Episode14 ロスト・マイ・ハート&キャッチ・マイ・ドリーム
電車に乗る。 時間は分からないが、おそらく深夜。
頭が真っ白になっていたので、此処がどこの駅なのか、この電車が何処へ向かっているのか、そんなことは考えてはいなかった。ただ電車に乗りたい、という思いだけが頭の中にあった。
電車が走り出す。
中には誰もいなかったので、とりあえず長座席の上で横になり、すぐに目を瞑った。
その状態のまま、15分ほど電車に揺られる。車内はクーラーが効きすぎていて寒かったが、頭が真っ白になっていたので私は動かなかった。
「――――私の、私のこれまでの人生って、一体なんだったんだろう。」
無意識に、感情的な言葉が口から漏れ出してしまう。
何時からこんな人生の敗北者の様な言葉を吐けるようになってしまったんだろう――――
私は完璧だった。人として完璧な生を歩む者だった。高等な家柄の下に生まれながらにして、親に頼らず、あらゆる努力と善行を励み、常に成績はTOPクラス。それ故に最強の小学、最強の中学、最強の高校、最強の大学という最強の道を歩み、友人兄弟たちに留まらず親からも尊敬されていて、友達も沢山いた。18歳にして探偵協会の一員となり、多くの人を救うという正義の道を歩むはずだった。
それなのになぜ、逃げるように行き先のわからない電車に乗っているんだ?なぜ、人生のドン底に落ちてしまったんだ?
――――竜になってしまったからだ。探偵協会の本部で妙な鏡を見せられ、私は人ならざる力を与えられ、化物になってしまった。そして、抗えぬ食人欲求に敗北し、自らの家族を全て食い殺してしまった………。
かつてお父様が口癖のように言っていた台詞がある。「全ての過程は結果として自分に返ってくる。そう、努力というものは、すればするほど未来の自分をより良い方向に導くのだ」。私もそう思う。実にそう思っていた。因果応報・因中有果。だからこそ、私は私なりに、自分が自分として生きる時間を全て努力の為に捧げ、誰よりも正しく生きていたのだ。
しかしその結果は誰も体験したことが無いんじゃないかと思う程に辛く、残酷で、グロテスクで――
電車が停車する。どこかの駅に着いたのだろうか?どうでもいい。
しばらくこうしていたい。何も、したくない。
このまま電車に揺られて――――
…いや、誰かが電車に乗ってくる。足音が軽い、5、6歳ほどの子供か?
「おはよう御座います」
高くて愛想のよい声が私に向かって放たれた。
無視しようかと思ったが、私の"食欲"がいつ"解放"されるかがわからない。
とりあえず、別の車両に移動するため、身を起こし席を立つ。
「――――――――――!!」
しかし、席を立ったその瞬間、頭の中が真っ白になり、勢いよく長座席の上に倒れてしまう。
そう、疑問に思ったのだ、今やるべき行動が、本当に正しいのかどうか。自分の考えが本当に正しいのかどうか。
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『トラウマ』―――
肉体的、または精神的ショックの影響で、心に深い傷を負ってしまうこと。
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15年以上の努力、私の今までの人生の9割以上を捧げたの最高の努力、万人にも認められていた努力、その努力の結果が最悪だった故に私の頭はおかしくなっていた。
そう、学習してしまったのだ―――「考える事に意味はない。」「努力には何の意味は無い。」「自分のやる事は必ず失敗する。」「何も考えるな。」と。そして何かを考えて行動しようとする度に、私の頭は白く染まっていく。
もはや、自分で何かを考え、行動するという事は出来なくなっていた。
人間のもつ唯一にして最大の力。それを自らの意思で進むべき道を選択する事とするならば、考えるという事を捨てた私はもう人間では無いのだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
考えてもどうしようもないのだ。
考えても考えても、私の人生は悪い方向に向かっていく。
いくら前向きに生きていようが、目の前の希望に縋り付こうとしようが……
どうしようもない理不尽な絶望を叩きつけられて、狂わされる。
そしてその絶望の果てにあるものは――――――生命の終り。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして、絶望の果ては、今、眼前に迫っている。
血の海。死臭。呻き声。
死に物狂いでアクアマリン・クラブとルビー・ハートを倒したのにも関わらず、私達は結局何も得られなかった。
…4年前、家族を食い殺した同時に比べて、私、ニーズエルの心はとても穏やかになっていた。
エクサタ君、アルギュロス様、エクスさん………みんな。
そして、シルバーに睦月ちゃん………数々の出会いと、数々の交流で再び人の心というモノを取り戻しつつあったのを心で実感していた………
第二の人生が、始まるのだと、そう、確信していた。
だからこそ、再度、考えるという事に立ち向かってみようと思った。DDFを手に入れて、人間になろうという、前向きな夢だって持った。今回の事だって、しっかりと思考し作戦を立てて行動しようと思った。
でも、またダメだったんだ。フフ―――やっぱり……私……
「"考える"のが、苦手だなぁ…」
肩が小刻みに震える。わかるよ、もうどうしようもないって事は。もう、とり仕返しのつかない状況に陥ってるという事は。
私がボロボロなのは言うまでもないし、エクサタ君は頭を破壊されない限り不死身とはいえ、胴体を破壊されて、まだ歩けるまでには時間がかかる。
『何処にいる!!どのビルだ!!!』
「わ、わからない―――無我夢中で逃げたから―――……
と、取りあえず早く来てくれ!!
俺は兎も角、このままではニーズが……!!」
エクサタ君が私の携帯端末を使ってシルバーに助けを求めている。だけど、"アイツ"がここを出てもう一分は経過している……つまり残り時間は、もう二分も無い。間に合うかな?間にあったら、いいな……
〈ピッ!〉
「―――ニーズ……シルバー殿達が、来てくれるって―――
俺達……きっと……助かる……」
エクサタ君が、この私に近づいてくる。宥めるように、この私の右足に触れる。
しかし、その手は白く体温が感じられなかった。
「でも……もし、もしも、万が一――――
もしもシルバー殿達の救助が間に合わないような事があったら……
その時は――――君ひとりだけを死なせはしない。
俺も一緒に天国に同伴してやる……」
彼が目を逸らしている。奥歯をガチガチと鳴らしている。
ああ、そうか……そうだったのか――――
その表情だけで悟ったよ。私達、もう助からないんだ。
きっと、さっきの通話で絶望的な答えが返ってきたんだ。
嗚呼なんなんだよ……―――!こんな"気持ち"は初めてだ!
家族を殺した時も、この戦いで手足が捥がれようと、こんな事は思わなかった。だって、どんな絶望の最中でも、希望を持てば、立ち向かっていれば、必ず最期には救われる、そう思いながら生きてきた!でも、それは妄想だったんだね。現実から目をそむけていただけだったんだね!
(全ての元凶は私だ。私はこれ以上、生きるべきではない。)
家族のみんなやエクサタ君が、なんでこんな残酷な結末を迎えてしまったのか?考えてみればその答えは単純明快であった。
"私"が―――――――いたから。"私"が―――――――頑張ったから。
ようやく自分の正体に気付いたよ。はじめから人間なんかじゃなかったんだね、そして、化物ですらない。もっとたちの悪い何か―――害悪。存在悪。不幸を振りまく災害。やっぱり、あの時、あの夜に死んでおけばよかったんだ…!!僅かな希望に縋らず、絶望に落ちていればよかったんだ………!
「………ニーズ、コワイのか……
震えているよ―――でも、大丈夫、きっと、シルバー……殿が……
だから、安心するんだ。」
ああ、辛いよ。貴方の優しさが、とても辛い。今、貴方を殺しているのは、この私なんだから。貴方は何も悪くない。貴方がこんなことに巻き込まれているのは貴方の責任じゃない。貴方だけには、死んでほしくない……!!
今、私には一つだけ、彼を助ける事の出来る名案がある。私は確実に死んでしまうけど……確実ではないけど―――彼が生き残れる可能性を生み出す名案だ。
でも、私の考えの先に、希望は無い。何の努力を仕様がいつも失敗してしまう。それでも、実行するべきなの…?何もしない方が、いいんじゃないかな……?
――――…………本当に、そうなのかな………本当にいいのかな……
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「――――化物?貴様と一緒にするなよ…
ニーズエルは人間だ」
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………エクスさん。
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「不死身の人体改造をされてたあの地獄のような日々――――
あの日々から俺を救いだしてくれたのはキミだった……
貴方は俺にとっての太陽だったんだ……」
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………エクサタ君。
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「お主が人間だろうと、化物だろうと、ワシにはそんなものは関係ないさ。
-――どうだ、ワシと一緒に、来る気は無いかのう?
その力を、お主自身でうまくコントロールできるようにしてやるぞ。」
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………アルギュロス様。
―――フフッ……私も往生際が悪いな。……自分の意思を肯定するような言葉ばかり思い出して――
もう私の肉体はほとんど死んでいるけど、まだ能力だけは使えるな……
人間にはもうなれないのかもしれないけど、最期に残されたこの力で、どこまでも人間らしく自らの意思で生きてやろう。
ただ、時が過ぎるのを待つだけなんて、私らしいやり方じゃあない……
『ドラゴニック・エンゲージ』…この私の運命に纏わりつく、忌々しい力。――――最後にして最初だが、お前に会えたことを喜んでやる。喜んで、お前の力を借りてやる!!
