして―――――――-------------


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――PM1:52 


「本当なら、お前の心の中に閉じこもっている本当の百賭を、

 引きずり出してやりたい。

 私の前に引きずりだし、謝罪を求めたい。

 だが―――どうあがいても出てこないようだな。


 なら、仕方がない。」


シルバーが歩き出す。

二人の距離――――約2.5m


「二つの道があり、お前にはうちひとつを選ぶ権利がある。

 ここで惨めに死に果てるか、もしくは手足を捥がれ、

 肉体的に再起不能の状態になって生き延びるか――――」


シルバーが、百賭を見おろし、眉間に向かってリボルバーの銃口を構える。


「Dead or クソAlive。好きな方を選びな。」


Vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa


VAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa


VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


| / . ∧.  . ∧.  . ∧.  . ∧.  . ∧.  . ∧.  . ∧.  . ∧.  . ∧.  

|/  /-ヘ、 /-ヘ、 /-ヘ、 /-ヘ、 /-ヘ、 /-ヘ、 /-ヘ、 /-ヘ、 /-ヘ、 


「『ホワイト・キネシス……』奴を爆破―-――!

 うう!!!!!!!!!!」


「!?えっ―――――」


百賭がホワイト・キネシスを出現させた瞬間、

彼女の腹が何か銃弾のようなもので撃ち抜かれる!!!


「馬鹿な―――私は、まだリボルバーの引き金を引いていない!!」


風を切る音が聞こえる!!!


「ついに来たか―――フン、漁夫の利を得る為、

 ここで私たち二人を始末するつもりだな―――」


シルバーがデモニックマフラーを出現させる―――

しかし同時にシルバーの右足が撃ち抜かれる!!!


「なっ、じゅ、銃弾か―――!?

 馬鹿な―――――――どこから狙撃しているというのだ!?」

「エンペラー・ゴールド……そして、四天刃、最後の一人―――――」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――PM1:52 岐阜県、シルバー達のいる場所から300m離れたビルの屋上。


エメラルド・スペードが、スナイパーライフルを構えている。


「見える―――見えるぜ―――

 建物の中にいるから目で見ることは出来ないが手に取るように見える。

 シルバーの嬢ちゃんは今、発射した銃弾の軌道を曲げる能力を持つ、

 『ビショップ・オブ・ヘルスナイパー』の銃弾で足を打ち抜かれたようだ。」


エメラルド・スペードにやりと笑う。


「さて、暗殺だ。全員、この場で始末させてもらうとしよう。

 そしてゴッフォーン様の悲願を………」


引き金を―――引く


「達成させてもらうぜっ!!!」


銃弾が発射されるッ!!!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

同時刻―――――ビル内2Fのとある部屋


重症の百賭とシルバーが、銃撃を警戒している。


「フフ…まったくずるがしこい奴だ。

 弾の軌道を曲げて遠距離からの暗殺を狙うとはな…」


「………クッ……」


「だがこれは、お前をここで倒す絶好のチャンス。

 さぁ、戦いを続けようではないか。」


「くそお…!!」



――――――――――――――――――――――――――――――――つづく。



―――――――――――――岐阜市でのDDF争奪戦


探偵協会           DDFピース所持数―――――1

シルバー/睦月/エクサタ   DDFピース所持数―――――2

セクンダー・グラン      DDFピース所持数―――――2








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