ニーズエルが、竜の力を開放し、背中から尻尾を出現させる。
「ニーズ………?」
「エクサタ君、欠けた腹部と内臓の再生を再開してよ……
まだ、希望は残っている――――」
「………ッ!希望…?
ニーズ、言っておくが…腹部の完全再生には、30分ほどの時間が必要だ。
それに、今は、血と肉が足りなくて、まともに立つ事すら出来ないんだ。
だから今はシルバー殿を信じてここで待機するべきなんだ………!」
「ハァ……ハァ……目を閉じて。」
ニーズエルが自らの腹の穴に尻尾を突き刺し、水平に切り払った。そして、水平に切り払った腹を開き、内臓を露出させる。
「あ―――――――うっ……ああッ……ニーズ!?」
「目を閉じてって言ったよね!!!エクサタ君は黙って目を閉じていればいいの!!!」
まずニーズエルが第一に思った事は、思ったより痛みが少ないという事だ。同時に、痛みを感じる事ができ無い程、自分が死んでいるという事を再認識した。
そして、第二に思った事、それはこの次に行う"事柄"で痛みが発生してほしくないという事だ。
(エクサタ君は今、内臓を失って、まともに動けない状態にある。
肉体の再生にも時間がかかる。
だったら、私の内臓を移植させ、エクサタ君の体と合体させれば――――)
彼女は次に、自らの尾を内臓の隙間に装入し、内臓を持ち上げる。そして内臓の先っぽの部分を能力で生やした竜の翼で切断しちぎり取る。
「う――――――――――――ああっ……」
彼女の祈りは届かず、それは激痛であった。
「がああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!」
「ニーズ………!!やめろっ…!!やめてくれっ……!!
俺も、君もッ……もう助からないんだッ……!!
だから、さいごはせめてっ二人いっしょに――――」
「あはっあははははっ……
やっぱり、やっぱり……シルバーは………来ないんだ――――」
持ち上げた内臓を、エクサタの腹に開いた風穴の中まで移す。
「エクサタ君、貴方が、あのビルの上で言ってくれたこと。
私がいたから、貴方が救われたって――――
あはは!あれ、私もなんだ。私も、貴方と出会ってとても救われた…
命に代えても、貴方を救いたいと思う程に……」
エクサタの腹が、ニーズの内臓を取りこみ、再生する。しかし、彼は泣いていた。
「残酷すぎるッ……こんなこと残酷すぎるよッ……
俺にとっての最期の希望は、貴方を一人ぼっちで逝かせない事なのに…!
貴方にとっても誰かが最後までそばにいる事が最後の希望の筈なのに…!」
エクサタが立ち上がる、そして、ニーズを担ごうと試みる。
「―――――ッ……アアッ!!
駄目っ……私は置いて行って!!もう時間が無い!!
私を担いでここから出る事なんて出来ないよ!!」
「嫌だッ!!俺は、一人では生きていけない――――
俺の人生は、貴方の人生だったんだ―――」
「違う、私は確実に死ぬけど、貴方にはまだ希望がある…
私がいなくても、貴方は生きていける…」
ニーズエルが、翼でエクサタを弾き飛ばす。
地に堕ち、地べたにうつぶせになって倒れる。
「それでも嫌ならさ、私の夢を貴方に託すというのは、どうかな?」
「あっ……」
「私の事を本当に思ってくれているのなら、
私の心を本当に救おうと思ってくれているのなら、ここから生きて帰って、
私の"出来なかったこと"を成し遂げてほしい……
シルバー達の事を手伝ってあげてDDFを滅ぼすという願いを叶え、
エクスさんやアルギュロス様の仇を討ってほしい――――――
それできっと、この私の心は救われる。
貴方がここで死ぬ事よりずっと、救われると思う――――――」
「卑怯だ―――卑怯だよ――――そんな事……」
「"人間"らしい、でしょ?」
エクサタがニーズエルに背後を見せる。
「わかったよ、どうしてもこの俺に行けと言うんだね…!
どうしても君をここに置いて行けと言うんだね…!」
「――――さようなら、エクサタ君。」
エクサタ君、貴方に会えて本当に良かった
どうか、生き残って――――
エクサタが体を引きずりながら部屋を脱出する、そして、部屋には、翼と尾が生えた、両腕と片足、片目の無い少女だけが残される。
――――ふふ、こんなでも、まだ、死なないんだ。最後、すごいカッコつけちゃったな、人間らしかったかな…?
でもね、ホントはそうじゃないんだよ。私って、とても弱いんだ。一人で死ぬのがとても、寂しいの……
アハハ、やっぱり、エクサタ君と最期を共にした方がよかったかな…?
まだ、やりたい事、いろいろあったな…アハハ―――やっぱり…辛いなあ……
「死にたくない………死にたくないよォ……
なんで私だけこんなつらい目に―――なんで私なんか生まれてしまったの……
やだよ、こんな死に方……」
もう何も見えない。けど、自分が今がむしゃらに泣いているという事だけは、ハッキリとわかる。
何度も考えた。もし、私が、探偵協会に行かず、カース・アーツの力を手に入れてなかったら、どうなっていたんだろうかってね……。
普通の会社で普通の仕事をして、素敵な誰かと結ばれ結婚して、子供もたくさんできて、お婆ちゃんになって、孫を抱いて―――――
「一人ぼっちにしないでよ――――」
そして――――"みんな"に見守られて幸せな最期を迎えていたのかな?
<ドオオオオオン!!!ドンゴン!!!>
ー―――爆発音?上の階から、何かが崩れる音が聞こえる。もう、時間なんだ…。ねぇ、もうちょっとだけ待ってよ……
本当にもう、駄目なの?本当に、助からないの…?こんなに苦しんだんだから、こんなに頑張ったんだから、最後の最後は救われてもいいでしょ…ねぇ…!!
<ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!>
嫌だ!!怖い!!やめてッ……死にたくないッ……こんな音、聞きたくない――――
<グサッ……グサッ……プツンッ…>
はは、はははは…
耳と鼻を潰した。これで、何も見えない、聞こえない、臭わない…これで、何も怖くない―――……
そう、私は今、無音の果てなき暗闇の中にいる――――私の気分を害するものは、もうどこにも存在しない。
――――――……みんな、どうなったんだろう。
私の最後の案は、ちゃんと上手くいったのかな?エクサタ君はここを脱出できたかな?もしそうならさ、私の努力が生まれて初めて報われたって事になるよね?
でも、私の考える事って、いつも失敗するからなぁ。
いや――――――信じよう。人間らしく、信じてみよう。
彼がここを出て救われたという事を、信じてみよう。そうであって欲しいと、祈ってみようと思う。
………エクサタ君、シルバー、睦月ちゃん。どうか死なないでね………そして…。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最期の日―――PM0:54 ニーズエルとエクサタが隠れていたビル内。1F正面玄関。
トコン……トコン………
エクサタが、負傷した体を必死に引き摺って、出口に向かっている。
脱出まであと10m――――8m―――――6m―――――――――――
(ニーズ……貴方が、それを望むというのなら……
オレが生きる事を望むというのなら――――)
ドオオオオオン!!!ドンゴン!!!
上方から爆発音が響く!!!そう…タイムオーバー!!
ゴールドの言っていた、3分のタイムリミットが、今、終わりを告げたのだ!!
愛する女に対する未練がまだ残っているエクサタが……背後を振り返る。
「あ、あああああ………!!!」
(ニーズ―――嫌だ―――嫌だ!!あなたの最後がこんな結末だなんて!
崩れた瓦礫に潰され、グチャグチャになって貴方が死んでしまうなんて―――
でも、それでも振り返るなと言うのだな―――!!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
残された男は脚に哀しみを乗せて一歩一歩進んでいく。
高鳴る心臓の鼓動を右手で抑え、涙を流して一歩を踏みしめる。
それこそが、彼女の意思なのだから――――
だがしかし!!
ダッ………ダッ………
ビルの中から、無数の足音が聞こえる。
ゴールドの洗脳兵達だ。
『ニーズエルが助けてほしいって叫んでるヨ、戻らないのカイ?』
『愛する女を捨ててまで惜しい命なのかい?男として最低だなァ。』
『最後ぐらい一緒にいてやれよ、フフフフフ………』
『あの女が綺麗に死ねると思うなよ!!
ニーズは絶望の最中、一人ぼっちで瓦礫に潰されぐちゃぐちゃになって死ぬ!
トマトジュースのように血を吹き出し、目玉は飛び出て!!
潰れたカエルのようになる!!そしてウジ虫とゴキブリにその死体をむさぼりつくされるのだ!!』
「…………ッ……」
『お前は結局何も出来なかった、何の価値も無い男だ!!』
『そんなズタズタの心で外に出たって、お前は助からない。
哀しみで心が腐れ果て、自殺するのがオチだろうな!!』
『どーせお先真っ暗なんだからここで死んでなって!!死に時は今だ!!』
『諦めるな――――!!!頑張れ!!!今から戻れば彼女は助かる!!!』
「クウウッッッーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
背後を振り向いたその瞬間、飛びついてくる!!ゴールドの洗脳兵たちが!!
「グ―――――!!!あああああ!!!」
背後にステップしたが駄目だ、体を掴まれた!!!
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
「『石の旅<ストーン・トラベル>ッ!!』
―――――そいつらの目の表面の水分を石化しろ!」
「っ―――――」
『何っ…!?う―――――ぐわあッ!!!な、何も見えんぞ!!!』
シルバーだ、シーフ・シルバーが来てくれたッ!!
視界を失って、エクサタの服を掴んでいた洗脳兵たちが怯み、エクサタが拘束から脱出する。
しかしズゥゥゥゥン!!!―――――丁度、上方から、大きな瓦礫がエクサタ目掛けて落下してくる。
「エクサタッ!!掴まれッ!!」
「あっ――――!!」
シルバーが、エクサタの腕をつかみ、増呪酒&在日アトランティスパワーで後ろに引っ張り上げる。
ガララララララララーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!
崩れゆくビルの崩壊に巻き込まれないよう、二人が必死に走り抜ける。
そしてビルの崩壊が収まった……
「ハァ……ハァ……何とか、危機一髪ってところね……」
『ク――――――クッククク!!!!』
シルバーたちの目の前に、洗脳されたオウムが飛び交う。
『お前のカースアーツは、視界に入る何かを石化させる能力――――
そして僕のカースアーツは、視界に入れた者をすべて操ってしまう能力。
フッフッフ、見る能力と見せる能力。
やはり因縁だね。』
「私とお前の能力が対になってるとでも言いたいのか?
フン、それは最低の名誉だね。
初めて会ったよ、それほどまでに人の命を冒涜するようなクソ能力には。」
『フフ、それもあるが、それだけでは無い。
まぁいい、いずれお前は気づくだろう―――――
自分の運命の愚かさに、そして、この私の偉大さに――――』
オウムが天に向かって舞う。
『フフハハハ!!待っているぞ、3500年の積年の恨みを晴らせる時を!!
お前をこの手で直接八つ裂きにできる時を!!フハハハハ!!!』
オウム跳んでどこかに消える。
「フン――――消えたか。"あいつ"程じゃないが、
こんなに誰かを殺したいと思ったのは久々だよ――――
無関係の人間を何人も巻き込みやがって……」
シルバーうつ伏せになっているエクサタの方に振り向く。
「血の跡からお前のいるビルを探せてよかった……
このあたりの蟻は全部洗脳された奴らに潰されていたようだからな。
しかし、この場所からは早く移動しなきゃ……
レンガ・ウーマンがこの辺りで無差別の殺戮を行っているからね………
三羅偵だ、策も無しに勝てるような相手じゃない。
-―――エクサタ、一人で立てるか?」
「……」
エクサタ小さく頷き、シルバーの顔を見る。
そして、差しのべられた小さな褐色の手を掴もうとするが………
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『常識とは、プライドを殺す剣<つるぎ>だよ』
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「ッ…!?アアアアアアアアッ!!!」
トラウマのフラッシュバック!!
シルバーとゴールドの顔が重なり恐怖で後ずさる!!!
「――…?どうした、もしかして、新手のカースアーツ使いがいるのか……!?」
(なんで、睦月殿が一緒じゃないんだ?なんで一人で行動してるんだ?
目の前にいるシルバー殿は、ゴールドじゃないのか……!)
「ハァハァ……『センチビート』………」
エクサタが、つま先で地面を3度叩く、すると叩いた部分が黄色に光りはじめる。
そして光は3つに割れ、地面を高速で這って、シルバーの周りを囲む。
「…」
「……エ、エクサタッ…!?ど、どうした……!?」
「ウ――――ウオオオオオ!!!!」
エクサタ攻撃を開始するしかし!!
「待って!!!」
「――――――!?」
二人の間に青髪の女が割り込む!!!
睦月だ、カース・アーツ『ダーク・ウォーカー』を操る、怪盗睦月――――!!
「ま、待ってくれ、エクサタ君!!
なんでシルバーを攻撃を攻撃する必要があるんだ!?」
「―――ッ!(睦月殿ッ…!?)」
「む、睦月、私の命令があるまで隠れてろって言っただろ!!」
「で、でも、心配だったんだ。
ビルから出たのはエクサタ君だけで、ニーズの姿が見えないじゃないか……
それに、エクサタ君、何かすごくつらそうなそぶりを見せてたから……
話を聞こうと……」
「―――――――――――!!!!」
「―――!そ、そういえば……」
センチビートの能力が解除される――――
そして、睦月がエクサタに向かって走る。
「――――!!―――!!」
「エ、エクサタ君、どうなったの!?ニーズは、ニーズは……!?」
「そうだエクサタ、我々は今、協力して行動している。
だから、お前には私達に何があったのかを、説明する義務がある。」
「―――!あ―――――――」
エクサタが頭を抱えその場にしゃがみ始める。
「エ、エクサタ君?」
そして――――――――
「があああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
錯乱。悶絶。狂い叫ぶ。
怪盗 ニーズエル・E・G・アルカンステル――――――――――――― 死亡。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最期の日―――PM1:21 弯曲十字付近・無人のビルの屋上。
ニーズエルの死を察知した2人とエクサタは、
地上で暴れているというレンガ・ウーマンに見つかる前に、
黒い雲に覆われた空の下、この無人ビルの屋上にまで移動していた。
エクサタは、なかなか精神が安定せず、壁際でずっと蹲っていたが、
15分もすると、心に少々の落ち着きを取り戻し、シルバー達に
自分たちに何があったのかを話した。
グレトジャンニがもう死んでいた事。
弯曲十字のカースアーツ使いの仲間(アクアマリン・クラブとルビー・ハート)が全ての攻撃ヘリコプターを撃墜した事。
ニーズエルと協力してその二人を倒した事。
レンガ・ウーマンがDDFを持って行ったという事。
シルバーに変装した、ゴールドと名乗る奴が、自分たちを襲撃した事。
ニーズエルによって、一命を取り留めたという事。
全て――――自分の口から話した。
「これが、全て………この一時間で起こった、全ての事実だ………」
睦月が、屋上入口の壁に背もたれ、自分の足元を見ながら、震える。
「睦月殿………」
「―――ゴメン、実感が、わかない……
あの娘が死んだってのが……まだ信じられない―――」
「―――……そうか。」
睦月が胸の前で腕を組み、体を丸めるように体制を低める。
「私さ…パパ、いや、怪盗島風に、幼いころから怪盗になるためだけの
英才教育と訓練をされてたんだ。
だから、一人も友人なんかいなかったし、話し相手なんか誰もいなかった。
初めて出会ったよ、彼女のような、なんていうんだろ、
良いムードメーカーみたいな、仲間にはさ……
だから、なんかさ、胸にポッカリ穴が開いた気分だ。」
エクサタが瞼を半開きにして、シルバーの方を向く。
「エクスだけじゃなく………ニーズまでもが……」
シルバーの唇から、血液が少々垂れてしまっている。
心を抑えきれず、下唇を噛み切ったのだ。
「―――クッ…!」
シルバーが二人に背中を見せる。
「シルバー殿、何処に…?」
「レンガ・ウーマンを、討つ。
奴がDDFを持っているというのなら私は行かなくてはならない……
エクスの仇もあるしな―――」
「嗚呼そうか…
―――すまない、俺達のせいで―――」
エクサタが立ち上がろうと、床に手を付けて立ちあがろうとする。
しかし、手は濡れるように滑り、脚に力は入らず腰が上がらない。
「そうか、もうこの体は既に―――」
「エクサタ、お前の死に場所はここでは無い。
奴は私が倒す、睦月が倒す―――」
「嗚呼…」
「さらば――――さらばエクサタ!!」
「ニーズ、エル…………やはり俺は……」
シルバーが屋上から飛び降りる。
それを追うように、睦月もまた、飛び降りる。
怪盗 沈黙のエクサタ――――――――――――― リタイア。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最期の日―――PM1:25 弯曲十字付近、交差点
死体が、ちらかされている…
ヘリによって打ち殺された死体が、
アクアマリンの爆裂によって爆発した肉片が、
ルビーの能力よって膝の下だけになった元人間が、散らばっている。
しかし――――奇跡が起きる。
「行き返りなさい。みんな、生き返るのよ……」
バラバラになった死体が――――一か所に集まって合体する。
「ア!…アレ…生き……てるぞ……夢!?夢だったのか……!?
俺は確か――――ヘリの銃で体をバラバラにされて―――
あの痛みは、夢にしてはあまりにも……」
アクアマリン・クラブの能力で爆裂した死体の、傷口がふさがっていく。
「―――!?アタシ、こんな所に倒れて何を――――」
草が人の形に成長し、ルビー・ハートの能力で消滅した人間の形になっていく。
「みんなが上を見てって言うから―――とりあえず見たら―――
急に頭がおかしくなって……それから―――」
カースアーツ使い達の戦いに巻き込まれていた一般人たちが蘇る。
――――――奇跡だ、これを奇跡と言わんとして何が奇跡か。
何が起きたのかはわからない、だが、悪夢は終わった…彼らは助かったのだ。
しかし……
「アレ、あれは……あそこに落ちているあれは…!!」
蘇った人間のうちの一人が、指を指す。
指した先には、壊れたヘリが落ちていた。
「夢じゃ、無い……?」
ドンゴン!!!!!!
水風船が割れたような鈍い音が辺りに響き渡る!!!!
―――音の先には、血のついたレンガを持った長身の女がいた。
「さ、殺人鬼―――!!レンガの殺人鬼――――!!」
レンガ・ウーマンが青筋を立てる。
「粉にする。私は貴方達を許せない。
全く、レンガ以外の方法で殺されやがって―――
この辺りで、クソどもに殺されたクソどもは、全員ブッ生き返らせて
レンガでブッ殺す!!!!!!!!!!!!」
「ぎゃあああああああああああ!!!
お、俺達岐阜県民が何をしたって言うんだああああああああああああ!!」
「
ガッ!!!ゴッ!!!バゴンッ!!!デゴンッ!!!ドンゴッ!!!!
ドンゴンッ!!!
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!」
レンガ・ウーマンが時速80㎞でダッシュしながら、
生き返った民達にレンガ死刑を実行するッ!!!!!!
55人は蘇ったが、30秒もしないうちに全員殺されてしまった!!!
「あらあらうふふ。まだ私の唄は始まったばかりなのに~」
パチンっとレンガウーマンが指を鳴らす。
すると、80人ほどの人間が瞬時に蘇る。
「え――――夢………?オブロッ!!!!!!」
「私は~レンガ・ウーマン~♪
私は~鏖殺鬼<ジェノサイダー>~♪」
ドドンゴンッ!!!シュバゴンッ!!!!!
「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」
「誰一人して逃がさない~♪」
ドドンゴドンゴンッ!!!!!ドゴンゴドンゴンゴンッ!!!!!
「リリカル・レンガ~♪」
墜落したヘリの側の肉塊が集まって二つの人の形になる。
そして蘇った――――――――――――
彼等はマレフィカルム・ヘリ攻撃隊の隊長とヘリのパイロットだ。
「はッ…!?な、なんだ!?助かったのか!?
-――――――――オブがおッ!!!!!!!!!」
「キル・ゼム・オール~♪」
マレフィカルム・ヘリ攻撃隊隊長――――――――――――――死亡。
「はっ、レ……レンガ・ウーマン!?逃げなきゃ…
―――――があああ!!!!!」
「キル・ゼム・オール~♪」
ヘリのパイロットの顔面がレンガで粉砕されたと同時に、
そばの燃えカスが集まって人の形になる…………
新アトランティス帝国『四天刃』
貫将アクアマリン・クラブ―――――――――――――――――――――復活。
「…………!?これは!?おかしい…………俺は、確かに、死んだはず…
ハッ…!!!」
「キル・ゼム・オール~♪」
「なっ―――――――――」
ドンゴン!
新アトランティス帝国『四天刃』
貫将アクアマリン・クラブ―――――――――――――――――――――死亡。
「キル・ゼム・オール~♪」
ドンゴン!
頭と言う果実から、脳汁と言う真紅のジュースが噴き出す。
「キル・ゼム・オール~♪」
ドンゴン!
それは、生きとし生けるものに対する鉄槌。
「キル・ゼム・オール~~~~~~~~~~~~~~♪」
ドンゴン!
レンガ・ウーマンの手によって、生と死が繰り返される。
全ての人間に、第二の生と第二の死が与えられる。
「ララララララララララ~~~♪」
そして―――――それを近くのビルとビルの隙間
路地裏から見張る、二つの影。
「黒色は、光り輝かない、物を照らすことは出来ない、
白が光である限り、黒は影であり続ける。
――――――――だから黒色は、太陽にはなれない。」
睦月と、シルバーだ。
「私も、そうだと思い込んでいた。そうあるべきだと、信じつづけていた。
人は心の弱さゆえに悪逆に走る。正義は勝つ。悪は因果応報を受ける。性善説。
しかしあの女は、極悪でありながらにして誰よりも光輝いている。
この私よりも―――今もなお殺されている罪なき人々よりも……」
-―――――シルバーが、リボルバーに弾丸を込める。
「あの黒く光り輝く太陽の前では白の黒の立場は逆になる。
黒が光で、白が影。それこそが絶対悪…絶対悪レンガ・ウーマン。
この先、我々は、一片たりとも心の弱さを見せてはいけない。
勝つ事だけを考えないといけない。」
「あの女と出会ってから、本当に変わったな……
あの夢を見るように光り輝いていた目が、
今ではまるで奈落を見るような鋭く、尖っている――――
レンガ・ウーマンも、あの女と同じなんだな――――」
シルバー立ち上がる。
「行くぞ睦月、時間が無い。」
「――――待って、シルバー。ちょっと、確認したい事がある。」
「何かしら?」
「言葉で説明するのは難しいけど。」
睦月がシルバーの体―――脇腹の服が破れている部分に向けて指を指す。
敗れた服の下には褐色肌が輝いている。
「あのさ、そこの服の破れている部分さ、
レンガ・ウーマンにやられて肉がえぐれてたよね。
でも、もう傷跡すら、無くなってる……」
「………」
シルバーが、睦月から目をそらす。
「――――シルバー、何か、隠しているな?」
「これは在日アトランティス人特有の――――異常な治癒力だ。」
「違う―――私は覚えている。君はあの石美町で、
探偵田村と戦った際、顔面を殴られたことによって頬に切り傷を負った。
その傷は今回のえぐられた傷よりは軽かったが―――
大坂のブラック・ヘヴンに到着するまで……完全には治癒してなかった。
だがこれは何だ?早すぎる。」
「…たしかにそうだな。
連戦続きで、私の体の治癒速度も数倍になっているのかもしれない。」
「違う、その表情、君は何か隠しているんだろ…?
私の思いもよらぬ、何かを。」
「――――睦月、私の治癒力が上がって、何の問題があるというんだ?
何も問題は無いさ。むしろ、状況はよくなっている。
さぁ、もう時間が無い。奴がここを離れる前に――――」
「シ、シルバー………」
バッ!!!
シルバーが、腕を払いマントをなびかせる。
睦月は苦い顔をしながらも、その場を離れ、距離を取りながら
ダーク・ウォーカーを出現させ、
血の池の中、死体の影等、レンガ・ウーマンの視界に映らぬ場所に忍ばせていく。
シルバーはレンガ・ウーマンが此方に背後を見せるタイミングを見計らって
ビルの隙間から脱出し、表に出る。
そして音を殺しながら忍者のように一歩一歩歩いていく。
タッ――――タッ――――タッ――――
近接の戦闘と言うものは性では無い。
だが、奴の弱点の性質上、近づいて振り下ろさなければ勝てない。
ゴォオオオンッ!!!!
レンガ・ウーマンの前方で爆発が起きる。
「!!」
(遠隔からガソリンの石化を解除し、睦月のダークウォーカーで
引火させた。
貴様の視線を釘付けにするためにな。)
ゴォオオオンッ!!!!
ヴォオオオオオンッッ!!!!
更に二度の爆発が起こるッ!!!
そしてレンガ・ウーマンの視線の先に睦月が立ちはだかる。
「――――ついに来たのねぇ。
フフ、自分から動かずとも、
いつかは釣られてやってくると思っていたわ。」
-―――睦月にくぎ付けになったレンガ・ウーマンに、
シルバーは更に近寄る。残り10m。
「さぁ、レンガはいかが?」
シルバーは、先ほどの睦月のとの会話を思い出し、考える。
< レンガ・ウーマンも、あの女と同じなんだな―――― >
ああ、同じだ。同じクソッタレだ。だが同じクソッタレでありながらにして二人はまったく別の性質を持っている。ロンカロンカには圧倒的な計算高さと冷静さという強力な武器があったが、レンガ・ウーマンにはそれが無い。戦い慣れていない。
普通の人間よりは頭はキレるが、策や方法を考えながら戦うタイプの人間では無い。必要が無いからだ。策など無くても、強力すぎる能力がそれを補ってくれる。
だが、それが、お前の弱点となる。
レンガウーマンの背後に立ったシルバーが静かにレンガを構える。
ジャンプの体性だジャンプしなければ奴にレンガを当てられない。
150cmと230㎝―――――二人には80㎝もの身長差があるからだ。
「――――――」
「――――――」
VooooOOOooooOOOOOOOOOOooooooooooooooooooooooooo――――――
レンガ・ウーマンが睦月を殺すため、両手にレンガを出現させ、構える。
シルバーもレンガ・ウーマンを殺すため、右手のレンガを構える。
次の瞬間――――――――――――――――
シュバゴン!!!!!!!!!!ドドンゴン!!!!!!!!!!
闘いが、始まった。
「存在を感知してるのよ。」
結論から言って、シルバーの"最初"の目論みは粉々に打ち砕かれた。
唐突にレンガ・ウーマンがシルバーに向かってレンガを振り回したのだ。
「成程――――――目には頼らないってか。流石は化物と言うべきか。」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
死 し て な お 増 幅 す る 無 限 の 呪 詛
三 羅 偵
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
レンガ・ウーマンのレンガとシルバーのレンガが火花を散らしながら
ぶつかり合う。
「あの5人の中で一番弱いのがあの娘で、一番強いのが貴方と言うのは
一目で分かっていたのよ。
それにしても、貴方の考えていることは手に取るようにわかる。
策を考えないタイプ―――冷静さを持たない女。
フフ―――確かに、その通りかもね。」
パワー勝負だ。この私と、レンガ・ウーマンのどちらが
相手のレンガを押しこめるかのパワー勝負。
奴の恐怖するレンガ同士のぶつかり合いであったためか、
奴のドラゴニック・エンゲージをも超える圧倒的腕力は感じなかった。
互角だ――――互角のパワーの押し合い。
「嗚呼、早く見たいわ、貴方がレンガを後頭部に受け、絶望の表情をしながら
死に落ちていくその姿を!!!
貴方は死ぬまでに何文字の絶望の言葉を吐いてくれるのかしら!?」
「答えは0文字だッ!!」
シルバー弾き飛ばされる!!
当然だ、増呪酒でパワーを増強していたとはいえ、奴の頭に攻撃を叩きこむため、私は空中にいたからな…。
地上戦闘を主にする大地の横綱と空中戦闘を主にする天空の横綱が同じパワーで押しあえば、地面を踏ん張れる大地の横綱が必ず勝つという有名な法則があるが、私もその法則の通り、弾き飛ばされた。
私が吹っ飛ばされたのを確認して、すかさず、レンガ・ウーマンが走り出す!!
辺りに落ちた死体を踏みつぶしながら――――走り出す!!!!!!
そう、死体を踏み潰しているのだッ!!!
「ストーン・トラベル!!!!!」
「なっ―――――」
辺りにある死体は、まだ死んでから大した時間は経っていない。それに、レンガ・ウーマンは、主に頭を破壊していた。
故にアイツが踏みつけた死体は勢いよく内臓と血液を吹き出し、アイツの脚に纏わりついている!!私はそれを石化するッ!!!
石化した死体の肉片がに脚が纏わりつきレンガ・ウーマンのSPDがダウンする!!
そしてシルバー銃を構える!!!
「銃弾のダメージなど受けないだろうけど、これならどうだ…!」
ワン!!ツー!!スリー!!フォー!!
4発の銃弾が――――地面に炸裂し、跳弾する!!!
跳弾した弾丸がレンガ・ウーマンの左手に持っていたレンガに炸裂し、
レンガ・ウーマンの左わき腹目掛け吹き飛ぶ!!!
そして、焼けるように爆裂するッ!!!
「NUゥ!!!!」
レンガ・ウーマンが怯んだ隙にシルバーが再度レンガを構えながらダッシュするッ!
しかし―――――――――――瞬時――――レンガ・ウーマンが跳び上がるッ!!
バッ!!!!
「こういうのはどうかしら?」
空中にいるレンガ・ウーマンが右手のレンガを振り上げる。
「――――!?」
「『イリーゼ・フィアー・
ブリック・オブ・ゴォォォォォッッッデス<女神の煉瓦>』ッッッ!!!!」
ヒュッ-――――――――――――――――――――
シュバ―――――――――――――――――――――――――――――
■
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■■■ ■■■ ■■■
「クッ――――――――――――――――――――
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
天空から音速で地上に放たれた"それ"はまさに隕石ともいえる衝撃だった。
直撃はまのがれたが……ショックウェーブと砕け散ったレンガの散弾が
この私の体を襲うッッ!!!
「15年後期から18世紀前半にかけてイギリスで製造されていた
完全頁岩性建築用焼成煉瓦「クリムゾン」。
これが私を殺したレンガだあ!!」
「おおおおおおおおおおおおおお!!!」
肩、脇腹に重傷を負ったが、シルバーは何とか立ち上がる。
予想はしていない攻撃だったが――――自分の体内の液体を
一瞬石に変える事で最悪の事態だけはまのがれた。
そして――――上にいるレンガ・ウーマンを見る。
「チッ………
竜の翼を生やして滑空―――ドラゴニック・エンゲージの力をコピーしたと
エクスは言っていたが――――」
レンガ・ウーマンが滑空しながら再度レンガを右手に出現させ
右腕を大きく振りかぶる。
そして―――――レンガが赤い雷を帯びる。
次の攻撃は――――必中だ。私の回避が追いつかないスピードで撃ってくるだろう。予想は出来る、故に、対応も可能。
私はビルの隙間に入り込み、奴との直線状に壁を作る。そして、防御する。
レンガ・ウーマンがレンガを投げた。
「『イリーゼ・フィアー・
ブリック・オブ・ゴッデス・
セカンンンンンンンンンンンンンンンンンド<第二射>』ッッッ!!!!」
シュバオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――ッッッッン!!!!!!!!!!!!!!
まさに核爆弾の如きレンガが第一射の数倍の威力、数倍のスピードで投射された。
そして、シルバーとレンガ・ウーマンを遮っていたビルの壁を、容易に貫いた。
「『ストーン・トラベル・オルターナティヴ』ッ!!!」
オルターナティヴ、それは、自らの体内の液体を石化させ、防御力を上げる禁忌の防御技。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!!!!!」
あえて受けるッ!!!この防御力なら、奴の煉瓦の威力をある程度抑え、受け流す事が可能ッ!!!!
ダメージは、かなりあるがなぁああああああああああ!!!!!!
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!!!!
衝撃が、終わる。
そして、シルバーが立ち上がり、走り出す。
(奴はこれで、いったんこの私を見失った―――――
ならば今こそが!!)
壁を駆けあがり、ビルの中に侵入そして、空飛ぶレンガ・ウーマンの目掛け飛び上がるッ!!
そして、向かってレンガを振り下ろす!!!!!
「フフ、そう来たのね。でもWellcome Hellよ。
なぜならレンガを振るスピードは、私の方が速いのだから。」
シュバッ―――――――
レンガウーマンが右手に赤いイナズマを帯びさせながらレンガを構える。
「いや、邪道だッ!!!貴様を倒すのは王道では無く邪道ッ!!!」
シルバーが振りかぶったレンガをレンガ・ウーマン目掛けて投げるッ!!
「スピードが遅い!」
しかしあっさりとそれは避けられる。
だが―――――
(今だ―――――――――)
避けた先に、再度もう一つのレンガを投擲する。
先ほどレンガ・ウーマンが二度目に投げたレンガを、拾ったのだ。
壊れないように受け流していたのだ!!
レンガ・ウーマンは咄嗟に左腕で頭を防御する。
バッボッッ!!!
左腕が燃え尽き千切れ落ちた………
「チッ………」
「クッ――――――――!!!頭に当たらなかった……
思ったよりスピードが成長している……!!!」
「如何したのかしら~?まさか今ので終わりって訳じゃないでしょうね?
じゃあ、次は私のターンよ。」
レンガ・ウーマンの右手が赤いイナズマで染まる―――――
「私は願うッ!!今この場で全員死んで頂戴ッ!!!!
『イリーゼ・フィアー・
ブリック・オブ・ゴッデス・
サァァァァァァァァァァーーーーーーッッッド<第三射>』ッッッ!!!!」
ヒュー―――――――――――――――
シュバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!
「まさかここでこれを使う事になるとはッ……」
シルバーがポケットから何かを投げて、レンガにぶつける。
その何かはレンガを真っ二つに切り裂き―――――
そのままレンガ・ウーマンの右腕を切り裂いたッッッ!!!!
「――――こッ…これはッ!?
あの伊達男のトランプ――――――馬鹿な………
これは対策済みであったはず…なぜ…?」
「ハァハァ……効いてくれたか」
装備型カース・アーツにはとある共通の特徴がある。
それは、契約者の死後も、能力が与えた影響が残り続けるという事。
実際、ロンカロンカに異空間に捕えた人間や動物たちは、二度と外の世界の光を見る事も無く、全員異空間内で餓死した。
レンガ・ウーマンに生えていたドラゴニック・エンゲージの翼が消える。
「時間切れね。でも―――」
(なるほど、コピー能力を使うのには間が必要なのか。)
ドッゴッッ!!!!!!!
レンガ・ウーマンがシルバーを蹴り飛ばす!!!
「ぐあああああああああ!!!!!!!!」
先は、コンクリートッッ!!!
しかし―――落下地点付近に転がっていた死体が動きだし、
シルバー落下のクッションとなった!!!!!!
「ハッ……カッ…ハッ………」
睦月のダークウォーカーが死体を引っ張ったのだ。
レンガ・ウーマンがシルバーの前方40m先にふわっと着地する。
「どうした銀の怪盗。さっきの攻撃で左腕の骨が折れて
動かないようね。さぁ、倒すべき探偵はここで、貴方はそこよ。
僅かな希望に縋って生者の道を選ぶか、
それとも絶望に堕ちて死者の道を選ぶか。」
「――――お前の推理は殺戮だ。
ならばだまってレンガを振り続けていればいい。
来いよ来い。私たちの推理に言葉は必要ない。黙って殺しあおうじゃない。」
パンッパンッパンッパンッパンッ
レンガウーマンが拍手をする。
Vaaaaaaaa―――――――――――――――――
「フフフ、それでこそ生者だ。殺し甲斐がある。
ならば私も――――本器の殺戮というモノを始めよう。」
「なに―――――?」
「死の百合を―――――」
VaaaAAAAAAAaaaaaa―――――――――――――――――
レンガ・ウーマンの足元から、無数の黒い百合が生えてくる。
そしてその無数の黒い百合は前後左右上の全方向に伸びだし、咲き乱れる。
「策?方法?手段?意思?
そんなものはどうでもいい。
そんなものより、この私の煉瓦の方が強いに決まっている。
ならば掃滅する。」
VaaaaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaa―――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
百合の花々の中に赤いレンガが生える。
煉瓦を生やした、100本の地獄の触手だ。
「第二形態よ。さあどうする?どうするのかしらシーフ・シルバー?」
「答えは0文字。」
「!」
「答えは0文字だッ!!!何も言葉はいらないッ!!
何の考えも必要ないッ!!!ただの一切の迷いなく――――
この私は――――貴様の脳天を打ち砕くッッ!!!」
シルバー走り出す!!!!!!!!!!!
レンガの触手がシルバーに襲い掛かるッ!!!!
しかしシルバー止まらない!!!レンガの攻撃を避けつつ、
確実に距離を狭めていくッ!!!
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
シルバーが手に持ったトランプで触手を切り裂き、レンガをゲットするッ!!
「何故だ…なぜあのトランプになぜ私の思いが通用しない。
耐性がつかない―――」
(このトランプは―――――お前の弱点を知るエクスが、最後に残したトランプ。
そして、お前の能力を穴を突くために作られた、48枚のトランプ。
ただ、薄く鋭いだけでは無い、カードそれぞれによって、薄さがすべて違う。
だから厚い方のカードから順に使っていけば、
貴様が鋭い斬撃に対する耐性を付けても貴様が耐性範囲外の更に鋭い斬撃で、
再度確実なるダメージを与える事が出来るッ!!)
100本の煉瓦の触手を、再生もしないし、成長もすることが無かった。
だが、それでも、成人男性の腕を振る程度のスピードがあった。
だがそれをシルバーは華麗にかわし走ってレンガ・ウーマンとの距離を詰める。
「をおおおおおォォーーーーーーーーーーーVICTORY!!!
VICTORYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!
……VICTORYをおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!」
-―――――――――――――――――――――――――――――――――――
時計塔の上で、脚を組みながらシルバーの戦いを観戦する
一つの神聖なる影があった。
『誰も彼もが死んで逝く。
たった一つの願いを叶えるという意識の下に踏みつぶされていく。
全てを知る少数派だけが笑い、無知なる多数派が泣く。
この世界の縮図を現すかのようだ。
常識とは多数決の意思だ。故に尖らない。故に狂えない。
"そうあるべき"という檻に閉じ込められ、
常識の成長と共に人の個性と言う力は失われて逝くのだ。
まるで現代の先進国社会のように―――――
それに比べて我らはなんと人間的な事か。
周りが虹色を灰色に染め上げている中で、
常識に唾を吐いて平然としていられる。自分の夢の為に全てを犠牲に出来る。
素晴らしい事じゃないか。
多数派を自在に操れる我々は誰よりも人間として輝いている。
キミもそう思うだろ、最後のにして最凶の四天刃
………"エメラルド・スペード"』
「……………」
-――――――――――――――――――――――――――――――――――――
場面は再び、シルバーとレンガ・ウーマンの戦いに戻る。
「ハァッ-―――ハァッ-―――ハァッ――――――」
瞬時―――――――――――
シルバーの↑→方向の触手が削り取られたように消滅するッ!!!!
「これは!!!」
シルバー下を見ながら右方向ににステップするッッ!!!
「エクサタが言っていた、影のカースアーツかッ!!」
そして、一瞬瞬きした瞬間、その影のカースアーツが消滅する。
「何っ!?」
シルバーの←↑方向の触手が次々と爆裂する!!!
そして、爆裂する触手の中から、前長1m程の深青のカジキのような怪物が
回転しながらシルバーの左腕に突撃するッ!!!!!
アクアマリン・クラブの―――― ナイト・オブ・ヘルフィッシュだ!!!
そして左腕を引きちぎったッ!!!
「がああああああああああああッ!!!
ス―――――ストーン・トラべルッッ!!!!!」
引きちぎられた左腕の傷跡が石化し、カジキマグロが弾かれて吹き飛ぶッ!!!
ナイト・オブ・ヘルフィッシュ突撃した先に液体が無ければ消滅してしまうッ!!
「ハァッ-――――ハァッ-―――――ハァッ-―――――――
ハッ!?」
「終わりよ――――」
ドドドドドドドドドド
気づけばシルバーは無数の煉瓦の触手に囲まれていた。
「ぬぬぬ………」
一斉にレンガが振り下ろされるッ!!!!
しかし――――
ぺチンぺチンぺチン!!!!
「え――――」
シルバーが気づいたときには、触手の先が無くなっていた、
何かにむさぼられたように、削り取られていた。
「――――――馬鹿ッ-――――なんで、なんで表に出てきたッ!!!」
上から、睦月が落下してくる。
「-――やっぱり、こういう能力は私に合わないや。
前にも言ったけど、もっと炎を出すとかそういうシンプルな能力が
良かったな――――」
「馬鹿ッ――――お前はいつだってそうだ……
いつだって私の言う事も忠告も聞いてくれない――――」
「気に入らないからさ。
みんなを救うために頑張ってるお前が最期まで救われないなんて――――
割に合わない。」
「睦月――――」
シルバー涙ぐむ。
「泣くなよシルバー。泣いてると、勝てない。一緒に生き残ろう。」
「違うんだ――――睦月がそういう言葉を吐くたびに、
私の心は罪悪感に締め付けられるんだ―――――
だって私はもう―――――覚悟を決めたから。」
シルバー走り出す。
「あっ――――おい!!シルバー!!!!」
エクスのトランプを巧みに使い、シルバーが無数の触手を引き裂いていく。
睦月もそれを追いかける。
「この女を見てると―――――思い出す。
今より約300年前、1733年に復活したこの私に立ち向かったあの男たちを。
誰よりも生きる意志をもったアイツらを。
生きる意志とは無限の力だ。
私も、私を殺したアイツらも―――――生きるという意志があるから強いのだ。
ならば私はそれを撃ち滅ぼす。レンガで撃ち滅ぼす。
最期まで生き残るのは―――――このレンガ・ウーマンだ。」
そして――――――――――――対峙る。
真紅の血に染まった赤い街道で――――シルバーとレンガ・ウーマンが対峙る。
レンガ・ウーマンが糸目を開ける。
目は、真紅だった。レンガと同じ―――――真紅であった。
「流石ね。これこそが生きる意志。
私が最も恐れ、私が最も愛する力。
こういう人間ほど叩き潰すのが楽しい…
さぁ。来なさい、その生きるという意志をレンガで砕き潰してあげるわ。」
「最近になって時間してきたんだが、
どうやらこの私は、他人に勘違いされやすい性格のようだ。」
「――――?」
「私も、かつては信じていたよ。
正しい心を持っていれば、必ず神が微笑んでくれるってね。
『人は心の弱さゆえに悪逆に走る』『正義は勝つ』
『悪は因果応報を受ける』『努力は報われる』
人が信じがちなワードだ。
だが、私は思い知った。
こんなものは真実じゃない。只の心の支えでしか無いってね。
12年前、私は絶対正義<夜調牙百賭>に人生の全てを奪われたわ。
その後、私は第二の人生を積み上げていたのだけれど、
丁度一週間前、絶対悪<ロンカロンカ>に2度目の人生を奪われた。
正義と悪の両極に人生の努力の全てを奪われ、私は絶望し、答えを見失った。
そして思った――――どうすれば、勝てるんだろうってね……」
「………」
「シ、シルバー………?」
シルバーがマントに手を掛ける、そして―――――
「勝つためには力だ!!力こそが全てを凌駕できるのよ!!!」
脱ぐ――――――――そして、襟をズラし、自分の神聖なる首元を露出する。
「シ、シルバー……そ、それは―――一体?」
「お前に内緒であのブラック・ランドで
財産の3/5をかけて購入した―――"力"だ。」
首には、法陣が描かれていた。
何か、邪悪なものが描かれた、魔法陣――――
瞬間――――レンガ・ウーマンの顔から、笑みが消える。
シルバーが首に手を添えながら。レンガ・ウーマンに向かって歩き出す。
「『悪魔』ね――――
悪魔、人外の怪物、カース・アーツや人狼のように裏世界を牛耳っている
魔の者―――――その一種。」
「………」
「契約と共に生命を喰らう悪趣味な魔物――――――
貴方、死ぬつもりですわね―――――」
「ああ。その通りだ」
「待って!!!」
睦月がシルバーに背後から抱きつく。
「い、命を喰らうって――――ど、どうなるんだ――――」
「生きていられる可能性は低いだろうな。
だが、命が喰らわれるのは契約が終了してからだ。
そしてその契約は――――DDFで願いを叶えた瞬間に終了する!」
「――――――――――!?な………」
睦月がその場に倒れる。
シルバーが前に進んでレンガ・ウーマンとの距離を狭める。
「貴方の言うとおり、とんだ見込み違いだったようね。
怪盗シルバー、貴様は糞だ!!
なんて愚かで、醜く、忌々しい存在なのか!!
怪盗は生きながらにして、死に向かっている。
私は生きたかったのに、既に死んでいる。
もう何の価値も無い
生きる意志を放棄した其れは、もう何の価値も無い――――」
「何度も思ったよ。感情なんて無ければよかったなって。
フッ、最高じゃないか。私は全てを救って――――
その末に感情を失える。」
シルバーが魔法陣のある部分を爪で引っ掻き血を露出させる。
「Demonic Scarf-デモニック・スカーフ-」
Vooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo
VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO
| / f⌒!f⌒!f⌒! f⌒! f⌒! f⌒! f⌒! f⌒! f⌒! f⌒!
|/ {_} {_} {_} {_} {_} {_} {_} {_} {_} {_}
黒く禍々しい気の輪が、シルバーの首を覆う。
黒の中には無数の目が存在している。
「首輪―――――!?」
「海の魔獣<クラーケ>………!!」
黒の輪から全長2m程の4本の触手が伸びる、
――――そして、その先端に短剣が生えてくる。
対峙るレンガ・ウーマンもレンガを構える。
禍々しい邪気を帯び立たせながら。
「私は神の意志だ―――――神の剣、神の代行者!!!!!
ならば力を持って、DDFの破壊を遂行する!!!!!!」
「私は自らの意思―――――自らの暴力、自らの殺戮よ。
ならば意志を持って、全ての人間をレンガで殺すわ。」
勝負は一瞬!!!
二人が激突するッ!!!!
答えは0文字!!!無言の対決!!!
シュバキン!!!!!!!!!!
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!!!!
レンガと黒い剣がぶつかり合い火花を散らす!!!
シルバーが距離を詰めて―――――――――――――――
レンガを右手で持って決着を付けようとするッ!!!!!!!!
しかしレンガ・ウーマンそれをレンガでガードするッ!!!!
再度レンガの押し合いが始まる―――――今度は二人とも地上で
二人共左腕を失っているッ!!同等のパワーだッ!!
同時にシルバーの背後からレンガ触手が襲いかかる!!!
しかしシルバーそれをデモニック・スカーフで全て切り落とす!!!
-――――――――瞬時レンガ・ウーマンが左に引き、
レンガの押し合いを終わらせる。
そして、レンガを振り上げる。
レンガが赤いイナズマを帯びる。
-―――――悪魔の力?
-―――――――デモニック・スカーフ?
-――――――――――そんなものより、私の煉瓦の方が強いに決まってる。
-―――――――――――――私こそが全て。私だけが世界―――――
振り下ろしたレンガが――――――――デモニック・スカーフの刃を破壊する。
(馬鹿な―――――――これだけ捧げても、まだ足りないというの?)
シルバーの視界が真っ暗になる――――――――――
絶望―――絶望が襲う。
-―――――――――――――――――――――――――――――――――――
そこは、黒い世界。黒く染まった世界。
一色の恐怖で染め上げられた。闇の世界。
私はそこを歩いていく。一人ぼっちで、歩いていく。
自らの過去を思い返しながら。
ああ、焼けていく。みんなが焼けていく。
正義は――――自分を救ったりはしない。
悪も――――自分を救う事は無い。
何故ならこの世は戦いだからだ。戦いには力なくしては勝てないからだ。
正義や悪、意志というモノは―――力では無い。
ならば強くなれ――――誰よりも、誰よりも誰よりも――――
力を備えしものだけが―――――天国にたどり着く事が出来る。
「でも、貴方は弱っちいじゃないですか。」
目の前から、眩しすぎるなにかが歩いてくる。
身長は170㎝、巨乳、人形のように細い手足、目は鷹のように鋭く、瞳は黒紫。深紫色のコートを腕を通さないように羽織っており、内には紫色の胸空きタートルネックに黒いズボン、そして、金髪のツインテール。
天才少女探偵、"三羅偵"乱渦院論夏<ロンカロンカ>。
私は、お前に勝ちたかった、ずっとずっと、お前に勝ちたかった。
ロンカロンカが私の右腕に手を伸ばす。
すると、私の左腕とロンカロンカの右腕が同化する。
そして同化した腕が私の首を絞めつける。
「ほーら、力で何とかしてください。」
「うっ……えぐ――――」
これが正義を抱いた弱きものの末路だ。力弱きものは強きものに蹂躙される。
「う―――――――――――――あああああああああああ!!!!!!!」
ママが死んだのは――――――――――力が無かったからだ。
パパが死んだのは――――――――――力が無かったからだ。
島風のおやっさんもジジイも右堂院君もエクスもニーズエル
―――――弱かったから死んだ。敗北した。全てを失った。だから地獄に堕ちた。
大切なのは心じゃない。目的を達成できる力だ。
「私を殺した貴方がこの程度で死んでどうするんですか?
振りほどいてください、シルバー。」
弱者は、たとえ敵を倒せたとしても、呪われる―――――
精神的に力の勝る相手には勝てないのだ―――――――
振りほどきたい―――――――――
この腕を振りほどきたい――――――――――でも、もうだめだ。
嗚呼、死後もなお私の
お前に、一度でもいいから―――――――勝ちたかった……
ボロッ…
ロンカロンカの右腕が何かに食われたように千切れ消える。
「―――――!」
「…………!!」
何だ、何が起きた…………?
「チッ―――なるほど、ね。」
何かは分からない。
だが、今の力は、何か温かくて、とても、守りたくなるような力だ――――
私は立ち上がり、白い光に向かって歩き出す。そして、ロンカロンカとすれ違う。
「………私は、ここを出る。出なければならない。」
「――――もう少し苦しめたかったのに、まぁいいです。」
「私をこのまま行かせていいのか?」
「別れを惜しむ必要も無いでしょう。貴方の事なんてどうでもいいですが、
どうせ、また会えるのです。
貴方がまたここに来るか、私がそちらに行くか、どういう形になるかは、
まだ言えませんが。」
「………」
最悪の宿敵〈ライバル〉に背を見せ、一歩一歩進んでいく――――――――
……そうか、やっぱりお前か。
「起きて――――ねぇ―――起きて――――」
……フン。全く。
「シルバー!!!」
おせっかいな親友ね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最期の日―――PM1:35 弯曲十字付近、交差点
「―――――――クッ………」
シルバーの目の前に、睦月がいた。
睦月は目の上前で両手を交差させ、その下に、レンガ・ウーマンの右腕があった。
恐らくレンガ・ウーマンが右腕の煉瓦で睦月を殺そうと思ったのだろうが、
右腕が睦月の腕の下を通った瞬間、腕の上にダークウォーカーを出現させられ、
瞬時にして右腕をかみちぎられたのだ。
「シルバーは殺らせないぞ………」
「フン-―――」
レンガ・ウーマンが右足で睦月の腹を蹴り飛ばす。
レンガが無いと言っても、そのパワーはドラゴニック・エンゲージ並。
睦月は血を吐きながら、私の横に転がった。
「情けないな………私は――――」
「いや、ありがとう、睦月が親友で、良かったよ……」
シルバー立ち上がる……
「あとは私に―――任せて。」
レンガ・ウーマン右腕を再生しようとするが、
シルバーがストーン・トラベルで傷跡を石化する。
「またこれか………!!!」
「今、私の頭の中には、使命以上の感情が渦巻いている。
何だこの感情は怒り?憎しみ…そんなもの足枷にしかならないと思ってたのに…
今は、それが武器のように、思える。」
レンガウーマンの腕石化しながらも再生を続ける。徐々に手の形になっていく。
「レンガ・ウーマン………終わりにしよう。
お前の狂想を。お前の生きる意志を!!」
デモニック・スカーフの刃が復活する!!!
そして、シルバーPNGトランプカッターを投擲して
レンガ・ウーマンの体をバラバラにする!!!
しかしレンガ・ウーマン凄まじいスピードで再生する!!!
(今は片腕だ。
トランプを持っていれば、レンガを振るえない。
レンガを持っていれば、トランプを投げられない。)
「睦月…立てるか?」
「あ、ああ…!!」
「お前がトランプを持って、奴の足止めをしてくれ――――」
レンガ・ウーマンは今ダルマだ――――
シルバー、睦月にトランプを渡す。
「残り2枚か―――――――――柄は、ジョーカー。」
「―――――行くぞ。チャンスを見切れ。」
レンガ・ウーマンの両腕が復活するッ!!
睦月すかさずトランプを投げその両腕を切断するッ!!
そして、その隙を見計らって、
シルバーはウーマンに近づきレンガを振り上げる!!!
しかし―――――――――――――――
瞬時、レンガ・ウーマンの体が消えるッ!!!!!
「―――――――――!!!」
「あーーーーーーーーーーーーはっはっはっはっはっは!!!!!!
さぁ、レンガはいかが?」
瞬間移動したのだッ!!エクスの戦いの時に見せた瞬間移動能力ッ!!
レンガ・ウーマンシルバーの5m上に瞬間移動し、腕を再生させて
レンガを振り上げるッ!!!
「レンガをどうぞ――――――――――」
しかし―――――――――瞬時、金色に輝く衝撃波が、
振りかぶったレンガを吹き飛ばし、攻撃が、逸れる。
「何ッ!?」
「フッ………随分と、遅かったじゃないか。」
エクサタ。シルバー達の背後に、エクサタが現れた。
「…………」
(俺とニーズエル殿の初めての出会いは、夜行電車の中だった。
ニーズエル殿は、絶望した表情で、座席の上で横になっていた……
-――――俺も、家族を失い絶望していた。
あの人の意思は―――俺の意思だ――――もう二度と、失う訳にはいかない。
そして、DDFを手に入れて――――全てを――――)
レンガ・ウーマンが空中から左手に持ったレンガを振り下ろす!!!
しかしシルバーそれを防御するッ!!!
手に持っているそれは―――――――――DDF!!!
「DDFは――――――如何なる方法をもってしても砕け散らない
呪いの宝石――――お前との戦いで、こうやって防御に使おうと思っていた。
まぁ壊れて呉れたらそれはそれで有難かったんだけど。」
レンガ・ウーマンが、地に落ちる。
シルバーが、レンガ・ウーマンの体をデモニック・スカーフで押さえ、
レンガを振りかぶる。
「そして能力のコピーと同じく、あの瞬間移動も、そう何度も乱発できるような
ものではないらしいな。」
「あ―――――――アアア―――――――――!!!!
あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
レンガ・ウーマンが恐怖する―――――――――
そして、思い返す―――――――あの夜を、全てを失ったあの夜を――――
何も悪い事をしていないのに―――――――――殺された、理不尽な夜を。
身長2m以上の"あいつ"と、シルバーの姿が重なる!!
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本当に 理不尽であっただろうか
本当に 何も悪い事はしていなかったのだろうか
"あいつ"の顔は暗くてよく見えなかったが
"あいつ"は お前の知る人物だったぞ
お前が"報復"で殺した 友人の親戚
お前は悪だから死んだんだ
お前は恨まれたから死んだんだ
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だが、そんな事をレンガ・ウーマンは知る由も無い。
この後もずっとずっと、何も知らずに被害者ぶって、全ての人間が死ぬまで殺し続けるのだろう。
「脳髄を―――――――――――ブチまけろ。」
そして―――――――恨まれ続けるのだろう。
「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」
シルバーのレンガが、イリーゼの脳を打ち砕く。
イリーゼの体が爆裂するッ!!!!!!!!!!!
炎で燃え上がるッ!!!!!!!!!!!!!
「ば――――――――――馬鹿なッ!!!
この私がッ!!!!この無敵のカース・アーツを持つ私がッ!!!
こんな事はあってはならない、私は――――――世界なのにッ!!!!
フ――――――――フフフ―――――――――――
だが私はいつでも復活する………この世にカースミラーがある限り―――
この世に私の恨みを認めてくれるシステムがある限り―――――――」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
「 ■ ■
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■ ■■ ■ ■ ■ 」
マッレウス・マレフィカルム日本支部『三羅偵』
黒百合探偵レンガ・ウーマン(イリーゼ・ライシャワー)/黒霧四揮
―――――――――――――――――――――――――――死亡。
空が晴れた。
白い太陽が、顔を見せる。
「う…………うう……シルバー、シルバァァァァ………」
睦月が――――泣く。泣き崩れる………
「どうして、どうして、こんなことに――――――
キミは何も悪くないのに……………」
「ごめん、本当に、すまなかった、」
レンガ・ウーマンが持っていたDDFをシルバーが拾い上げる。
「嗚呼――――見える、天国が見える。
パパ、ママ、右堂院君、ジジイ、エクス、ニーズエル――――
皆が、見える。」
シルバーが太陽に向かって歩き出す。
「睦月―――――私はお前の事をちゃんと考えてやれてると思ってたけど、
何もわかってなかったんだな。
でも、ありがとう――――死ぬ前に、本当の心に、気づけたよ。
有難う―――――――本当に本当に有難う。」
「シルバー…………」
エクサタは、状況を察しシルバーから目をそらす。
「……………
―――――――――!?」
しかし、その目線の先には……
「シルバー殿!!睦月殿!!警戒を!!あの女性は――――
あの女性の姿はまさか――――――!!!」
「えっ――――」
シルバーがエクサタの目線の先を追う。その先には。
Vaaaaaaa―――――――――――――――――――――
目は鷹のように鋭く、瞳は黒紫。深紫色のコートを腕を通さないように羽織っており、内には紫色の胸空きタートルネックに黒いズボン、そして、金髪のツインテール。
此方に向かってまっすぐ歩いてくる。
「えっ――――あれって…………!!!」
「な――――――――――――――」
そう、その人型は、まさしくあの宿敵ロンカロンカそのものだった―――――
「………そうだ、アレは間違いなくアイツだ、
だが、何か違和感がある――――アイツそのものでありながら、
アイツでは無い。アイツは――――あんな行動はしない。
ならば――――――」
シルバーがゆっくりと後ろを振り返る。
Vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
銀髪に、赤い瞳。
VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
身長160㎝、メイド服をサイバー系にしたような服を着こなしているその王の姿。
VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
「『探偵マスター<ディテクティブ・マスター>』」
その姿が、シルバーに飛び蹴りをかまそうとしている―――――――
「百――――――――賭――――――――――――――!!」
時が、制止する。
あまりの出来事に時が制止し、シルバーは防御と言う行動を取れなかった。
ドンゴン!!!!!!
シルバー顔面を蹴られ5mほど吹き飛ばされる。
嗚呼――――狂いそうだよ。
お前はあの女と同じだ。
あの女と同じく、自分の人生を総べて奪った、因縁の相手――――――――
百賭が、ジャンプして、標識の上に着地する。
シルバー立ち上がり、
デモニック・マフラーを使って百賭けの近くまでジャンプする!!!!
「さっきのロンカロンカは――――幻影だなッ!!!
お前が作りだした、過去のロンカロンカだ!!!」
「フッフッフ、我が能力を理解していたか。
まああのエクスがいたんだ―――――――予定通りではあるがな。」
百賭後ろにバックステップしてコンビニの上に着地するッ!!!
シルバーもそれを追い、着地するッ!!!
「予定通りだと―――――?」
「そうだ、全てはこの俺の掌の上で踊っていたに過ぎない。
レンガ・ウーマンも、ゴールドも――――
ただ、御前達がここまで生き残れるのは予想外だったがな。」
「…………これ以上、好き勝手にはさせない。
夢は終りだ、百賭。」
シルバーがデモニック・マフラーを構える。
「フン――何が何でもこの俺を倒す気か?
だが私は勝たねばならない。
真なる『絶対正義』を到達点するならば犠牲はその過程―――――!
そう、俺はお前の両親のお蔭で成長できた――――」
「ッ――――!!」
「お前の両親無しではここまで来れなかった…
今思えば、彼らの人生とはこの俺の成長の為だけにあったのかもしれない……」
「ふざけるな――――」
「そして、お前と言う存在は、その返り血のようなものッ!」
「ふざけるな、そんな運命なんて――――絶対に認めないッ!!!」
「シルバーー―――――!!!」
睦月がシルバーに向かって叫ぶ!!
「エクサタ、睦月は頼む――――――私はこの宿命の相手と――――
決着をつけるッッッ!!!!」
「いいぞ――――その目だ―――――――!!!!
『正義の騎士』のようなその美しい目を、俺に見せてくれッッッ!!!!!!!!」
血まみれの太陽の下で全てを掛けた最終決戦が、始まる。
――――――――――――――――――――――――――――――――つづく。
―――――――――――――岐阜市でのDDF争奪戦
探偵協会 DDFピース所持数―――――1
シルバー/睦月/エクサタ DDFピース所持数―――――2
セクンダー・グラン DDFピース所持数―――――2
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